【航空機事故】ガルフ・エア072便墜落事故と空間識失調!

【航空機事故】ガルフ・エア072便墜落事故と空間識失調!

By Konstantin von Wedelstaedt – CC by 1.2

概要

  • 日付:2000年8月23日
  • 出発地:エジプトのカイロ国際空港
  • 目的地:バーレーン国際空港
  • 機材:エアバス式A320-212 (機番:A40-EK)
  • 乗員乗客:
    • 機長: Ihsan Shakeebさん (37歳男性|総飛行時間:4,416時間)
    • 副操縦士:Khalaf Al Alawiさん (25歳男性|総飛行時間:608時間)
    • 客室乗務員:6名
    • 乗客:135名(男性61名、女性37名、子供37名そのうち8名が幼児)
    • 犠牲者:全員(143名)

ガルフ・エア072便は、2000年8月23日にエジプトのカイロ国際空港から、バーレーン国際空港に向かっておりました。

離陸からクルーズ飛行までは順調でした。しかし、バーレーン国際空港のRWY12にアプローチ中、滑走路手前から約1nm、高度600ftのところで機体が高すぎで速度が約160kts出ておりました。

なので、操縦士達はこの地点で左360度旋回をして高度と速度を減らそうと考えました。

通常3度のパスでアプローチしてくると、1nmのところでは高度は300ft 程度なので、このままでは6度のパスでアプローチしなければいけないことになります。エアバスA320は6度のパスでは減速ができません。重さにもよりますが、通常の最終着陸速度より20~30kts速いです。

左旋回中も滑走路にアラインするために急旋回を行なっており、最大36度バンク入っておりました。

フラップもフルエクステンドされ、ランディングチェックリストを終えましたが、オーバーシュートしてしまいゴーアラウンドを管制塔に願い出ました。

管制塔は2,500ftに上昇し、300度方向に向かって飛行し着陸の準備を整え直させようと調整しました。

機体は急に185ktまで加速し、5度ピッチアップして1,000ftまで上昇しました。1,000ft到達した頃に急に15度ピッチダウンし、飛行機が地面や水面に衝突しないよう警報で教えてくれるGPWS(対地警報装置)というシステムが起動しました。

その時、機長はフラップを上げて機種をあげるよう指示しました。しかし間に合わず、空港から北5kmのペルシャ湾にピッチ6.5度ダウンの姿勢で墜落しました。

最終的に飛行機の速度は280ktまで加速しており、この事故の生存者はいませんでした。

原因

この事故の原因は、空間式失調によるものだと判断されました。

空間式失調とは、パイロットを惑わす錯覚の1つで天地がわからなくなってしまうとても怖い現象です。錯覚はこちらでまとめているので、もしよろしかったらご一緒にどうぞ!【パイロットと錯覚】|飛行機の安全に及ぼす人間の錯覚14選!
当時バーレーン国際空港の視界が悪く、空間式失調に陥りやすい状況が整っておりました。
操縦士達は、空間式失調に陥っていたので、GPWS(対地警報装置)が発動するまで上昇していると感じており、降下していることに気が付いていませんでした。

対策

空間式失調になった際に飛行機を安全に飛ばすためには、水平線などを目視するか計器からの情報を利用するしかありません。

今回の場合は、水平線などみられる視界ではなかったので、飛行機の計器を信用するしかありません。

体感では上昇していると感じても、計器を見れば高度が下がっていることがわかったでしょう。

例えば:

  • 高度計の値が下がる
  • 昇降計がマイナス方向を示す
  • 速度計が急激に増加
  • 姿勢指示器が擬似水平線より下に行っていた(通常最近の旅客機ではアプローチ中に機種は擬似水平線より下に行かず約2.5度程度)

まとめ

空間式失調が原因で実際に事故が起きていることがわかりました。きっと乗務していた操縦士も空間式失調のことは知っていたことでしょう。

高度と速度を旋回中に整えないといけないことや、滑走路まで1nmしかないというプレッシャーが2人にはかかっていました。

どんなに知識では空間式失調が怖いとわかったところで、実際に引き起こったら人はわからなくなってしまうものです。

普段から知識として頭に入れるだけでなく、実際にどのような時に引き起こりやすくて、どうしたらいいのかパッと出てくるようにイメージトレーニングが必要ですね。

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【参考文献】

エアラインパイロットのための航空事故防止 1