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パイロットと放射線被曝【華やかな世界の裏で、宇宙線やガンとの戦い】

パイロットと放射線被曝【華やかな世界の裏で、宇宙線やガンとの戦い】

テクノロジーの進化により、旅客機はより高い高度を飛行するようになりました。

対流圏を超え成層圏で飛行できるようになり、よりスムーズに素早く移動することができるようになりました。

つい先日引退したコンコルドは、民間旅客機なのにマッハ2.2で飛行していました。

このように生活が便利になった一方、その副作用を忘れてはいけません。

地球には宇宙線が太陽や宇宙空間から降り注いでおり、高高度飛行をするとその影響が出てしまいます。

宇宙線による被曝が発生してしまっているのです。

宇宙線って何?

宇宙線は、大きさは1ミリメートルの1兆分の1という、とてつもなく小さい粒子です。

これが毎日太陽や銀河から地球に届いています。

それぞれ「太陽宇宙線」と「銀河宇宙線」と呼ばれています。

宇宙線は、放射線の一種です。

地上で生活していれば、宇宙線が人間に害を及ぼすことはありません。

地球を覆っている大気が宇宙線を吸収してくれるからです。

宇宙線の影響は空気の濃さに関係し、上空に行けば行くほど空気が薄くなってしまうので、人間に与える宇宙線の影響も強くなってしまうのです。

宇宙線について、漫画で簡単に説明してあるサイトがあったので、リンクをのせておきます。

 

宇宙線ってなんだ!?

 

紫外線も太陽から放たれて、人間の皮膚を黒くするなどの影響があります。

太陽や宇宙空間からやってきて、人間の人体に影響を与えるという意味では同じ分類になるでしょう。

しかし、この二つの大きな違いは、紫外線は金属や日焼け止めで食い止められるのに対して、宇宙線はジェラルミンなどの金属ですら食い止められないので、飛行機のボディを貫通してしまい今のところ防ぎようがありません。

なので、パイロットのみならず乗客や客室乗務員など、全ての機内の人は宇宙線により被曝してしまっているのです。

より高い高度にいることが多い運航乗務員や客室乗務員のトータルの被曝量は、計り知れないものがあります。

パイロットはどのぐらい被曝しているの?

国連化学委員会報告書UNSCEAR 1982 Reportによると、海面高度で生活をした場合、宇宙線の被曝量は年間で約0.3マイクロシーベルトだそうです。

出典:国連化学委員会報告書UNSCEAR 1982 Reort

一方、上空高く上がれば上がるほど被曝量は増えます。

現代の多くの旅客機は、40,000ft前後を飛行しています。

ちなみに、エアバスA320が上がれる高度は、39800ft(約12.1キロメートル)までで、ホンダジェットは43,000ft(13.1キロメートル)です。

なので、上の表の10km(約33,000フィート)と12km(39,000フィート)の被曝量を見ると

  • 33,000ft : 2.88マイクロシーベルト
  • 39:000ft : 4.93マイクロシーベルト

被曝するというデータが出ています。

これにより、いかに高高度で飛行すると、より多く被曝してしまうかわかります。

放射線被曝とガンの発症率

ボーイング747の機長であった、杉江さんは次のように著書に記されています:

国際放射線防護委員会(ICRP)が1990年に出した勧告によれば、年間平均1ミリシーベルトの放射線被曝をした人が一生の間に生じる致命的な癌の発生確率は0.4とされている。

出典:機長の「失敗学」

国立がん研究センターが発表している『最新がん統計』によると、”2017年にがんで死亡された方は、373,334人(男性220,398人、女性152,936人)”だったそうです。

さらに、”ガンで死亡する確率は男性で25%(4人に1人)、女性で15%(7人に1人)”になるようです。

少し前に、乗務員不足によりパイロットの定年が67歳に引き上げられ話題になりました。

多くのパイロットは、20代前半から定年まで約40年間飛行することになるでしょう。

この間にずっと、宇宙線で被曝し続け、発がんしやすくなっていくことでしょう。

まだまだ男性操縦士が多い世界ですので、もしかするとパイロットの「4人に2人」や「4人に3人」がガンで亡くなられているかもしれないですね。

杉江さんは、パイロットが世の中の人口に占める割合が非常に少なかったり、飛行機が高高度飛行をするようになってまだ年月が浅いので、パイロットのガン死亡率の研究が遅れていると指摘しています。

さらに、

ガン死亡率は全産業で働いている労働者の中でトップであることには違いがないだろう。航空機乗務員のガン発生率は、理論的には一般の人や原発職員よりも高いことがわかるが、実際にはガンでどれだけ死亡しているかという統計はない。私の同僚や先輩たちをみると、乗務員は50歳を超えるとガンで亡くなる人が多いように思えるし、現役を引退した後に長生きしている人は案外少ないという話はよく聞く。

出典:機長の「失敗学」

とご自身の著書で語られています。

まとめ

写真:コンコルドのコックピット

一見華やかな職業に見えるパイロットですが、その裏では目に見えない宇宙線との戦いが待っています。

多くのパイロットは、宇宙線を浴びるのはよくないと、ただなんとなく知っているだけでしょう。

なぜなら、自分から積極的に調べたり勉強しないと、特に会社側から宇宙線と被曝とがんの関係性などを知らされるわけではありません。

職業柄同じように被曝をするといえば、原子力発電所の管理をする方や放射線技師などでしょう。

このような仕事上で放射線を扱う人は、年間被曝量が50ミリシーベルトまでと決まっています。

また、ICRPの勧告ではさらに条件が厳しく、年間20ミリシーベルトまでとなっています。

しかし、パイロットの被曝量は、法律に守られていません。

宇宙線による被曝は人工的なものではなく、自然に地球に降り注いでいるものだから、現段階では職業被曝の保護などの規制から外されているそうです。

今後、超音速飛行などでさらに飛行機の巡航高度は高くなり、このままでは被曝量がさらに増えることでしょう。

ちなみに、コンコルドは55,000フィートから60,000フィートを巡航していたそうです。

なので、”コンコルドのパイロットは被爆の理由から、数年コンコルドに乗務したら、普通の旅客機に戻っていく”と、杉江さんは聞いたことがあるようです。

今回は、あまり触れられていないパイロットのネガティブな部分を取り上げてみました。

 

【参考文献】


 

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