飛行機の燃料システムの構成はどうなっているの?パーツの役目は?

燃料システムの構成を知っていますか?

ただ、「燃料タンク」と「シリンダー」をホースで繋いだだけのシステムではありません。

今回は、燃料システムに取り付けられるパーツと、どのような役目があるのか見ていきましょう。

プライマー|Fuel Primer

プライマーの仕事は、エンジンスタート前に燃料タンクから提供された燃料を燃えやすいように気化させ、シリンダーに送る役目があります。

特に寒い時のエンジンスタートは、キャブレーターシステムでは燃料をうまく気化させることが難しいです。

プライマーは、手動のものと電動のものがあります。

古い機体では手動タイプのプライマーが残っており、プライマーのレバーがコックピットについているので、それを前後に何回か動かし使います。

主にエンジンスタートとの時に使用するだけなので、使わないときはしっかりとロックして動かないようにしましょう。

ロックしておかないと、エンジンの振動でだんだんとプライマーが動いてしまい、エンジンへの燃料供給がリッチ側にかたより過ぎてしまうからです。

現在の多くの小型機では、電動で動く「Fuel Pump」などという名称でスイッチがついているので、そのスイッチをonにするだけで勝手にプライミングしてくれます。

使い終わったらOffポジションに戻します。

燃料タンク|Fuel Tanks

高翼機でも低翼機でも、多くの燃料タンクは翼の中に位置しています。

燃料タンクの上部に、燃料キャップ(Filler Cap|上写真参照)が取り付けられており、そこから燃料を補給できるようになっています。

翼が長い機体だと、翼の先端に1個、根元に1個ついていることもあります。

タンクに外気を取り込むための通気口が、燃料キャップやベントに取り付けられています。

通気口がないと、タンク内の燃料が減っていくと、タンク内の圧力が低くなり燃料がタンクに吸い戻される力が加わり、うまく燃料が流れなくなってしまいます。

また、オーバーフロードレインというものも取り付けられており、満タンに燃料が入っている時などに、外気温度が上昇して燃料が膨張したら、タンクの外に燃料を逃すことでタンクの破裂を防いでくれています。

初めて燃料が排出されるところを見る人は、燃料タンクから燃料が漏れていると焦ってしまうことでしょう。

暖かい日のオペレーションで、オーバーフロードレインから燃料が滴り落ちるのは決して珍しいものではありません。

燃料ゲージ|Fuel Gauges

燃料ゲージは、どのぐらいの燃料がタンクの中に入っているのか教えてくれる計器です。

使われる単位は、小型機だと体積を使用し、大型機では重さの単位を使用します。

なので、小型機ではガロンやリッターで表記されることが多く、大型機はパウンドやキログラムが多いです。

訓練機で使用されることが多いセスナ172モデルは、製造国がアメリカ合衆国ということもありガロン表記となっています。

燃料ゲージは大雑把なものなので、それほどあてにはなりません。

唯一正しい値を表示するときは、タンク内の燃料が空になった時です。

それ以外では、例え燃料ゲージが20ガロンと表示していても、ぴったり20ガロン残されているとは限りません。

なので、飛行前にタンク内の燃料を目で確認しメモを取り、飛行時間と1時間当たりの燃料消費量で計算し、本当に燃料ゲージが正しく動いているのか定期的に確認する必要があります。

また、燃料ポンプが採用されている機体では、燃料圧力計も取り付けられていることが多いです。

燃料圧力計は、燃料管の中の圧力を示しており、AFMやPOHでどのぐらいの圧力が正常か記載されているので、頭にその数値を入れて見比べると、燃料ポンプの故障などに気がつけることでしょう。

燃料セレクター|Fuel Selectors

小型機の燃料タンクは、左と右の翼に分かれていることが多いです。

燃料セレクターは、どちらのタンクから燃料を取り込むか決めるためのものです。

この図のようにセレクターのポジションは「Both」「Left」「Right」「Off」の4ポジションあります。

通常は、セレクターをBothの位置にしておき、両方のタンクから燃料を使用します。

しかし、長時間飛行しているとタンクの残念量にばらつきが出てきて、飛行機が傾いてしまう時があります。

そんな時は、レベルフライトをしている時など限定的にセレクターを「Left」や「Right」にして、燃料が多い方のタンクから燃料を減らし、バランスを保つことをします。

セレクターの使用は、離着陸時には「Both」にしなければいけないなどリミテーションがあるので、機体のAFMやPOHを熟読するようにしましょう。

セレクターを「Left」や「Right」にした時は、こまめに注意しておかないと、片方の燃料タンクだけが空になってしまいかねません。

そうなると、エンジンが止まってしまうだけでなく、燃料システムに空気が入り込み「ベイパーロック」を発生させてしまい、エンジンの再点火を難しくしてしまいます。

「Off」ポジションは、地上にいる時など燃料を必要としない時に使用します。

また、不時着などの時にOffポジションにすることにより、余分な燃料を遮断でき、火災の被害が軽減されることができるでしょう。

Fuel Strainers, Sumps, and Drains

ストレイナーを燃料タンクとキャブレーターの間に取り付けることにより、燃料が気化する前に燃料内の「水分」や「堆積物」を除去することができます。

これらは燃料より重たい性質があるので、「ストレイナー」「サンプ」「ドレイン」は燃料より重たい性質を利用して、燃料内の不純物を取り除くことができます。

ストレイナーが水分や堆積物でいっぱいになってしまっては、取り除く効果がないので、飛行前に一度ストレイナーを空にする必要があります。

ドレインやサンプにも水分が溜まっていないか、上の写真のような容器に少し燃料を取り出して目視確認します。

水分や堆積物が入っていた場合、何度か確認作業を繰り返し、完全に水分や堆積物がなくなったことを確認してからでないと、離陸をしてはいけません。

燃料中に水分が混ざっていると危険な理由は、飛行機が高度を上げ機体や燃料が冷却されると、燃料ラインの中で水分が凍ってしまい、燃料の流れをせきとめてしまうかもしれないからです。

また、暖かい日では燃料と一緒に水分がキャブレターまで送られたとしても、キャブレターアイシングを引き起こしてしまうかもしれないでしょう。

まとめ

何か知らないパーツはありましたか?

飛行機にとってどれも必要なパーツなので、しっかりとその名前と役割を覚えておきましょう。

実地試験の口述試験の中で、燃料システムの図を書かせたり、その役目を聞いたりするほど大事なものです。

それらパーツの仕組みや重要性を理解したうえで、どうやったら「燃料セレクター」をBothにするのを忘れずに済むのか考えていきましょう。

 

【参考文献】