【緊急通信】いざとなったときにしっかりとATCできますか?
パイロット人生のうち、緊急事態が発生する人はわずかですが、一生のうちに何度も経験する人がいます。
きっと自分は大丈夫であろうと思っていませんか?
いつ何時緊急事態になったとしてもおかしくはないです。
そう頭ではわかっていても、こない可能性が高い緊急事態に完璧に準備が普段からできる人は少ないのかもしれないですね。
今回は、そんな緊急事態が発生した時に使う、緊急通信の要領について見ていきたいと思います。
通信の優先順位
- 遭難通信
- 緊急通信
- 方向探知に関する通信
- ATCに関する通信
- ATC Clearance、 位置通報など
- 航行援助に関する通信
- NOTAM、W/Xなど
- 航空機の運航に関する通信
このように、一番緊急ですぐに援助が必要なものから優先順位がつけられています。
滅多にないと思いますが、自分が緊急通信を行おうとしているときに、他の機体の遭難通信が入ったとします。
そうした場合、緊急通信よりも遭難通信の方が優先順位が高いので、優先的に取り扱われることになります。
その他、航空機の運航に関する通信など、後に回してもいいものは後に回されますし、一刻も争う遭難通信の妨害をしないように心がける必要があります。
もし、同一順位の通信が入った場合には、発信された順番により、先に発信した方が優先順位が上になります。
遭難/緊急通信の周波数
もし、遭難/緊急通信を発信するなら、どの周波数で発信しますか?
【遭難/緊急通信の周波数】
- 現在使用しているATC
- 121.5MHz
- 243.0MHz
- 406.0MHz(ELTなどがコスパスサーサットに自動的に発信)
- 2,182KHz(洋上)
多くのエアラインの場合、COM1でATCとの通信を行い、COM2はゲート出発後から121.5MHzを聴取していることが多いと思います。
もし緊急事態が発生した場合には、現在使用している周波数で発信しても問題はありません。
遭難/緊急通信の通報要領
遭難/緊急通信で使用する周波数がわかりました。
では、実際に通信するときにどんなことを言うか考えたことはありますか?
【通報要領】
- MAYDAY or PAN-PAN…3回
- 管制機関のコールサイン
- 自機のコールサイン
- 遭難もしくは緊急状態の種類(内容)
- パイロットの意図(取ろうとする措置)
- 現在位置、高度およびヘディング
- その他(搭乗者数、飛行可能時間等)
これを覚えておくと、実際に緊急事態に陥ったときに、何を伝えればいいのかパニックにならずに済むでしょう。
通信の注意点
これは、緊急通信に限ったことではありませんが、無線機を使って通信するにはコツがいります。
顔を合わせて話すのとは訳が違いますし、雑音などが入り相手の声が聞き取りにくいです。
なので、相手が聞き取りやすいように工夫して発信しなければなりません。
緊急時の時間が迫っている中で、一発でATCに伝えることができれば、それだけ無駄な時間を省くことができるでしょう。
【無線送信時の注意点】
- 普段の会話より、はっきり発音する
- 送信速度は100語/min程度(意外と遅いと感じるのではないでしょうか)
- 口とマイクの距離は一定にし、ボリュームも一定に話す
- PTT(Press To Talk:発信スイッチ)スイッチを押す前に、何を話すか考え、他の人の通信の妨害をしないかよく聞く
- 呼び出しに返答がないときは、最低10秒間の間隔をおいてから再び呼び出す
遭難/緊急通報の伝送
もし、上空を飛行しているときに、他の機体が遭難/緊急通信を自機が受信して、伝送をしてあげなければいけなさそうな状況の時、どのように伝送をしようか考えたことはありますか?
【遭難/緊急通信の伝送】
- MAYDAY or PAN-PAN…3回
- 相手通信局のコールサイン…1回
- 自機のコールサイン…1回
- Intercepted Distress / Urgency Call from (call sign)
- 元の通信の内容(伝送)
先ほどの、自分で発信する時と、伝送する時は少し違うのがわかりました。
どの航空機から、発信されたものを伝送しているのか伝えるために、航空機のコールサインも覚えておかないといけないですね。
伝送をしなければいけない時
困った時はお互い様とよく言いますが、伝送をして助けてあげなければいけない時が決められています。
【伝送をしなければいけない時】
- 自ら遭難/緊急通報を送信できないとき
- 地上局に遭難/緊急通信が届いていないと思われる時
- さらに援助が必要だと思われる時
おまけ
遭難/緊急通信とは少し違うお話になりますが、地上での災害が発生したときに、多くの航空機が救難活動を行うことがあります。
タワー空港の付近で災害は起きるのではないので、場外飛行場を臨時に設置したり、航空機同士が情報のやり取りをしなければなりません。
そんなときに使われる周波数は、日本では「123.45MHz」です。
アメリカでは、航空機同士がたわいもないやり取りをしたいときなどに、123.45MHzを使用します。
なので、アメリカのFAAライセンスを取って帰国されたパイロットは、そこのところ間違わないようにしましょう。
アメリカで言う「123.45MHz」で通信をしたいとき、日本では「122.6MHz」が使用されています。
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【参考記事】
Radio_Telephony_Meeting_Vol_008