【飛行機のエンジン】キャブレターアイシングの仕組み・影響・起こる環境
前回のキャブレターシステムの分類の中で、フロートタイプのキャブレターの欠点として、アイシングが引き起こる事があるとご紹介しました。
今回は、どのようにキャブレターアイシングが引き起こり、どのような影響が出て、どのような時に引き起こりやすいのか見ていきましょう。
キャブレターアイシングの仕組み
エンジンがパワーを生み出す為には、酸素と燃料が必要です。
まず、上図の下側から空気を取り込みます。
キャブレターシステムは、空気と霧状にした燃料をシリンダーに送り込みます。
この酸素と燃料を混ぜ合わせるところは、ベンチュリ効果を利用しています。
なので、そこのエリアでは急激に気圧が低くなるところが意図的に作り出されています。
気圧が低くなるという事は、気温が低くなります。
さらに、この気温が低くなる特性と同時に、燃料が霧状に噴射されるので、気化した燃料がさらにそのエリアの温度を下げる効果があります。
よって、取り込まれた空気内や燃料内に水分があると、氷点下以下まで温度が下がった時に、着氷を引き起こしてしまうのです。
これがキャブレターの中で起こるので、「キャブレターアイシング」と呼ばれています。
キャブレターアイシングの影響
上図のように、キャブレター内で着氷が進むと空気の通り道が細くなってしまいます。
なので、燃料と空気の混合されたものがシリンダーにうまく送り届けられず、エンジンが本来持っているパワーを出す事ができなくなってしまいます。
又、どの程度燃料と空気の混合物をシリンダーに送るか決めているスロットルバルブが凍ってしまい、開閉できなくなるとパイロットがスロットルを出し入れしても反応しなくなってしまいます。
キャブレターアイシングが引き起こる温度と湿度
キャブレターアイシングが引き起こりやすい環境:
- 温度:21℃(70℉)
- 湿度:80%以上
の時だと言われています。(図の赤いエリア)
しかし、これより温度が高くて湿度も低いからといって、安心はできません。
- 温度:38℃(100°F)以下
- 湿度:50%以上
の状況でもキャブレターアイシングが引き起こる可能性があります。(図の青いエリア)
キャブレーターアイシングの兆候
キャブレターアイシングの兆候は、どのタイプのプロペラを装備しているかによって、変わってきます。
世の中のプロペラ機は、大きく分けて「Fixed-Pitchプロペラ」か「Constant-Speedプロペラ」の2つに分類できます。
それぞれのプロペラの場合、どのような影響が出てくるのか見ていきましょう。
【Fixed-Pitchプロペラの場合の兆候】
エンジンRPMの低下で確認する事ができます。
また、エンジンが「ガタガタ」いうような、ラフな挙動が発生します。
【Constant-Speedプロペラの場合の兆候】
このタイプの場合は、マニフォールドプレッシャーの減少として兆候が現れます。先ほどとは違い、RPMの減少などは引き起こりません。
エンジンのパワーが低下すると、自動的にプロペラの角度を調整して、プロペラのRPMを自動的に保ってくれるシステムがついているからです。
まとめ
キャブレターアイシングは、「上昇中」「水平飛行中」「降下中」など、いつもで引き起こる可能性があります。
特に降下中は、エンジンをアイドル近くまで絞っているので、先ほどの調光に気が付きにくいです。
降下から水平飛行に移ろうとしたときや、Go Aroundで急にパワーが必要になってスロットルを足した時に、キャブレターアイシングに気が付いたのでは、手遅れになってしまうこともあるでしょう。
この欠点を補う為に、キャブレターヒートというシステムがついているのです。
次回、キャブレターヒートについて見ていきましょう。
【関連記事】
- キャブレターアイシング (Carburetor Icing)
- ベンチュリ菅の法則 (Venturi Tube)
- 【キャブレーターシステム】ミクスチャー操作とEGTの関係性とは!?
- 【飛行機のエンジン】キャブレターシステムの分類
- 【飛行機のエンジン】ピストンエンジンの未来はどうなるの?
【参考文献】