【着氷フライト】各フェーズにおける注意点

【着氷フライト】各フェーズにおける注意点

着氷の中のフライトは、とても神経を使うものになります。

事前の準備や知識が事故を防いでくれます。

航空会社では、ウィンターオペレーションなど、寒い時期にだけ行うオペレーション方法などがあり、通常とは違う手順を踏まないといけなかったりします。

少しでも安全に飛行するために、フライトの各フェーズごとの注意点を見ていきましょう。

【プレフライト】

【燃料】

着氷状態が予想されている時は、必要以上に燃料を搭載しましょう。

着氷があると、速度が落ちてきたり、もっとひどくなると硬度が維持できなくなってしまうので、よりパワーを足してあげないといけなくなってしまうからです。

【翼】

翼についた霜、雪、氷などは、出発前に完全に取り除いてあげましょう。

そこを疎かにしてしまうと、自分の命を危険に晒す事になってしまうほど重要な事です。

これくらいならいいやなど、甘い考えは事故の元です。

完全に、翼に氷などがついていないぐらいまで除氷してあげないと安全とは言えません。

【プロペラ】

それは、プロペラにも言える事で、完全に氷などがついていないクリーンな状態で、軽く手で回転させて見て、氷などがひっかがらないか注意してみてあげましょう。

【ランディングギア】

収納式のランディングギアの飛行機を飛ばす時は、収納庫の周りに氷ができていないか確認してあげましょう。

収納庫のドアが凍ってしまっては、上空で着陸装置を収納できないトラブルになりかねませんし、収納しても出す事ができなくなったら、より深刻なトラブルに進展してしまいます。

特に、折り返し便の時などは、着陸の際滑走路の水しぶきなどが飛び散って、機体の下部が凍りついている可能性もあります。

【ピトー管】

なんと言っても、ピトー管の除氷がしっかりとできているか確認しましょう。

速度計が誤作動を起こして、墜落に陥ったケースが過去に何度もあります。

また、ピトー管のカバーを取り忘れている可能性もあるので、特に注意して確認しましょう。

また、Deicing/Anti-icing溶液を散布した場合は、何時何分にスプレーし始めたのか確認し、どのタイプの溶液なら、何時までに離陸開始すれば問題ないのか、時間管理が大切です。

【タキシング】

地面が凍り付いている事も考え、地上走行はゆっくり行いましょう。

飛行機は、スタッドレスタイヤを履いていないので、滑りやすいです。

また、垂直尾翼などが風を受けやすく、「風見効果」で風上側に機首が向いてしまうかもしれません。

滑りやすくなるので、急操作、急ブレーキは避けましょう。

ブレーキがロックされてしまうと、氷の上をカーリングのように滑っていってしまい、コントロールが効かなくなってしまいます。

エンジンのランナップのエリアの地面も確認してあげる必要があります。

凍り付いていたら、エンジンをふかしたときに、ブレーキをかけていても前に滑り出す可能性があるからです。

そんな時は、TaxiwayやRunwayでランナップをできないか検討しましょう。

特に小型機の低翼機では、滑走路横に雪が積まれていたら注意が必要です。

自分の機体の翼が、雪の山にぶつからないように注意が必要です。

【ディパーチャー】

パイロットレポートなどで、離陸直後の「雲底」と「雲頂」の高度を頭に入れておきましょう。

離陸後の間もないときに、着氷が引き起こったらどこに逃げたらいいのかイメージをわかせるためです。

例えば、すぐに離陸した空港に引き返すのか、すぐにレベルオフをしてしばらく低空飛行で雲を避けるのか、それともすぐに雲の上に出てしまえるのか、事前に選択しておくと心の余裕が生まれます。

すぐに引き返す場合は、「出発空港のアプローチサイドの天候はどうなっているのか」「空港が混んでいるなら、待機が必要だが待機場所の気温や雲の状況」などを把握しておきましょう。

