【一酸化炭素中毒】の症状とフライト中に起きた時の対処方法
一酸化炭素中毒がフライト中に発生したらどうしますか?
どんな症状が出て、どのように人々に影響を与えるのかご存知ですか?
一酸化炭素は、「無色」で「無臭」なので、気がつきにくいことがとても怖いところです。
今回は、最悪死に至ることもある一酸化炭素中毒の恐怖と、人体に与える影響を見ていきたいと思います。
一酸化炭素中毒とは?
人間の体内では、血中にあるヘモグロビンが酸素と結びつき各細胞まで酸素を運んでいます。
一酸化炭素中毒は、体内に吸い込んでしまうと、酸素よりもヘモグロビンにくっつきやすく、そのせいでヘモグロビンが細胞に酸素を運べなくしてしまいます。
その結果、肺でいくら酸素を取り込んでも、細胞まで行き届かずに、細胞が呼吸をできなくなってしまいます。
この現象は、低酸素症 (Hypoxia) の「Hypemic Hypoxia」にあたります。
参考|【生理学】パイロットを最悪死に追いやる低酸素症の種類4種!
一酸化炭素は酸素と比べて、約200〜250倍ヘモグロビンと結合しやすいと言われているのです。
空気中の一酸化炭素の濃度を図る単位は「ppm」が使われています。
原因は?
それでは、フライト中に一体何が原因で一酸化炭素中毒が引き起こされるのでしょうか?
一酸化炭素が発生する原因は、物が不完全燃焼をすると発生します。
航空機で燃焼をするというと、エンジンぐらいでしょう。
多くの小型機では、エンジンからの廃熱を使って機内の暖をとります。
この時、排気ガスが通る管の周りに、機内に送り込む温めたい空気を通し熱交換をします。
排気ガスと機内への空気は通常では、完全に交わることがありませんが、機体が古くなってくると、排気ガスの管に錆などで穴が空く可能性があります。
熱交換している場所で穴が開いてしまうと、機内に一酸化炭素が混じった排気ガスが流れ込んでしまう危険性があります。
タバコの煙にも、一酸化炭素が含まれますが一酸化炭素の濃度が比較的低いために急性の症状は発症していません。
ちなみに、タバコを全く吸わない人の呼気中の一酸化炭素は「0~6ppm」ぐらいしかないのに対して、常習的な喫煙者の呼気には「26〜35ppm」含まれています。
一酸化炭素中毒の症状は?
【一酸化炭素中毒の初期症状】
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 気分がすぐれない
- 判断能力の低下
これらの特徴は、風邪の初期症状と似ています。なので、一酸化炭素中毒にかかってしまっていても、「なんだか風邪気味のようだ」で済ませてしまって、気がつかないこともあります。
さらに、一酸化炭素とヘモグロビンが結合すると、赤っぽくなる性質があるので、一酸化炭素中毒者の顔色が赤みががったいい色に見えるそうです。
一酸化炭素中毒の症状は、一酸化炭素を吸い込んだ量が多いほど重たい症状になっていきます。
気がつかずにずっとフライト中ヒーターから来る一酸化炭素を吸い込み続け、血中の一酸化炭素濃度が高まっていくと、「初期症状」「視覚異常」「意識障害」「意識はあるが体が動きにくくなる」「昏睡状態」「死に至る」とどんどん重たい症状が現れてきます。
どうしたらいいの?
では、フライト中に一酸化炭素を吸い込んでしまっているかもしれないと気が付いた時には、一体どうしたらいいのでしょうか?
【手順】
- ヒーターを止める
- 窓を開け換気する
- Ventを開けて新鮮な空気を取り込む
- 酸素量が多い低高度に降りる
- なるべく早く最寄り空港に着陸する
- 病院に行き医師に診断してもらう
まずは、一酸化炭素を発生している原因である「ヒーターを止める」ことから始めましょう。
そして、密封された機内では一酸化炭素を吸い続けてしまうので、窓を開けVentを開けて、外の新鮮な空気を機内に送り込みましょう。
空気中の酸素量は気圧が高い方が多いので、窓を開けて高高度を飛行し続けるよりも、最低安全高度など出来るだけ低く飛べる高さまで高度を下ろすといいでしょう。
最後に、一番大切なのはいつ気を失ってしまうかわからないので、なるべく早く着陸をして、すぐに病院で医師に見てもらうことが大切です。
病院では、まず問診を行い、診察をしてくれます。
【血液ガス分析】
診察では、血液ガス分析という検査を行い、血中の一酸化炭素の濃度を調べます。
値は「COHb」というものが使われ、「CO = 一酸化炭素」「Hb = ヘモグロビン」という意味です。
値の目安は、タバコを吸わない方の平均では、「2%」以下で、常習的な喫煙者の方だと「5~13%」だそうです。
この数字よりも高いと、一酸化炭素中毒にかかってしまっている目安になるでしょう。
【画像検査】
急性的に一酸化炭素中毒にかかり、意識がなくなるなどして一刻も早い検査が必要な方は、MRI検査で、頭部CTスキャンを取り、両側淡蒼球(たんそきゅう)の異常信号を読み取ることでも一酸化炭素中毒であるか判断できるようです。
【酸素投与】
細胞が酸素を必要としているため、体に酸素を強制的に投与してあげます。
さらに、COHbの値が高い人には「高酸素療法」と呼ばれる治療が行われます。
これは、2〜3気圧の圧力を与えた中で、1回酸素濃度100%を90分から120分吸入する治療法です。
【回復期間】
一酸化炭素は、ヘモグロビンと結びつきやすいので、体内からなかなか出て行ってくれません。
症状が軽い人でも、48時間から数週間常務停止しなければいけません。
症状が重い人では、数ヶ月の入院治療が必要になったり、1年以上かけて後遺症が消えていく人もいたり、一生後遺症を抱えてしまう人までいます。
対策は?
一酸化炭素濃度を図る検出器が発売されています。
日本語で「一酸化炭素検出器」、英語で「Carbon Monoxide Detector」と調べればすぐに出てきます。
機内に貼り付け、色が変われば一酸化炭素濃度が高いと知らせてくれる数百円のものから、一酸化炭素を検知したらスマートフォンに知らせてくれるものまで色々な種類の一酸化炭素検出器が売られているようです。
まとめ
最悪死に至るとても怖い一酸化炭素中毒について見てきました。
一酸化炭素自体には色も匂いもついていませんが、排気ガスには匂いがついています。
なので、機内で少しでも排気ガスの匂いがしたと思ったら直ぐにでも、一酸化炭素中毒を危惧しましょう。
また、体調が急激に変化して風邪気味だと感じたら、キャビンヒーターを使用しなかったなど確認したり、一酸化炭素検出器に目をやるようにするといいでしょう。
今回は、フライト中に発生する可能性がある、一酸化炭素中毒の恐ろしさから対応策までご紹介しました。
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