【飛行機のエンジン】スラストレバーと出力の関係性について
レシプロエンジンのプロペラ機は、「rpm」「マニフォールドプレッシャー」「プロペラの角度」によって、推力が左右されます。
中でも、「マニフォールドプレッシャー」が1番の影響力を持っています。
プロペラ機は、スラストレバーと出力は比例的に動きますが、ジェットエンジンでは、スラストレバーの動きと出力は比例していないことを頭に入れておく必要があります。
ピストンエンジンからジェットエンジンへの移行の際、多くの人が難しく感じる点が2点あります。
- rpmと推力が釣り合っていない
- 加速が遅い(レバー操作に対してピストンエンジンより遅れる)
です。
RPMと推力が釣り合っていない
ジェットエンジンでは、「rpm」と「温度|fuel/air ratio」が出力に大きな影響を与えます。
「rpm」と「温度」の関係は、エンジンコンプレッサーの能力によってばらつきはありますが、ジェットエンジンは「高rpm」の時、最も効率的に出力を発揮します。
関係性は、「rpm」が上がれば、「取り込む空気」の量が増え、「温度」が上昇し、エンジンの「効率」がよくなります。
なので、アイドル付近から1cmスラストレバーを動かした時に得られる推力と、マックス付近からマックスに向け1cmスラストレバーを動かした時に得られる推力の増加は、一緒ではないです。
後者の方が、得られる推力の増加が大きいのです。
ピストンエンジンからジェットエンジンへの移行で、難しいのがこのスラストレバーの動かす範囲の違いです。
ジェットエンジンでは、アプローチ中にスラストアイドル状態でアプローチして来た状態から、Go Aroundなど推力全開にするにはスラストレバーを、ピストンエンジンに比べて大きく前に動かしてあげる必要があります。
例えば、ピストンエンジンでは、アイドル状態から約2cmスラストレバーを動かしてあげると400馬力得られたものが、ジェットエンジンではその半分の200馬力しか得られないなどの事象が発生します。
これは、先ほど触れたように、アイドルに近く「rpm」が低ければ低いほど2つのスラストレバーの動かす範囲の差は生まれます。
逆に、ジェットエンジンでスラストマックスに近いところで使用している際に、2cmスラストレバーを移動させたら、400馬力欲しいところ、800馬力出力が増えてしまうかもしれないです。
rpmが落ちているアプローチ中のジェット機で、風に煽られたりしてパスが低くなった時などは、大きくスラストレバーを動かしてあげないといけないです。
これは、決して乱暴に勢いよくスラストレバーを動かす事を推奨しているわけではありません。
ピストンエンジンでは、使用可能rpmの40〜70%程度でオペレーションされています。
ジェットエンジンでは、85〜100%の間でオペレーションされています。
加速が遅い
コンスタントスピードプロペラでは、プロペラの回転数は「ガバナー」がコントロールし、パワーは「マニフォールドプレッシャー」がコントロールしています。
ピストンエンジンでは、アイドルからフルパワーまで、約3〜4秒かかります。
それに対して、ジェットエンジンはアイドルからフルパワーまで、約8秒かかります。
ジェットエンジンでは、アイドルのセッティングが二つあり、「地上でのアイドル」と、「アプローチアイドル」です。
アプローチアイドルはGo Aroundに備えて、2つあるアイドルの中で、よりrpmが高くなっています。
上図のようにrpmが60%だと、フルパワーまで約8秒かかります。
しかし、rpmを78%に保っておくと、2秒でフルパワーにできることがわかります。
なので、アプローチアイドルからフルパワーまでは約2秒で移行が可能です。
しかし、急激にスラストをマックスにしてしまうと、エンジンへの燃料供給が一瞬過剰供給になってしまい、タービン内の温度が急上昇し、最悪「コンプレッサーストール」や「エンジンフレームアウト」を引き起こしかねないです。
なので、このような急激なスラスト変化に自動的に対応するための機能がジェットエンジンには、取り付けられていることが多いです。
例えば、低rpm時に急激にスラストレバーを操作してもある一定以上のrpmにならないと、これ以上の燃料供給ができないようにリミッター制御しています。
【関連記事】
【参考文献】