飛行機のパイロットの視力はどのぐらい必要?眼鏡はダメ?|航空身体検査

飛行機のパイロットの視力はどのぐらい必要?眼鏡はダメ?|航空身体検査

航空身体検査とは?

こんにちは。パイロットとして空を飛ぶには、パイロット免許(技能証明書)と健康な体が必要です。空を飛ぶのに十分な健康体である事を、航空身体検査で証明できるのです。

航空法でも航空機の運航を行うためには、航空身体検査証明が必要と決められております。

第三十一条国土交通大臣又は指定航空身体検査医(申請により国土交通大臣が指定した国土交通省令で定める要件を備える医師をいう。以下同じ。)は、申請により、技能証明を有する者で航空機に乗り組んでその運航を行なおうとするものについて、航空身体検査証明を行なう。
2 航空身体検査証明は、申請者に航空身体検査証明書を交付することによつて行なう。
3 国土交通大臣又は指定航空身体検査医は、第一項の申請があつた場合において、申請者がその有する技能証明の資格に係る国土交通省令で定める身体検査基準に適合すると認めるときは、航空身体検査証明をしなければならない。

参考:航空法第31条(航空身体検査証明)

航空身体検査はどこの病院でも受けられるわけではなく、指定機関が国によって指定され、そこにいる医者も指定医として指定されています。

航空身体検査は2つの種類があり、第1種と第2種に別れています。

第1種と第2種の違いとは?

1985年から、航空身体検査は現在の2種類に別れています。それ以前は3種類に別れておりましたが、国際民間航空機関(ICAO)のAnnex1という決まり事に日本も合わせることになりました。

どちらの種類を取らなければいけないかは、技能証明書の種類により変わってきます。エアラインパイロットのように大勢の人の命を預かって飛行するのと、自家用操縦士のように趣味で飛行するのとでは、求められる身体の健康レベルが違います。

第1種航空身体検査証明書

第1種航空身体検査証明書を必要とする資格は:

  • 定期運送用操縦士
  • 事業用操縦士
  • 准定期運送用操縦士

第2種よりも厳しい内容となっているのが第1種航空身体検査です。なので、定期運送用操縦士など、エアラインパイロットとして第一線で活躍する人が取得しなければなりません。

第2種航空身体検査証明書

第2種航空身体検査証明書を必要とする資格は:

  • 自家用操縦士
  • 1等航空士
  • 2等航空士
  • 航空機関士
  • 航空通信士

です。

必要な視力

航空身体検査は第1種と第2種で別れているのがわかりましたが、実際にどの程度の視力が必要なのでしょうか?

よくパイロットは目が悪いとなれないと聞きますが、実際にその噂は正しいのでしょうか?

以前にはメガネなどによる視力矯正は認められていなかったので、目が悪い人はパイロットにはなれませんでした。

しかし、2001年10月1日に航空身体検査の基準緩和が行われ、矯正視力も認められるようになったのです。

なので、眼鏡を使用して飛行してもよくなったのです。これによりパイロットの道を、目が悪いという理由で諦めていた人が、大幅に減りました。

第1種航空身体検査基準:

次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。
イ 各眼が裸眼で0.7以上及び両眼で1.0以上の遠見視力を有すること。
ロ 各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上、かつ、両眼で1.0以上に矯正することができること。

中距離視力:裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が80cmの視距離で、近見視力表(30cm視力用)により0.2以上の視標を判読できること。

近見視力:裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が30cmから50cmまでの間の任意の視距離で近見視力表(30cm視力用)の0.5以上の視標を判読できること。

航空身体検査マニュアル

第2種航空身体検査基準:

次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。
イ 各眼が裸眼で0.7以上の遠見視力を有すること。
ロ 各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上に矯正することができること。

近見視力:裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が30cmから50cmまでの間の任意の視距離で近見視力表(30cm視力用)の0.5以上の視標を判読できること。

航空身体検査マニュアル

屈折度が±8ジオプトリーを超えない範囲となっているのが注意点です。医療機関や眼鏡屋さんで簡単に調べることができるので、眼鏡をかけている人は一度調べててみてもいいのではないでしょうか。

有効期限はどのぐらい?

航空身体検査の有効期限は、年齢やどのような資格や区分で飛行するかによって変わります。

航空法施工規則63条の1

表の通り、6ヶ月から1年に一度更新なければならないです。有効期限の45日前から更新できますので、更新日を忘れないことはとても大事です。

航空身体検査はどこで受けられるの?

