ADM:Aeronautical Decision Makingが安全の要だ!
航空機を飛ばす上で、ADM (Aeronautical Decision Making)の知識はなくてはならないものです。
ADMは、与えられたシチュエーションに対して毎回ベストな対応をするには、パイロットがどのように考え、体系的に行動するかということを学ぶ学問です。
言い換えると、人間が与えられた情報に対して、どのように行動する傾向があるのか研究し、人間のエラーを軽減しようとしてくれます。
人間の持っている特性やパーターンが分かり、必要のないリスクを軽減することができます。
今回は、そんなADMの歴史や、最善の判断をするためのステップについて見ていきましょう。
ADMの歴史
ADMスキルを学ぶことの重要性は、いうまでもありません。
どんなに新しい機械やシステムが導入されても、ただ一つ変化に遅れをとっているものがあります。
それは、人間が引き起こすエラーです。
昔から人間はミスを犯す動物だと言われ続けいていますが、いまだにミスを完全に無くすことはできていません。
ある研究によると、航空機事故の主な原因の80%は、 人的要因であるとされています。
人間は、取るリスクが高すぎたり、ストレスがかかりすぎるとエラーを起こしやすいです。
ADMは、「リスク評価」と「ストレスマネジメント」に対して、体系的にせまります。
ADMを理解すれば、人間の態度がどのように意思決定と安全飛行に影響を与えるか知ることができます。
どのような因子が人間の意思決定に影響を与えるのか知ることも大事ですし、ADMは訓練で上達することができます。
今までの約25年間で、ADMが飛行機の安全運航で必要不可欠なものだと認識されて続けています。
また、事故を予防する意味でも大いに役立つ学問です。
多くの航空会社も、人的要因に関する事故を減らそうと努力し、独自のトレーニングプログラムをADMスキルを活用し作り出しています。
それらは、CRM(Crew Resource Management)トレーニングと呼ばれ、「人」「ハードウェア」「ADMを支える情報(意思決定を向上させるもの)」に焦点をあてているプログラムです。
全ての乗員のゴールは、良いADMスキルを習得し、CRMスキルを使うことで最善の決断を下すことです。
1987年代からクルーへのAMD知識の付与に力を入れ始め、ADMトレーニングを受けたクルーは、フライト中に犯す判断エラー数が、ADMトレーニングを受けていない人と比べて、10〜50%も少なくなったそうです。
また、年間400,000時間の運航時間を有する企業では、54%も事故率が低くなったそうです。
今まで言われてきたこととは逆に、良い判断ができるように教育することができます。
今までは、いい判断は自分の経験に基づいて行われ、事故なくフライトを続けることによりさらに磨きがかかると考えられていました。
しかし、ADMを学べば自分で体験していないことでも、リスクやストレスレベルの判断ができ、ヒューマンエラーを防ぐことができます。
よって、より安全な飛行が実現可能になるのです。
いい判断をするステップ
いい判断をするためには、次の6つのステップがあります:
- 安全飛行に対する個人の態度を識別する
- 今までの行動を変えるテクニックを学ぶ
- どのようにストレスを認識して対応力を学ぶ
- リスク評価スキルを発展させる
- 使えるリソースを活用する
- 他の人のADMスキルが有効か評価する
個人の態度を認識して、今まで自分の行動が安全を脅かそうとしていなかったか振り返ります。
そして、フライトにはストレスやリスクがつきものなので、その分析を進め、使える人やもの、知識をフル活用し、他人のケーススタディから、さらに知識を深く掘り下げるといいでしょう
まとめ
気合では安全は守れません。
絶対に失敗しないと心にいくら念じても、人はミスをしてしまいます。
ミスを犯してしまうメカニズムや人間の態度から学ぶことで、より具体的に航空安全のための行動が取れるようになるでしょう。
今後も引き続き、安全運航に関するトピックをあげていければと思います。
【参考文献】
- Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge (PHAK) – CH2
- Advisory Circular (60-22)|Aeronautical Decision Making