- 1 【パイロットと錯覚】|飛行機の安全に及ぼす人間の錯覚14選!
- 1.1 パイロットに影響を及ぼす14種類の錯覚を見ていきましょう!
- 1.1.1 1. 空間識失調 (Spatial Disorientation):
- 1.1.2 2. コリオリ効果による錯覚:
- 1.1.3 3. 死の錐揉み:
- 1.1.4 4. 死の螺旋降下:
- 1.1.5 5. 人体加速度錯覚:
- 1.1.6 6. 転回性錯覚:
- 1.1.7 7. 上下錯覚:
- 1.1.8 8. 擬似水平錯覚:
- 1.1.9 9. 自動運動 (Autokinetic Illusion):
- 1.1.10 10. 滑走路の幅による錯覚:
- 1.1.11 11. 滑走路と地面の勾配による錯覚:
- 1.1.12 12. 無物票による錯覚 (Black Hole Approach):
- 1.1.13 13. 大気現象による錯覚:
- 1.1.14 14. 地上灯火による錯覚:
- 1.2 まとめ:
- 1.1 パイロットに影響を及ぼす14種類の錯覚を見ていきましょう!
【パイロットと錯覚】|飛行機の安全に及ぼす人間の錯覚14選!
人間には錯覚があります。今回は、錯覚が及ぼすパイロットへの影響をご紹介します。
どんな錯覚があるのか知っておくと、いざとう言うときに命拾いするかもしれないので、パイロットなら人間の陥りやすい錯覚を知っておくべきでしょう。
パイロットに影響を及ぼす14種類の錯覚を見ていきましょう!
1. 空間識失調 (Spatial Disorientation):
【現象】飛行機は3次元で複雑な動きをしております。地上物票などが見られない状況で、飛行機の位置と今どこにいるかの体感がずれる現象です。
【予防方法】信頼できる計器を頼りにするか、地面や島など動かないものを視認して、今どこにいるのか把握することです。
2. コリオリ効果による錯覚:
【現象】長い定常旋回をしていると、初めは旋回していると体感できます。長いこと続くとだんだんと体が慣れてきて水平飛行している感覚になります。この際に頭を急に動かすと、三半規管がおかしくなります。
【予防方法】頭を大きく動かさない (旋回中にペンを拾ったりしない)。雲の外なら地上物票を見て、雲の中なら体感に頼らず計器を見て、今の飛行機の姿勢を把握すること。
3. 死の錐揉み:
【現象】一回錐揉み状態に陥りなんとか水平飛行へ回復させた時、体感は逆側に錐揉み状態しているかのように感じる。
【予防方法】大概は雲の中での錐揉み状態の時に起こるので、その時は計器を信用すること。
4. 死の螺旋降下:
【現象】コリオリ効果による錯覚に似ていますが、螺旋効果が続いていると、それが水平飛行であると体感してきます。そんな時に、高度計を見て高度が下がっているのを気がつき、操縦桿を引くと旋回半径がきつくなります。
【予防方法】高度計だけでなく、Attitude Indicatorもしっかりとみること。
5. 人体加速度錯覚:
【現象】スラストを急に出し入れするテイクオフの時など、急加速は機種上げをしている感覚に陥る。急激な減速は逆の効果を生む。
【Pilotの行動】機種上げしていると感じるので、離陸後の低高度にも関わらず操縦桿を前に倒しピッチダウンしてしまう。
6. 転回性錯覚:
【現象】飛行機の姿勢が変化する時に感じる錯覚。上昇姿勢から水平飛行へ移動する際に、パイロットは後ろに倒れているように感じる。
【Pilotの行動】後ろに倒れている感覚なので、操縦桿を前に倒しピッチダウンの姿勢をつくりがち。それにより、錯覚がさらに増したり、高度バーストする可能性がある。
7. 上下錯覚:
【現象】水平飛行中に、突風が吹き飛行機が上に持ち上げられることがある。この時の飛行機の姿勢は水平飛行の姿勢のまま高度が上昇しただけ。しかし、パイロットは高度が上がっているので上昇姿勢であると勘違いしてしまう。その逆もありえる。
【Pilotの行動】上昇姿勢だと思うので、操縦桿を前に倒しピッチダウンしてしまう。
8. 擬似水平錯覚:
【現象】遠くにある滑らかな傾斜の山、なだらかな傾きの雲、夜間の地上の光や雲による星の見え方で、引き起こされる擬似水平線と本当の水平線を間違えてしまう現象。一点だけ傾いているとわかりやすいが、目の前全体が擬似水平線で傾いていると気がつきにくい。特に夜は雲が見えづらいので厄介。
【Pilotの行動】水平線に合わせて飛行機の姿勢を整えようとするので、擬似水平線の角度に合わせてバンクを入れてしまう。
【予防方法】水平線と計器でダブルチェックが有効。
9. 自動運動 (Autokinetic Illusion):
【現象】真っ暗な夜に輝く星1点を見つめていると、その星があたかも動き出したかのように感じる。
【Pilotの行動】星が動くはずがないと思っているので、飛行機がおかしな行動を取り始めたと思い操縦桿に本来必要のないインプットをしてしまう。
10. 滑走路の幅による錯覚:
【現象】自分が慣れている滑走路幅より狭い滑走路の空港にアプローチしていると高いと感じる。通常より幅が広い滑走路だとその逆。
【Pilotの行動】高いと感じるので、低いアプローチになってしまう。
11. 滑走路と地面の勾配による錯覚:
【現象】滑走路に上り勾配があったり、周りの地形が上り勾配だとアプローチ中高いと感じてしまう。下り勾配だとその逆の効果。
【Pilotの行動】高いと感じるので、低いアプローチになってしまう。
12. 無物票による錯覚 (Black Hole Approach):
【現象】地方空港など周りに何もない空港や夜に明かりが一切ない空港にアプローチすると、通常よりも高く感じる。
【Pilotの行動】高いと感じるので、低いアプローチになってしまう。
13. 大気現象による錯覚:
【雨】風防に雨が当たると、実際よりも高いと感じさせる効果がある。
【もや】見えづらい視界の中で見えたものは、距離を長く感じさせる。先行機や滑走路までの距離など。
【霧】霧の中に入ると機首が上がっているように感じる。
14. 地上灯火による錯覚:
【街灯・電車】夜間飛行で着陸する空港の近くを通る道路の街灯が斜めに走っていたり、電車から漏れる光が進入灯や滑走路灯と見間違えてしまう。
【進入灯・滑走路灯】進入灯・滑走路灯ぐらいしか空港の周りに明かりが無く、それらで周りの地形を照らしている時、実際よりも滑走路に近く感じる。
【Pilotの行動】目視進入などしていると、滑走路でない道路や電車にアラインしてしまう可能性がある。アプローチが高くなる。
まとめ:
このように人間の錯覚は飛行機の安全運航に大きな影響を与えます。体感で飛行機を飛ばしていると、体感と実際の飛行機の姿勢がずれていると大きな混乱と事故を招きかねないです。
まずは、どんな錯覚があるのか知って、それを実運航などで活かせるようにイメージトレーニングしておくといいでしょう。
ただ、夜の運航は怖いとか、雨が降ってきて見えづらいと恐れるだけでは神頼みになってしまいます。
パイロットとしてアプローチが高く見えがちだからその点を気をつけていこうとか、実際よりも滑走路が近く見えるので計器の情報と目視に割く時間をバランスよくしようなど備えができてくることでしょう。