
霧はMETERで「FG」と発表され、視程1,000m未満という意味です。(ちなみに視程1,000m以上5,000m以下はBR=Mist扱いになります)
FAAでは、Fogは視程以外にも、地上より50ft以内(約15m)に発生に発生したものを指します。
霧が発生してしまうと、視界が奪われてしまうので飛行機の離着陸ができなくなってしまいます。
なので、飛行機は他の空港にダイバートとしたり、あらかじめ上空待機を見込んで燃料を多く積んでおく必要があります。
もし、霧の特徴がある程度わかっていて、どいう時に発生するかわかっていれば、対策がしやすいでしょう。
今回は、霧の種類とそれぞれの特徴を見ていきましょう。
放射霧(Radiation Fog)
雲がなく晴れている夜に風が弱いという条件が整った時に発生する霧です。
日中に蓄えた地面の熱が宇宙に逃げていきます。
これを放射冷却と呼びます。
地面が放射冷却され、その辺りの湿度が高いと凝結して霧が発生する仕組みです。
雲が多いと、地面の熱が逃げにくく発生しずらいです。
また、風が強いと、上空の空気と地面付近の空気が混ざってしまい、霧ができにくくなります(風速0~5kt以下で発生しやすい)。
気温が一番低くなる日の出前までができやすく、日の出後1〜3時間後には解消されることが多いので、9:00~10:00には消えて無くなりますが、早朝便の運航では悩まされることが多い霧です。
比較的大気が安定した、高気圧の晴れた朝方に発生しやすい霧と言えるでしょう。
放射霧は別名「輻射霧」と呼ばれたり、できる場所が内陸だと「内陸霧」、盆地だと「盆地霧」、谷だと「谷霧」など名前が違いますが、どれも発生するメカニズムは放射霧と同じです。
移流霧(Advection Fog)
移流霧は、暖かく湿った空気が冷えたエリアに移動した時に発生します。
暖かく湿った空気は冷えた地面や水面に近い下の方から冷やされ、霧を発生するメカニズムです。
移流霧で有名なのは、初夏の千島列島から南北海道、さらに三陸側に発生しやすいです。
親潮の冷たい海流に、地面で暖められた空気が流入するためです。
海上で発生することが多いので、「海霧」とも呼ばれています。
【関連】
海上に今の所空港はありませんが、このエリアを航行する船舶には大きな影響が出ることでしょう。
強い北西風が吹くと、北海道の南東の沿岸にも霧がかかることがあり、放射霧とは違いすぐには消えてくれません。
なので、この霧の流れ次第で日光がよく当たらず作物がよく育たなくなる影響も与えることがあります。
混合霧
目には見えない空気ですが、空気は塊で動いています。
これを「空気塊」と呼びます。
この空気塊の特性は様々で、湿度が高い低い、気温が高い低いなどの組み合わせで成り立っています。
この空気塊がぶつかるところがあります。
ここで、霧が発生することがあるのです。
空気塊の性質が、湿度が高く、両者の気温の温度差が大きいほど霧が発生しやすいです。
空気塊がぶつかりやすいところとは、「前線」や「気団」のぶつかるところです。
蒸発霧(Steam Fog)
移流霧とは逆で、冷たい空気が暖かい水面の上を通過する時にできます。
冷たい空気は、下から徐々に温められます。暖かい水面から空気中の水蒸気を蓄え、その上空の冷たい空気と混ざり合うことで、飽和状態に達し、霧が発生します。
風呂場にできる湯気が蒸発霧と同じメカニズムなので、イメージしやすいのではないでしょうか。
これが「蒸発霧」は「蒸気霧」とも呼ばれる所以です。
できやすい条件は、冷たい空気が必要なので冬の朝方で、川や湖の上を空気が通過した時です。
また、冬場の中国大陸で冷やされた空気が、日本海を通過する時にも発生します。
滑昇霧(Upslope Fog)
山谷風をご存知でしょうか?日が昇ると、山肌が温められ上昇気流が発生し、空気が山を駆け上ります。
逆に、日没後は空気が冷やされ冷たく重い空気が山を下って谷に風が吹き下します。前者を谷風、後者を山風と呼びます。
谷風が吹くときに、下からの暖かく湿った空気が持ち上げられることにより、山の上の方で飽和し霧が発生する仕組みです。
どちらかというと天気のいい日に発生しやすいです。
谷風から山風に変わる日没後に消滅する傾向があります。
滑昇霧は、別名「山霧」と呼ばれることもあります。
前線霧(Frontal Fog)
前線によってできる霧を総称して、前線霧と分類しています。
前線の近くでは、違う性質の気団がぶつかり合い混合霧が発生することもあれば、冷たい気団が降りてきて「蒸発霧」を発生させることもあります。
さらに、前線通過後に放射霧が発生することもあります。
このように、前線の活動が影響されていればこのカテゴリーに分類されるのです。
まとめ
ここまで霧の種類を6種類見てきて、それぞれの特徴とできるメカニズムがわかったのではないでしょうか。
それらの全てに共通することですが、霧が発生する為に必要な条件は:
- 水蒸気量が十分
- 冷却される
- 凝結核が空気中にある
です。暖かい空気は水蒸気をより多く保つことができ、冷たい空気は少なくなります。
また、川や湖、さらに海から水蒸気を調達することは可能です。
気温の低下は、山を登って気圧が低くなり、気温が低下する方法もありますし、放射冷却や冷たい空気と混じり合うことで、冷却されることもあります。
最後の凝結核は、雪ができるメカニズムと同じで、核の周りに水蒸気がくっつきます。
なので、ある程度凝結核が豊富なところの方が、霧が発生しやすいと言えるでしょう。
しかし、工場の煙で視界が悪いところと、霧はMETARでも区別されています。
今度視界が悪く霧が発生したのであれば、どのようにできたのか分析して、どのカテゴリーに属するか分類してみると今回の知識が活かせるかもしれないですね。
今回は、霧の種類6種類をご紹介しました。
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