概要
- 日付:2016年5月27日
- 航空会社:大韓航空
- 使用機材:B777-300(機番:HL7534)
- 乗員:16名
- 機長:49歳男性(総飛行時間:10,410時間)
- 副操縦士:41歳男性(総飛行時間:5,788時間)
- 乗客:302名
- 犠牲者:0名(軽傷者:40名)
- 出発地:東京国際空港(羽田)
- 目的地:金浦国際空港
大韓航空2708便は、日本時間12時38分ごろ、羽田空港のRWY 34Rから出発しようとしておりました。
しかし、離陸滑走中に第一エンジン(左側)の火災ワーニングがコックピットで鳴り響き、離陸を中止しました。
その後、滑走路上で停止し非常脱出まで行うこととなりました。
非常脱出活動中、乗員乗客318名のうち40名が軽傷を負いましたが、犠牲者は1人も出ずに済みました。
事故原因
事故調査の結果、第一エンジンの第一段高圧タービン・ディスクが破断し、その破片がエンジンケースを貫通しておりました。
その際に、エンジン火災を引き起こしたと推定されています。
ディスクが破断した原因は、エンジン製造時に第一段高圧タービン・ディスクにあるU字型の加工が許容値を超えており、それが原因で低サイクル疲労により亀裂が発生して、さらに破断まで進行したと考えられます。
離陸中止後、第2エンジンを停止させる前に運航乗務員により非常脱出の指示が行われました。
当時の空港の風向風速は、060/20であり、これに加え第二エンジンのブラストの力が加わり、機体右後方では007/37.5ノットの風が生み出されていたと考えられます。
この合成風の影響で、右後方(R5)の非常脱出スライドが機体の下側に潜り込み膨らんだため、脱出に使用することができませんでした。
さらに、機長が非常脱出を決心後、副操縦士にQRH(Quick Reference Handbook)の非常脱出チェックリストの実施を命じましたが、副操縦士はQRHの非常脱出チェックリストを見つけることができませんでした。
仕方なく、タブレットの非常脱出チェックリストを代用しましたが、読み上げるまでに時間を要してしまいました。
まとめ
緊急操作は突然やってきます。
いかに普段から緊急時に備えられているかが、最後の生死を分けることでしょう。
今回のエンジン火災は、小規模で済み奇跡的に犠牲者を出さずに済みました。
もし、キャビンまで燃え広がりすぐにでも非常脱出が必要な状況だったら、R5のスライドは使えなくなってしまいましたし、QRHのチェックリストを探すのに時間がかかり、状況は悪化してしまっていたでしょう。
今回の事故は、あたらためて緊急手順の定期的な見直しの必要性や、通常では引き起こらないヒューマンエラーをいざとうい時に人間は犯してしまうということが分かったのではないでしょうか。
【出典】