【飛行機のエンジン】ジェットエンジンの特徴(プロペラ機と比べて)

世界中で飛んでいる飛行機は、大きく分けて2つあります。

ジェット機とプロペラ機です。

多くのパイロットは、小型のプロペラ機で練習を経てから、ジェット機に進む人が多いです。

プロペラ機からジェット機への移行の際に、それぞれの特性の違いから戸惑いが生じます。

今回は、そんなジェット機とプロペラ機の違いを見ていきましょう。

ジェット機とプロペラエフェクト

ジェット機とプロペラ機の大きな違いは、プロペラエフェクトがあるかないかでしょう。

ジェットエンジンには、プロペラエフェクトは存在しません。

なぜなら:

  • プロペラスリップストリームがない
  • プロペラのドラッグがない

からです。それぞれを見ていきましょう。

プロペラスリップストリームがない

プロペラは回転する事により、多くの空気を後ろに掻き出し、推力を得ています。

特に、主翼にプロペラが取り付けられているタイプは、多くのプロペラによってかき出された空気が主翼にあたります。

これが多くのリフトを生み出しています。

なので、スラストを絞ると速度が変わっていないにもかかわらず、リフトが減少してしまいます。

その逆も引き起こります。

例えば、プロペラ機はアプローチ中とても低高度になったり低速度になっても、スラストの出し入れをすればすぐに反応して立て直すことができます。

スラストを足すと、リフトが増加したと同時にストールスピードが低下します。

一方、ジェットエンジンも前方の空気を後方に勢いよく流すことで推力を得ていますが、ジェットエンジンの中を空気が通過するので、主翼にはエンジン通過後の風があたりません。

なので、スラストを足してもそれが翼にあたり、リフト増加のボーナスは得られません。

よって、ストールスピードが低下することもありません。

プロペラ機が得られるリフトボーナス

プロペラのドラッグがない

プロペラ機で急激にスラストを絞ると、機体は急に減速をするか高度を落とします。

これは、プロペラの回転数が急激に落ちて、抵抗が増す為です。

しかし、ジェットエンジンはスラストをアイドルに絞っても、さほど抵抗は増えません。

逆に、アイドル状態でも多少の推力を生み出しています。

これは、メリットでもありデメリットでもあります。

抵抗が増えないので、効率よく運航すれば燃費はよくなりますが、降下の時に抵抗が得られず、オーバースピードに陥りやすくなります。

プロペラ機からジェット機への移行で、多くのパイロットが陥りやすい問題が、この抵抗が少ないことでしょう。

また、プロペラ機では「Power-on Stall」と「Power-off Stall」のマージンが、約10ktあるのに対して、ジェットエンジン機では、そのマージンがありません。

このような点から、プロペラ機とジェット機では機体の反応が違うので、アプローチなどに違いが出て来ます。

どちらかというと、プロペラ機の方がリカバリーがしやすいと言えるでしょう。

逆に、ジェット機ではうまくいくアプローチ操作のマージンが狭いと言えるでしょう。

ジェットエンジンのオペレーションで注意するべき点は:

  • 加速することだけがリフトを増す手段
  • アイドルからマックスパワーまで、最大8秒かかるのですぐには加速できない=高度が落ちるかさらに速度低下

です。ジェットエンジンは降下中などは特に減速しづらく、リフトが欲しくてもすぐには手に入らないという欠点があります。

なので、ジェット機の方がより安定したアプローチ(Stabilized Approach)が求められます。

ここでいう安定したアプローチとは、ランディングコンディションで、一定の対気速度、一定の降下率、比較的高パワーセッティングをThresholdまで維持する事を指します。

これらを保つことができれば、急激なスラストレバーの操作を避け、ゆったりと飛行機を飛ばすことが可能になります。

また、Go AroundやMissed Approachの際にもスムーズにパワーを入れ反応を得ることができます。

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