フレアーという言葉を聞いた事がありますか?
飛行機の操縦訓練を始めるまで聞かない言葉だと思います。
飛行機がアプローチをしてきて、ある高さになったら滑走路に対して進入角を浅くし、減速をして滑走路にタッチダウンします。
この一連の流れをフレアーと呼んでいます。
このフレアーがうまくできるかどうかで、ハードランディングになるか優しく接地できるかの境目となでしょう。
今回は、飛行機のフレアーについて見ていきましょう。
フレアーはどうやるの?
多くの滑走路では、飛行機は約3度の角度で進入します。
この場合、約10〜20フィート(3〜6メートル)の高さでフレアーを開始します。
タッチダウンするまで進入角を徐々に浅くしていき、これにより接地の際の衝撃をやわらげる事ができます。
滑走路から10〜20フィートの高さになったら、パイロットは操縦桿を徐々に引いていきます。
これにより、機首が上げられ翼のAOAが大きくなります。
前輪が持ち上げられ、メインギアから着陸ができる姿勢が作られます。
この機首上げ操作は、優しくスムーズに行わなければなりません。
急激にピッチアップ操作をおこなうと、AOAが大きくなった分リフトが増してしまい、降下が止まってしまったり、逆に上昇してしまいます。
降下パスを浅くするために、リフトを増加させてあげたいのです。
通常接地のときは、パワーをアイドルまで絞っている事が多いので、リフトの増加はピッチ操作のみで変化します。
また、エンジン出力を絞っているので、フレアーの際には速度が徐々に減速していきます。
リフトの公式からもわかるように、速度の減少はリフトの減少を引き起こします。
よって、「減速→ピッチアップ→減速→更にピッチアップ」の流れを接地まで繰り返します。
フレアー操作を言い換えると、正しい接地の姿勢と速度を整え、降下率を調整する操作といえるでしょう。
フレアーとピッチアップのレート
フレアーを行う際のピッチアップのレートはどのぐらいで行うものなのでしょうか?
それは、ケースバイケースです。
例えば、飛行機がフレアー開始した高度が20フィートなのか、10フィートなのかで変わります。
もし高い高度でフレアーを開始したのであれば、ピッチアップのレートをゆっくりにしてあげないと、地面に近づく前に速度が低下し過ぎてしまうでしょう。
逆に地面に近いときは、ピッチアップのレートを速くしてあげないと、十分にフレアーする前に接地してしまいます。
フレアー開始が高かろうが低かろうが、接地する際の降下率が低ければ衝撃が小さくなります。
例えば、500fpmでアプローチしてきたのであれば、「250fpm→100fpm→50fpm→接地」など、徐々に降下率を小さくしていけばいいのです。
フレアーと目線
フレアーで速度を落としている段階では、車輪が滑走路から数十センチのところを飛行しています。
この高度を維持するには、コックピットから見える前方の景色と、横から見える景色が重要です。
自分が滑走路からどのぐらいの高さにいるのか、立体的に見えるようになるとフレアー操作は安定してきます。
フレアーの際に何がどのように見えるのかは、人によって違うでしょう。
まず、フレアー開始前に機体前方の約10〜15°した方向を眺めておきます。
そうすると、高度が徐々に降りてきて滑走路の進入端が後ろに流れていきます。
そしてさらに降りてくると、周辺視野で滑走路や滑走路近くにあるものが、さらに後ろに流れていくのが見えるでしょう。
この滑走路の流れの変化は、どのぐらい高度が降りてきているのか判断するのに役立ちます。
また、前方を眺めておくことで得られる情報は、ピッチ角の変化と進行方向です。
ピッチが上がりすぎると、オーバーフレアーになり滑走路に近付かず、なかなか接地できない原因になります。
また、ときに急激に操縦桿を引いてしまい、ピッチを上げすぎてしまうこともあるでしょう。
飛行機の前方を眺めていると、ピッチがどのぐらい上がっているのかわかるので、微調整をしてあげる事ができます。
フレアーを成功させるには、機体の前と横の景色からそれぞれの情報を引き出す事が重要です。
どちらかだけに頼ってしまうと、立体的に機体がどの高さにいるのか感じ取る事が難しくなってしまいます。
- 機体の前方:どのぐらいの高さにいて、どのぐらいピッチアップしているのか読み取ります。また、滑走路の中心を飛行しているのかの判断も大事です。
- 機体の側面:周辺視野を使って、滑走路やその近くに置いてあるものが通過する速度を感じ取り、前方からの情報と組み合わせることで、立体的に高さを感じる事ができるようになります。
フラップ角度とピッチ
フレアーの際の目線は、フラップの角度によって変わるので注意が必要です。
フラップが故障して、No-Flapアプローチを行わなければいけない時があるかもしれません。
また、騒音軽減地域などでは、1段浅いフラップを使用してアプローチすることもあります。
フラップの角度が深いほど(フルフラップ側)ピッチダウンしている傾向があります。
これは、アプローチ速度が同じであれば、フラップアップしている方がピッチを上げてAOAを大きくしてあげないと、リフトとウェイトのバランスが釣り合わないからです。
浅い角度のフラップを使用している時は、すでにピッチアップをしてアプローチしているので、フレアー時のピッチアップも小さい量ですみます。
逆に、フルフラップの時のように操縦桿を引いてしまうと、ピッチが上がりすぎテイルヒットの可能性が高くなります。
さらにフルフラップのときは、ピッチが比較的下がっているので、フレアーに入った際により大きくピッチアップしてあげなければいけないのです。
フレアーとピッチ変化
フレアーに入った際に、ピッチアップをしすぎたからといって、操縦桿を前に倒してはいけません。
エレベーターを手前に引いている力を少し緩めてあげるか、そこで維持していることにより、速度が落ちていくと同時にリフトの力が弱まり、自然と地面に向け降下していきます。
その中でピッチダウン操作をすると、とても大きな変化になり多くの場合、前輪から地面に激突する結果を招いてしまうのでとても危険です。
もしいつもより高いところでフレアーをしてしまい、落着気味になりそうだと判断したら、少しパワーを足してあげると良いでしょう。
高いところから落ちると降下率が大きくなり、機体に衝撃がはしります。
しかし、速度が落ちている状態だとピッチアップの限界まできている事が多いので、それ以上操縦桿を引くとテイルヒットをしてしまう可能性があります。
そんな時は、パワーを足す事で降下率を下げる事ができます。
また、パワーをたす事で速度を増加させる事ができ、失速を免れることもできるでしょう。
なので、フレアーの際には操縦桿を両手で持つのではなく、片手で操縦桿を握り、もう片方の手はスロットルにおいておく基本姿勢が大事です。
まとめ
フレアーは着陸の際の難関の一つでしょう。
フレアー操作で着陸姿勢、降下率、速度の調整を行います。
安定してフレアーを行うには、滑走路進入端をいつも同じ角度、高度、姿勢、速度で通過する事です。
ここが安定していれば、いつも同じタイミングで同じように操縦桿を引けば、フレアーも同じようにできるはずです。
滑走路進入端をいつも同じように通過するためには、その前のアプローチが安定している必要があるでしょう。
ハードランディングをするときは、進入角がいつもより大きく、降下率が高いときにより多く発生する傾向があります。
そして、フラップの角度とピッチの関係性には注意が必要です。
いつも使用しているフラップ角より浅いフラップ角を使用して着陸する際には、ピッチがいつもより上がっていることを忘れないようにしましょう。
今回は、飛行機のフレアーについて見てきました。
【参考文献】