前回までキャブレターシステムについて詳しく見てきました。
「キャブレターシステム」よりも新しく、最近の小型機で多く採用されているシステムが今回ご紹介する「燃料噴射システム」です。
両方を比べることでメリットやデメリットを知ることができます。
今回はそんな、燃料噴射システムの構成からどんな強みや弱みがあるのか見ていきましょう。
【燃料噴射システム】キャブレターと比べてどんな利点があるのか?
燃料噴射システムの構成
燃料噴射システムは大きく分けて6つのパーツで構成されています:
- 【エンジン駆動燃料ポンプ( An engine-driven fuel pump) 】
補助燃料ポンプの力を借りて、エンジンスタートをしますが、一度エンジンがかかるとエンジン駆動燃料ポンプで燃料と空気のコントロールユニットへ加圧燃料を送り届けます。
- 【燃料と空気のコントロールユニット( A fuel-air control unit) 】
キャブレターの代替となる発明品。ミクスチャーのセッティングにより燃料混合比を決め、スロットルのセッティングにより流量を決定する燃料噴射システムの心臓的装置。
- 【燃料分配器( A fuel manifold or fuel distributor) 】
燃料と空気のコントロールユニットで調節され送られてきた、燃料と空気を各シリンダーに分配する役目。
- 【噴射ノズル( Discharge nozzles) 】
シリンダーヘッドに位置しており、燃料と空気の混合物を直接シリンダー内に噴射する装置。
- 【補助の燃料ポンプ( An auxiliary fuel pump) 】
緊急事態やエンジンスタート時に、燃料と空気のコントロールユニットへ燃料を加圧して送る役目。
- 【燃料圧/流量計( Fuel pressure/flow indicators) 】
正しい状態にあるか監視するための計器。
吸気口とバックアップシステム
燃料噴射システムはキャブレターシステムと比べて、アイシングは引き起こしにくいです。
キャブレターのように、ベンチュリ効果により負圧にあるエリアができないからです。
しかし、飛行中の着氷などにより吸気口が詰まってしまうことは、両システムとも共通して引き起こります。
吸気構造はキャブレターシステムに似ているところがあり、もしもの時のためにバックアップの吸気口を備えています。
メインの吸気口が着氷などで詰まってしまった時は、バックアップの吸気口に自動的に変更する点も同じです。
燃料噴射システムの強み
燃料噴射システムとキャブレターシステムを比べた時、次のような強みがあります:
- キャブレターアイシングのような、内部のアイシングを減らせる
- 燃料の流れがより良いものとなる
- スロットルのリスポンスが速くなる
- ミクスチャーセッティングがより正確にできる
- 各シリンダーへの燃料分配がより正確になる
- 寒冷時のエンジンスタートがより簡単になる
燃料噴射システムの弱み
燃料噴射システムとキャブレターシステムを比べた時、次のような弱みがあります:
- 暑い時にエンジンがかかりづらい
- 暑い時に地上でベイパーロックになりやすい
- エンジン再スタート時に燃料不足で点火しづらくなる
まとめ
どんなに最新のシステムでも、欠点はあるようですね。
また、キャブレターシステムと同じような構造になっている所もあるようです。
キャブレターシステムをアナログ式だとすると、どちらかというと燃料噴射システムは機械化されたイメージを持ちます。
機械の正確さをうまく利用して、「決められた分」の燃料を「決められた時」にシリンダーに提供することにより、より燃費も向上しました。
今回は、燃料噴射システムについてご紹介しました。
【関連記事】
- 【飛行機のエンジン】キャブレターアイシングの仕組み・影響・起こる環境
- 【キャブレーターシステム】ミクスチャー操作とEGTの関係性とは!?
- 【飛行機のエンジン】キャブレターシステムの分類
- 【飛行機のエンジン】ピストンエンジンの未来はどうなるの?
【参考文献】