【気団】シベリア気団・オホーツク海気団・揚子江気団・赤道気団・小笠原気団

気団とは何か?

「気団」とは、水平方向にほぼ均一な物理的特性(気温と湿度)を持った空気の大きな塊です。気団は、上空や地上を移動することがあり、その移動に伴って周囲の大気と相互作用をするため、気象の変化をもたらします。

広範囲に一様な性質を持つ地表面に空気が長時間滞留し、その地表面の特性を獲得することで形成されますが、気団の性質は変化します。気団の変質の度合いは、移動速度、経路の地表面の特性等に依存します。

気団の境目などを飛行するときには、機内が激しく揺れたり、視界の低下など、気団は航空機の運航に影響を与える要因のひとつとなっています。

気団の特徴

気団の特徴には以下のようなものがあります。

  1. 温度、湿度、気圧などの気象要素が一定の範囲内で揃っていること:
    気団は、同じ温度や湿度、気圧などの気象要素を持った空気の集まりです。「空の集
  2. 面積が大きく、高度によって厚みがあること:
    気団は、大気の中で広がっているため、広範囲にわたります。水平方向に数千キロメートル、垂直方向に数キロメートルに達します。
  1. 移動によって周囲の大気と相互作用し、天候の変化をもたらすことがあること:
    気団は、移動することによって周囲の大気と相互作用し、「降水」「風」「雲」などの天候の変化をもたらすことがあります。たとえば、暖かい気団が冷たい気団と衝突すると、その接触面で温度の変化が起こり、これが天候の変化を引き起こします。
  1. 気団の発生場所により性質が異なること:
    海洋上で形成された気団は「湿潤」であることが多く、大陸上で形成された場合は「乾燥」している。また、低緯度で形成された気団の気温は「高い」などの特徴を持ちます。まあ、気団の移動中にその性質が変化することがあります。

特有の気団が形成される地域は気団の「発現地」と呼ばれています。日本を取り囲む気団5種類の特徴を見ていきましょう。

【図1】日本における気団の動き

1. シベリア気団(cPk)の特徴

シベリア気団(cPk)は、シベリアから中央アジアにかけて発生する気団であり、冬季に非常に寒い天候をもたらすことで知られています。

この気団は、非常に広大な範囲で発生し、シベリアを中心に西方から東方にかけての広大な地域に及びます。季節ごとの気温差が激しく、冬季には氷点下40℃以下に達することもあります。

シベリア気団は、冬季にシベリアからモンゴル、中国北部、朝鮮半島に向かって南下し、日本に到達します。冬は、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧がともに強まります。日本付近は等圧線が縦縞模様の冬型の気圧配置となって、北西の季節風が吹き、シベリアからの寒気を運んできます。この気団が日本の山脈にあたり、日本海側で「寒波」や「大雪」などの厳しい天候をもたらします。

また、シベリア気団は、大陸上で発生するため、乾燥した寒気が主体ですが、日本海を通過する際に気団の性質が変化し、日本海でより多くの水蒸気を含み、日本海側の地域に大雪をもたらします。

さらに、発生地域が広大であるため、北半球の寒冷地域の気象に大きな影響を与えています。

2. オホーツク気団(mPk)の特徴

オホーツク海気団(mPk)は、シベリア気団の一種で、オホーツク海上を発生源とします。シベリア気団と比べるとやや温暖で湿潤です。なので、オホーツク気団による降雪への影響は非常に大きく、北海道周辺の冬季の天候に大きく関りがあります。

この気団が発生すると、日本海側では大雪や吹雪、北海道内陸部では厳しい寒さが続くことが予想されます。

3. 揚子江気団(cT)の特徴

亜熱帯から温帯にかけて発生する気団で、中国南部を発生源とします。温暖で乾燥している特徴があります。揚子江気団は、偏西風の影響に日本にやってくるため、主に春や秋に活発になる傾向があります。

揚子江(ようすこう)は、中国を流れる3大河川のひとつで、長江の下流域に位置します。長さ約6,300キロメートルで、中国最長の河川であり、流域面積も約180万平方キロメートルに及びます。揚子江流域には多くの都市や工業地帯があり、中国有数の経済圏を形成しています。また、揚子江は、中国の水運の要所であり、航行が盛んな河川でもあります。「長江気団」と呼ばれることもあります。

4. 赤道気団(mE)の特徴

赤道付近で発生する気団で、高温・多湿な気団です。「大西洋」「太平洋」「インド洋」の赤道付近に帯状で発生します。

夏にかけ勢力が増し、日本に向け北上してきます。高温で多湿な特性を持つため、大気が不安定で「台風」「梅雨前線」などの「豪雨」「夕立」「強風」は赤道気団が関係することが多いです。また、大気の不安定さから、背の高い「積乱雲」の発達にも関係します。

日本付近に現れる「赤道気団」のことを「南洋気団」と呼ぶこともあります。

赤道気団が発生する地域は、エルニーニョ現象の影響も大きく受けます。エルニーニョ現象が発生すると、海面温度が上昇し、赤道気団の発生に大きな影響を与えます。

「エルニーニョ現象」は、太平洋赤道域で発生する海洋現象の一種で、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、日本をはじめ世界の異常気象や気候に大きな影響を与える現象です。

具体的には、エルニーニョ現象が発生すると、「南米西海岸」では豪雨や洪水が起こったり、「東南アジア」や「オーストラリア」では乾燥や干ばつが起こったりすることがあります。また、「北アメリカ」や「南アメリカの一部地域」でも、温度や降水量の異常が報告されています。

エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移ります(東風の勢力が弱まるため)。

【図2】エルニーニョ現象発生時(出典:気象庁)

一方、「ラニーニャ現象」は、「エルニーニョ現象」の逆で、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く(通常1年程度)場合を指します。

ラニーニャ現象が現れると、インドネシア側で積乱雲が発生しやすくなります。

【図3】ラニーニャ現象発生時(出典:気象庁)

「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」は、それぞれ数年おきに発生しています。

5. 小笠原気団(mTw)の特徴

日本の南に位置する小笠原諸島(南鳥島、沖ノ鳥島)付近で発生する気団で、高温・多湿の特徴があります。日本には、夏を告げる気団として知られています。

小笠原気団の勢力次第で、「梅雨」「夏」「秋雨」など日本の天気の変化をもたらしています。

梅雨・秋雨に関係する気団

梅雨(つゆ)と呼ばれる、曇りや雨の日が多くなる時期があります。日本では、5月末から7月初旬にかけて発生します。

これは、「小笠原気団」が夏に向け段々と勢力が増して北上し、「オホーツク海気団」と日本の上空で拮抗することで「停滞前線」を形成し、長雨をもたらします。

この停滞前線のことを「梅雨前線」とも言われています。梅雨は日本固有の気象現象ではなく、「韓国」や「中国南部」でも発生しています。

7月後半から8月にかけ、「小笠原気団」の勢力が強くなり、梅雨が明け、日本に夏の天気をもたらします。更に月日が流れ、9月に入ると「小笠原気団」の勢力が衰え始め、「オホーツク海気団」に押される形で南下してきます。日本の上空でこの二つの気団が再び拮抗し合う、「9月前半から10月前半」にかけ、「秋雨(あきさめ)」をもたらします。

この「停滞前線」のことを「秋雨前線(あきさめぜんせん)」や「秋霖前線(しゅうりんぜんせん)」と呼ぶことがあります。

北アメリカに影響する気団

【図4】北アメリカにおける気団の動き

地域が変わっても、気団の性質はその出来る場所により形成されます。

気団発生場所大陸で発生海洋上で発生
北方で発生寒冷・乾燥寒冷・湿潤
南方で発生温暖・乾燥温暖・湿潤
気団の発生場所とその特性

北極大陸上で形成される気団は、寒冷で乾燥した空気の特徴を持ち、カリブ海のような暖かい熱帯水域で形成された気団は温暖で湿潤な空気の特徴を持っています。また、アメリカ大陸のような広い地域を気団が移動する際に、気団の性質が変化します(湿潤から乾燥など)。

暖かい地表面を通過する気団は下から温められ、対流が促され、空気が上昇します。これにより、地表面の視程はよくなる傾向にありますが、大気は不安定になります。湿った不安定な大気は、「積乱雲」「にわか雨」「乱気流」を引き起こす原因になります。

逆に、冷たい地表面を通過する気団は、大気は安定しますが、視程が悪化します。視程が悪くなる原因は、「煙」「塵」「その他の微粒子」が地表近くの大気に留まるからです(対流現象が起きにくいため)。安定した気団は、低い「層積雲」や「」を生み出すことがあります。

寒気団が暖かい地表面の上に移動した場合の特性

寒気団が暖かい地表面の上に移動した場合の特性として、気団が下から温められ不安定となります。雲形は「積雲」「積乱雲」など積雲形の雲を生成し、天気は「しゅう雨」「雷雨」「雹(ひょう)」「霙(みぞれ)」「にわか雨」をもたらすことがあります。

大気の安定度は不安定気温減率(ほとんど乾燥断熱減率に近い値を示す)です。

不安定気温減率(Lapse rate)とは、大気中の気温が高度とともにどのように変化するかを表す指標のことです。

通常、大気中の温度は高度が上がるにつれて下がります。これは、大気中の圧力が低下するため、空気が膨張して冷却されるためです。この温度の変化率を不安定気温減率と呼びます。

空気が上昇する際に温度がどのように変化するかを示す指標の一つです。乾燥断熱減率(dry adiabatic lapse rate)は、大気が100メートル上昇するごとに約1℃の割合で下がります。

気団が航空機に与える影響

気団が航空機に与える影響は、主に以下のようなものが挙げられます。

  1. 激しい乱気流:
    気団間には温度差があり、それが原因で大気が不安定となり、航空機が乱気流に巻き込まれることがあります。これにより航空機が揺れたり、高度が急激に変化したりすることがあります。
  2. 悪天候の発生:
    気団により、悪天候が生じることがあります。気団により停滞前線が形成されれ、激しい雨や雷雨をもたらします。
  3. 急激な風向きの変化:
    気団が通過すると、風向きが急激に変化することがあります。これにより、離着陸時の進入方向が変更されたり、予期せぬ向かい風により、航空機の使用燃料量が増加することがあります。
  4. 視界不良の発生:
    気団の衝突により、霧や雲が発生することがあります。視界低下により航空機事故のリスクが高まります。
  5. 飛行ルートの変更:
    気団境界面では大気が不安定となり、積乱雲を発生させることもあり、飛行コースの変更や高度変更をする可能性があります。航空機の運航をするにあたり、リザーブ燃料を多く必要としたり、遅延やダイバートなど、予想されます。

参考文献

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