【飛行機のエンジン】冷却システムはどうなっているの?
当然ですが、シリンダー内で燃料を燃やすと、熱を生み出します。
この熱の処理をうまくしてあげないと、エンジンの最大限のパフォーマンスが発揮できないばかりか、熱疲労などが発生し最悪エンジンが壊滅的なダメージを受けてしまいます。
エンジンのライフサイクルが短くなってしまうこともあります。
今回は、そんなエンジンがパワーを生み出した後に発生する、副作用である熱の処理について見ていきましょう。
熱の影響
その熱の多くは、排気ガスとして機体の外に導かれます。
全ての熱が排出されるわけではないので、シリンダー内に残った熱をオーバーヒートしないように、冷却してあげる必要があります。
エンジン温度が高くなりすぎると、「エンジンオイルの消費が増加」「デトネーション」「何かしらのエンジンへのダメージ」が予想されます。
多くの小型機は、空冷式でエンジンを冷却しますが、中には水冷式のエンジンもあります。
また、エンジンオイルがエンジンの冷却の作業も担っています。
エンジン温度が高くなりすぎると「シリンダー壁」「ピストン」「ピストンリング」「バルブ」がダメージを受ける可能性があります。
空冷式

エンジン前方のカウリングから空気を取り込んで、エンジンを冷却します。
シリンダーには、無数のフィンが取り付けられており、そのフィンに空気が当たることにより熱をシリンダーから奪い取っています。
上図のように、エンジン前方から外気を取り込んで、シリンダーを前方から順番に冷やし、熱を帯びた空気をカウリングの下から排出します。
この流れの繰り返しを行い、シリンダーの温度は正常に保たれています。

上写真のように、プロペラの後ろ(プロペラスピナーの横)から空気を取り込みます。
空気がうまく流れないと、冷却効率が悪くなります。
なので、地上にいる時などは入ってくる空気が少なくなるに加え、上空よりも空気が暖かいと言う欠点があります。
そのほかにも、「テイクオフ」「ゴーアラウンド」「その他の高出力セッティング時」のときは、冷却するのが難しいです。
逆に、アイドルで急降下するとエンジンが急激に冷やされてしまいます。
エンジン温度の管理でパイロットができる事
パイロットができる事は、エンジン計器をモニターしてエンジンが熱すぎず冷たくなりすぎないように、調整してあげる事です。
カウルフラップが取り付けられている機体は、カウルフラップの開閉でエンジン冷却の効果を増す事ができます。
カウルフラップがついていない場合は、「対気速度」と「パワーセッティング」の加減でエンジン温度をコントロールする事ができます。
例えば、エンジン温度が高くなってきたとなれば:
- カウルフラップがあれば、カウルフラップを開ける
- 対気速度を速くする
- エンジン出力を絞る
- ミクスチャーをリッチ側にする
など対処ができるでしょう。
また、これらを組み合わせる事でより効果的にエンジン温度を調整する事ができます。
注意点
エンジン温度を確認する計器として、エンジンオイルの温度計しか取り付けられている場合は使用がないですが、この計器を使用するのはあまりお勧めできません。
なぜなら、エンジンオイルは潤滑しているので、エンジンの温度が急激に上昇しても、景気に反映されるまで時間がかかってしまうからです。
タイムリーに調整できないので、対処がゴテゴテになってしまうでしょう。
多くの飛行機では、エンジン温度を確認する計器として「シリンダーヘッド温度計」が取り付けられています。
こちらの方が、タイムリーにエンジンの温度が分かるでしょう。
また、緑色は通常のオペレーションレンジや、赤色は限界温度など、色分けされていてとてもわかりやすいです。
まとめ
エンジンの温度管理の大切さを学びました。
今まで、RPMやマニフォールドプレッシャーばかり見ていた人も、エンジンの温度を気にするようになるきっかけになったのではないでしょうか?
エンジンは冷えすぎても、熱すぎてもいけないのです。
カウルフラップが取り付けれている飛行機は、開け閉めするだけでエンジン温度の調整ができるので、比較的温度調整が容易でしょう。
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【参考文献】