先ほども触れましたが、航空身体検査はどこでも受けられるものではありません。指定検査機関でしか受けられないです。その一覧が発表されております。それがこちらになります。

指定検査医

2019年2月1日現在で、北海道から沖縄まで約92の航空指定機関があります。(1箇所だけですが、アメリカにもあるようです。)

もし受検をお考えのようでしたら、最寄りの指定検査機関を探してみてはいかがでしょうか。やはり、東京には指定検査機関が多いようですね。

費用はどのぐらい?

航空会社に入れば会社の費用で検査をさせてくれますが、自費で航空身体検査を維持するとなると、半年から1年に1回のペースで更新しなければならないとなると、費用がとても気になるところだと思います。

費用は検査機関によって変わってくるようです。ホームページを持っている病院では、そこで料金を公表している病院もあります。

先ほどの一覧表に電話番号も記載されておりますので、それを使い、ご自身の身近な検査機関の費用を事前に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

大体の相場がわかるように、費用の一例を載せておきます。(2019年4月現在)

赤枝病院(神奈川県横浜市旭区)

  • 第1種航空身体検査:
    • 新規:37,584円
    • 更新:23,220円~24,624円
  • 第2種航空身体検査:
    • 新規:37,584円
    • 更新:23,220円~24,624円

永田町つばさクリニック(東京都千代田区)

  • 練習許可証初回:30,000円
  • 更新:25,000円

吉本医院(東京都北区)

  • 第1種航空身体検査:
    • 初回:37,800円
    • 更新:23,760円
  • 第2種虚空身体検査および操縦練習許可(滑空機を除く):
    • 初回:34,560円
    • 更新:15,120円
  • 操縦練習許可(滑空機):
    • 初回:20,520円
    • 更新:15,120円

目に関する不適合状態

パイロットにとって目はとても重要で、目に感する項目は特に重点的にみられます。不適合状態とはどのような状態なのか一例を挙げておきます。

  • 外眼部及び眼球附属器
    • 航空業務に支障を来すおそれのある眼瞼、結膜、涙器、眼窩及び角膜疾患又は機能不全
    • 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
    • 屈折矯正手術の既往歴のあるもの
    • オルソケラトロジーによる矯正
  • 緑内障
    • 閉塞隅角緑内障
    • 開放隅角緑内障
    • 正常眼圧緑内障
  • 中間透光体、眼底及び視路
    • 水晶体疾患(白内障を含む。)
    • ぶどう膜炎(虹彩炎及び毛様体炎を含む。)
    • 網脈絡膜疾患
    • 糖尿病網膜症
    • 視神経疾患
  • 遠見視力
    • 裸眼視力、矯正視力などの基準を満たさないもの
    • オルソケラトロジーによる矯正
    • 屈折矯正手術の既往歴のあるもの
  • 両眼視機能
    • 斜視
    • 第1種:不同視を呈するもの。輻湊・開散運動に異常が認められるもの。
  • 視野
    • 動的量的視野検査最大イソプタ(V/4)において、正常視野から半径方向に15°以上の狭窄を認めるもの
    • 動的量的視野検査Ⅰ/4において、暗点を示すもの
    • 静的量的視野検査において、感度低下を示すもの
  • 眼球運動
    • 複視
    • 病的眼振
    • その他眼球運動に異常のあるもの。
  • 色覚
    • 石原色覚検査表で正常範囲と認められないもの

まとめ

このように、パイロットは眼鏡をしても飛べるようになりました。また、身体検査は2種類に分かれていることをご紹介しました。

今回は航空身体検査の中でパイロットに必要な視力を取り上げられましたが、他にも聴力や血液検査などの項目もあります。

空を飛ぶことを生業としているパイロットは、年に1〜2回行われる航空身体検査に引っかかってしまうと、空を飛ぶことができなくなってしまいます。

厳しい検査を乗り越えるためにも、普段の行動がとても大切です。若いうちは問題なくても、歳を重ねるうちに健康は努力をしないと手に入れられないものであると実感してくるでしょう。

また、これからパイロットの道を進もうと思う方は、厳しい訓練が待ち受けております。時間的制約を受けた訓練で精神面や体調面を崩してしまっては、空を飛ぶことができなくなってしまいます。

健康が第一であることを心に命じて、徹夜で毎日頑張ることなどせずに済むように、余裕を持った勉強や訓練計画を練ることが大切です。

少しでも目や耳の機能の心配があるのであれば、第1種航空身体検査を訓練開始前までに受けてみて、今の自分は問題ないのか指定医と相談すると、より訓練中に余計な心配が減るのではないでしょうか。