着陸装置が収納式の場合は、サイクル(出し入れ)する事で車輪の収納庫で氷ついてしまう事を防止できます。

もし、雲の上に上がろうと考えたのであれば、急激に上昇しすぎないように注意しましょう。

なぜなら、急上昇をすると翼の下側など防除氷装置の手が届かないところが着氷してしまい、防除氷する事ができなくなってしまうからです。

また、翼の下面に着氷してしまうと、ドラッグが大きくなる傾向があります。

エンルート

自分の機体がどのぐらい着氷しているのかわかる目安は、「対気速度」です。

この方法を使うにはまず、通常時のパワーセッティングと、飛行速度を頭に入れておく必要があります。

その通常使用するパワーセッティングで同じように飛行し、速度がいつもより遅くなるのであれば着氷している可能性が高いです。

10kt程度低くなるのであれば、着氷域からの脱出方法をすぐにでも考えるべきです。

20kt減少しているようであれば、とても危険な状況と言えるでしょう。

速度低下が一番アイシングで怖いので、このような場合はまずパワーを足して増速し、失速とのマージンを広げてあげましょう。

それから、必要に応じて防除氷装置を作動させてあげるといいでしょう。

パワーのマージンが少なくなったり、許容範囲を超えているようであれば、すぐさまそのエリアから最短で脱出するようにしなければいけません。

上昇するには雲が高すぎる。降下するには地面や山が近づきすぎるのであれば、180°旋回して来た道を戻るのが賢明です。

今のまま、水平飛行をしていてもどのぐらい先まで雲が続いているのか判断するのは難しいでしょう。

着氷の兆候が出たらまず、どのように回避するのか考え、必要ならばATCに伝えておくと他機との調整を事前にしてくれ、いざ高度やルート変更をしたいときに、スムーズに行くようになるでしょう。

更に、着氷状態の中オートパイロットは使用しないようにしましょう。

ストールを引き起こしたり、操舵面が凍り付いてしまい、操縦ができなくなってしまうかもしれないからです。

過去に、アメリカン・イーグル航空4184便が着氷時オートパイロットを使用しホールディングしていると、機体への着氷が原因で墜落してしまいました。

【アプローチ・ランディング】

「アプローチ」と「ランディング」のフェーズは、着氷による事故が多発しています。

降下中に着氷しそうな雲に入りそうになったら、その雲より高度を高く保つかRequest Headingして避ける事が大切です。

もし、着氷するエリアを飛行するのであれば、フラップはおろしてはいけません。

フラップを下ろすと、気流が変化し尾翼に着氷を引き起こす可能性が出てくるからです。
着氷により、ストール速度は速くなっています。

なので、アプローチやランディングで徐々に速度を落としていく時は、通常時と比べてマージンが小さいので注意が必要です。

通常よりもパワーを多めに入れ、速度を10kt〜20kt程度通常よりも速くアプローチするといいでしょう。

そして、尾翼の失速を防ぐためにも、着陸時はフルフラップを使用しない事です。

着陸へのマニューバリング時、着氷による事故が一番多いので、急旋回はせずに、慎重に旋回をしながら速度変化や失速の兆候に神経を集中させましょう。(旋回すると失速速度がより速くなるため)

アプローチ速度を追加しているので、できるだけ長い滑走路を選ぶといいでしょう。

目的地空港の隣の空港の方が滑走路が長く安全だと判断したら、迷わずそちらの空港に着陸する準備を始めましょう。

事故を起こしてしまうより、安全な空港に着陸し後日飛行機を移動させる方が、よっぽど賢明な判断でしょう。

滑走路の目安は、通常の必要着陸距離の2倍程度見ておきましょう。

ウィンドシールドの防除氷装置がない機体でウィンドシールドに着氷してしまった場合は、デフロスターをマックスで使用する手が奥の手で残っています。

小型機であれば、横の窓を開けて持っているクレジットカードなどで、ウィンドシールドの氷を削り取る方法もあるでしょう。

 

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【参考文献】