【飛行機のエンジン】スラストリバーサー(逆噴射装置)について
ジェット機の着陸は、速度も速いですし、重量も重いので慣性の法則が強く働きます。
また、パワーをアイドルにしても推力を生み出している状態なので、減速がとても難しいです。
なので、ジェット機ではリバーススラスト(逆噴射)と呼ばれる方法で飛行機を減速させます。

逆噴射装置は、上図のようにジェットエンジンの排気を前方に吐き出すようにする装置です。
決してエンジンが逆回転しているわけではありません。
そして、逆噴射と言っても前方に180°排気ガスを向けているわけではなく、約45°の角度でリバースしています。(上図参照)
ジェットエンジンの逆噴射装置は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、先ほどの図の様な「Target or Clamshell Reverser」と分類されるものです。
あさりの殻のようなものが排気ガスを受け取り、前方に流す役目をしています。

2つ目は、上図の「Cascade Reverser」と呼ばるタイプで、先ほどのと比べてより複雑なシステムです。
こちらは、ターボファンエンジンによく使われ、リバーサーにファンによってかき出された空気をメインに使用します。
エンジンカバーの一部が後ろにスライドし、ファンの通り道を塞ぐことにより前方に空気を送るシステムになっています。
「Cascade Reverser」はファンの空気だけをブロックするので、「Target or Clamshell Reverser」と比べて効きが悪いと言われています。
リバーサーの操作は2段階あり、「Idle Reverse」と「Full Reverse」です。
リバーサーの使い方はまず、接地後にスラストリバーサーを持ち上げてあげます。
Idle Reverseはアイドル状態で流れている空気を、前方に流すだけです。
Full Reverseは、スラストレバーを一番後ろに引くとFull Reverseになり、Idle Reverseと比べてエンジンを少しふかした状態にすることで、より多くの気流を前方に流すことができ、より強力に機体を減速させます。

リバーサーを戻すときは、アイドル位置までスラストを戻し、リバーサーレバーを下げてあげると、リバーサーは戻ります。
スラストリバーサーはより高速である方が、効き目が高いです。
なぜなら、高速時の方が、より多くの空気を後ろに掻き出している状態なので、それを前方に流すことによりより高い効果が得られる為です。
よって、タッチダウン後直ぐにリバーサーを使用すると、より高い効果が発揮されます。
タッチダウン後はスポイラーが自動的に立ち上がる旅客機が多いです。
機種によっては、スポイラーの効果により、機首が持ち上げられ、もう一度地面から浮き上がろうとする傾向があるものがあるので注意が必要です。
このような機種を操縦するときは、ノーズギアを接地させてからすぐにリバーサーを使用しましょう。
そのような傾向がない機体では、メインギアが接地したらすぐにリバーサーを使用しても問題はありません。
詳しいリミテーションは、それぞれの機体のマニュアルを参考にすると良いでしょう。
プロペラ機のアイドルリバースは、フルリバースの約60%も出ており、多くの場合はフルリバースをしなくても十分なリバース効果が得られます。
しかし、ジェット機ではアイドルリバースの効果は小さいので、フルリバースを使うことがより多くなるでしょう。
また、フルリバースにすると滑走路のゴミなども巻き上げて、それをエンジンで吸い込んでしまう可能性もあるので、ある一定以下の速度では使えない様に決まっています。
上空でリバーサーを使用すると、大惨事を招きかねないのでいくつかのロック機能でパイロットのミスを防いでくれます。
例えば、メインギアに重さがかかった時にだけ発動する様になっているのです。
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