「プレイグニションって何?」
「デトネーションが起こるとどうなるの?」
ピストンエンジン機が最も恐れるべきエンジンの不具合は「プレイグニション」と「デトネーション」です。簡単に言うと、両方とも「思ったように混合気が燃焼しない」状況です。これらの現象が引き起こると、上昇中にエンジン出力が失われ、最悪墜落につながる可能性もあります。
この記事では「プレイグニション」と「デトネーション」の概要や危険性、そして気になる対処方法を解説していきます。
・プレイグニションの概要
・デトネーションの概要、原因、防止方法
・パイロットが過去に問われた「プレイグニション」と「デトネーション」の知識
この記事を最後まで読めば、「プレイグニション」と「デトネーション」の危険性が把握でき、適切な予防対策をとることが出来るでしょう。知らず知らずのうちにエンジンを破壊してしまわないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
プレイグニション(Preignition|早期燃焼)とは
プレイグニションとは、シリンダー内において適正な点火のタイミング前に燃料と空気の混合気が燃焼してしまう現象です。
通常の燃焼では、混合気は緻密に制御されたタイミングで着火・燃焼されます。混合気は点火プラグで点火される点から燃焼を始め、シリンダー内へと炎が広がります。この燃焼方法により、シリンダー内の温度と圧力はスムーズに上昇し、膨張する燃焼ガスが正確なタイミングでピストンに力を受け渡します。
しかし、この燃焼のタイミングがずれてしまうとピストンに最大の力を受け渡すことが出来ず、エンジンはその性能を十分に発揮することが出来なくなってしまします。
プレイグニションが発生する原因として、燃焼室内に「スパークプラグの小さな炭素沈着」「割れたスパークプラグの絶縁体」「シリンダー内のその他の損傷」があり、その部分が異常に熱を持ってしまい、スパークプラグが適切なタイミングで火花を放つ前に混合気が着火してしまいます。
プレイグニッションは、「エンジンの出力低下」と「オーバーヒート」を引き起こします。
デトネーションと同様に、プレイグニッションもピストンがまだ圧縮ストロークにある間に膨張ガスがピストンに過剰な圧力をかけるため、重大なエンジン損傷を引き起こす可能性があります。
デトネーション(Detonation|異常燃焼)とは
デトネーションとは、燃焼室内で燃料と空気の混合気が制御不能な爆発的な着火を引き起こす現象です。この爆発によって、「ピストン」「シリンダー」「バルブ」の故障につながる過剰な温度と圧力が生じます。
比較的軽度の場合には、エンジンの「過熱」「振動」「出力低下」で済むこともありますが、飛行機の心臓部であるエンジンに大きなダメージを与えてしまいます。

デトネーションが引き起こる原因
デトネーションは、エンジンが高出力時で稼働中に最も起こりやすい現象です。デトネーションの一般的な発生原因は以下の通りです:
- 航空機メーカーが指定した燃料グレードよりも低い燃料を使用すること
- マニホールド圧力が極端に高く、回転数が低い状態でエンジンを運転すること
- エンジンを過度に貧しい混合気(燃料と空気の混合を極度に薄くする)で高出力で運転すること
- シリンダーの冷却が追いつかないぐらい「長時間の地上運転」や「角度のある上昇」を維持すること
これら4つの原因に関係することは、「シリンダー温度を異常に高温にさせる」です。
デトネーションの防止方法
地上や上空で、以下の基本的なガイドラインに従うことでデトネーション発生を予防することができます。
- 適切な燃料グレードを使用することを確認する
- 地上でカウルフラップ(使用可能な場合)を完全に開いた状態にして、カウリングを通る気流を増やす
- 離陸時および初期上昇中にシリンダーの冷却を増やすため、燃料混合を濃くし比較的浅い上昇角で上昇する
- 長時間の高出力、角度のある上昇を避ける
- 航空機製造メーカーが定めた手順に従って、エンジン計器を監視し、正しい動作を確認する習慣を身につける
共通点として、「シリンダーを必要以上に高温にさせない」ことです。
パイロットが学科試験で問われる「デトネーション」の知識
【過去問】令和5年3月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12

デトネーションを防止する方法として、シリンダーの温度を低く保つことが重要です。なので、正解は(4)と言えるでしょう。
エンジン燃焼室において、燃料が異常燃焼を起こす現象をノッキングと呼ぶが、このノッキングが発生しにくい性質のことをアンチノック性という。ガソリンのオクタン価はアンチノック性を示す数値となっており、数値が高ければ高いほど安定した燃焼が期待できる。
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上記はアンチノック性についての説明です。ピストンエンジンには4種類、タービンエンジンには2種類の燃料が使用されています。もし、それらの違いについて興味がある方は以下のリンク先でご紹介しております。
【一覧】操縦士学科試験出題履歴
- 【過去問】令和5年3月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和4年11月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和4年7月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和4年3月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和3年11月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和3年7月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和3年3月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和2年11月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和2年7月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和2年3月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和元年11月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
- 【過去問】令和元年7月期/自家用操縦士/航空工学/学科試験問題12
まとめ
「プレイグニッション」と「デトネーション」はしばしば同時に発生し、一方が他方を引き起こすことがあります。どちらの症状も「エンジンの性能低下」や「オーバーヒート」を引き起こすため、区別することは難しいです。
出来る対策として、「推奨される燃料グレードを使用」「エンジンを適切な温度、圧力、およびrpm範囲内で運用」することにより、デトネーションやプレイグニッションの発生率を低減することができるでしょう。