離陸滑走中に緊急事態が発生したり、通常とは違う状況になることがあります。
例えば、エンジンの誤作動、加速不良、滑走路侵入、ATCとの食い違いが起きた場合は、離陸を中止することでしょう。
今回は、離陸中止について見ていきたいと思います。
RTOとは?
離陸を中止することを英語で、Rejected Takeoffと読んだり、頭文字をとってRTO(アール・ティー・オー)と呼びます。
エアラインなどで使用されているT類の航空機では、V1スピードに達するまでに上記のトラブルなどが発生した場合、RTOすることとなっております。
V1を過ぎてから原則をすると、滑走路をオーバーランをしてしまう可能性が高くなります。
T類以外の航空機では、V1スピードが設定されていないことが多いです。
なので、滑走路のどこに達するまでにRTOすれば、滑走路内に安全に停止できるのか目安を持っておくことが大事です。
RTOしても滑走路からオーバーランをしてしまうのであれば、一度離陸後に空中でトラブルシューティングをしてから、再度戻ってくる方が安全なこともあります。
特に人間は地面にいる方が安全だと考え、トラブルを抱えたままリフトオフするのに抵抗を感じる生き物です。
その気持ちが原因で、福岡空港でオーバーラン事故もひき起こっています。
しっかりと滑走路上のどこまでにRTOをすれば間に合うかプランニングを持っていると、必要以上に焦ってブレーキを踏み込んでしまいパンクをさせてしまったり、方向維持が悪く滑走路を横からはみ出してしまったりせずに済みます。
よって、乗客が怪我をしたり、機体にダメージを与えずに済むでしょう。
RTOを行う際には、パワーをアイドルにし、最大限のブレーキを使用しつつ、滑走路からはみ出さないように方向維持と残距離管理が求められます。
また、エンジンから出火する場合などは、エンジンシャットダウンする手順も必要になります。
ミクスチャーで燃料供給を止め、何かの拍子にエンジンが再点火してしまわないように、マグニートもオフにするといいでしょう。
RTOを行った際の手順やチェックリストもあるので、それにそって行動をします。
停止後に火災などが発生した場合は、すぐに緊急脱出の手順に移らなければなりません。
詳しい手順は、AFMやPOHの緊急手順のセクションに記載されているので、なかなか緊急事態になることはないかもしれませんが、いつ引き起こってもいいように準備をしておく必要があります。
普段からの準備が、生死を最後に分ける可能性があるのです。
リフトオフ直後のエンジン故障
一番難しいのは、リフトオフ直後にエンジン出力を完全に失うことでしょう。
数秒のうちにベストな方法を選び、行動に移さなければ機体の大破は免れません。
普段から準備をしていないと、どうしようと迷ってしまいったり、何が起こったのかわからない間に、墜落してしまうかもしれません。
初期上昇中にエンジントラブルが発生した場合は、飛行機をコントロールすることが一番大事です。
離陸ピッチを維持したままエンジンパワーが急激になるなると、すぐにストールを引き起こしてしまうかもしれません。
また、単発プロペラ機では右ラダーを踏み込んでいることが多いので、失速と同時にスピンに入ってしまう可能性もあります。
地面が近くて恐怖を感じるかもしれませんが、飛行機をコントロールするためにピッチダウンをして、ストールをしないように維持してあげます。
そして、右ラダーを踏み込み続けるのではなく、コーディネイティッドフライトを心がけましょう。
よくあるミス
初期上昇中に引き起こりやすいミスは、今離陸した滑走路に戻ろうとする行為です。
十分な高度まで上昇したのであれば、今の滑走路に逆向きから進入しても距離が届くこともあるでしょう。
しかし、地面ギリギリのときに滑走路に戻ろうとすると、旋回した分ドラッグが増えたりリフトが減ってしまうので、思っている以上に高度が一気に失われます。
抵抗が増えることにより、速度が低下します。
速度を回復させるために、ピッチダウンを行います。
しかし、地面が近くピッチダウンできない状況なら、ストールするしか無くなってしまうでしょう。
まとめ
離陸中止の判断は一瞬でしなければいけないこともあります。
その判断の結果が、大惨事をもたらすこともあります。
人間はミスを犯しやすい生き物です。
特に準備ができていない状況でとっさの行動を要求されたときに、ミスが起きやすい傾向にあります。
ハドソン川の奇跡で有名になられた、Chesley Sullenbergerさんも普段から両エンジンが停止したらどうするか研究なされていたそうです。
【参考文献】