Fly By Wireシステムとは?|利点と欠点とその歴史
民間機で初めてデジタルFly By Wire(フライ・バイ・ワイヤ)システムを導入したのが、エアバスのA320です。
現代では当たり前のように使われるようになったシステムですが、当時は画期的な発明でした。
今回は、そんなそんなFly By Wireシステムについて見ていきたいと思います。
Fly By Wire Systemとは?
今までの主流なシステムは操縦桿と操舵面は、ワイヤーのような物でつなげられていました。操縦桿を動かすとワイヤーが引っ張られて、その先についている操舵面が動くというシステムです。
このワイヤーのことをメカニカル・ロッドと言います。
しかし、フライバイワイヤシステムは、メカニカル・ロッドを電線に変えたのです。電線を引っ張るのではなく、パイロットのインプットを一回電気信号に変えます。
その電気信号をケーブルを通して伝達し、操舵面の近くでアクチュエーターまで運びます。
アクチュエーターがアウトプットの力に変換します。なので、パイロットのインプットを機械が読み取り、電気信号に変えてケーブルに流し、それを受け取り油圧に変化し、操舵面を動かしているのです。
歴史
このシステムは、元々は米国の月面着陸のために使用していた装置でした。宇宙ではアナログの操縦では機体が安定しないため、コンピューターで機体が安定するようにしていました。
その技術が航空業界にも波及していき、今の多くの旅客機はFly By Wire Systemを導入しています。
エアバス:
先ほども触れましたが、エアバスではA320(初飛行:1987年)が初めに民間旅客機でFly By Wireシステムを導入しました。それ以降、A330, A340, A350, A380シリーズに採用され続けております。
このシステムのおかげで、サイドスティックでの操縦が実現されました。
マクドネル・ダグラス:
当時ベストセラーであった、MD-11(初飛行:1990年)でFly By wireシステムが採用されました。
ボーイング:
ボーイングでは、B777(初飛行:1994年)が初めて導入しました。 B777でも従来と同じような操縦桿が採用されました。
その他:
飛行機以外にもヘリコプターでもFly By Wireのシステムが波及していきました。ヨーロッパの航空機メーカーであるNHインダストリーズ社が生み出した、NH90というヘリコプターにもこのシステムが導入されました。
メリット
- 従来必要だったケーブルや滑車が省略できるようになり、飛行機が軽量化された。
- 操縦桿はパイロットのインプットを汲み取るだけの、ただのスイッチのようなものになったので、サイドスティックの誕生のように形の設計が自由になった。
- 電気信号に変えるためのコンピューターが仲介するようになり、安全機構が組み込めるようになった。(プロテクションと呼ばれ一定以上バンクが入らないようにすることができる)
- Pitch, Roll, Yawの複雑な関係性がコンピューターで計算されるようになり、パイロットの操縦の手助けをしてくれる。
- 電線だけなのでバックアップが作り出しやすい。(A380では従来のFly By Wireに加え、バックアップとしてPower By Wireというシステムが採用されている。)
デメリット
- パイロットと操舵面の間に機械を挟む事により、操縦系統の仕組みが複雑化しました。
- 従来の飛行機の操縦とは違い、プロテクション機能をパイロットが理解するまで時間がかかった(導入初期はプロテクションが理解されずに最悪のケースで墜落していた)
- アナログからデジタルに変化される事により、システムエラーが事故につながる可能性が高くなった。
- 操縦桿は電気信号に変えるスイッチなので、従来パイロットが感じていた操縦桿の重さなどのフィードバックがなくなり戸惑った。
- より多くの電力を使うようになった。
まとめ
宇宙開発や軍事開発で多くの新しい技術を人間は得てきました。今回の技術もアポロ計画から来たものです。
しかし、物事には必ず表と裏があります。Fly By Wireシステムもその両方を持っています。その悪い面を補っていかないといけません。
人間のミスを補うことが目的で、人間と操舵面の間にコンピューターが入り、プロテクションシステムができました。
このプロテクションシステムの使い方が、エアバスとボーイングでは違います。なのでよくどちらのシステムが優れているか議論されております。
抽象的な例えになってしまいますが、エアバスはヒューマンエラーを引き起こす人間を信用していなく、ボーイングは人間を信用している設計になっていると言われております。
どちらのプロテクションへの考え方も正しいので、難しい問題になってしまいます。今でも二つの会社のプロテクションの組み込み方の方針が違うのはそういうところから来ているのでしょう。
2社の考え方の違いを知っていると、エアバスからボーイングの機体、またはその逆への機種移行がスムーズにいけることでしょう。