グラウンドエフェクト(Ground Effect)という言葉を聞いたことがありますか?
日本語では、地面効果とも呼ばれています。
地面効果|飛行機は着陸の際空気のクッションの影響を受けている!
グラウンドエフェクトの影響は、着陸の時によく取り上げられますが、離陸の時にも影響が出ているのをご存知でしたか?
今回は、グラウンドエフェクトがどのように離陸に影響を与えるのか見ていきましょう。
グラウンドエフェクトとドラッグ
地面の近くを飛行しているときに、グラウンドエフェクトの影響を受けて飛行機のパフォーマンスが上がります。
グラウンドエフェクトの影響が出る範囲は、通常ウィングスパンと同じ長さに相当する高さ以下で飛行しているときです。
グラウンドエフェクトの影響を考慮しなければいけない状況は、低速飛行中に一定の体勢を維持する飛行するときです。
例えば、リフトオフ後の上昇姿勢を作るときや、着陸の際のフレアーのときです。
グラウンドエフェクトの影響があるエリア内にいるときは、ウィングチップボーテックスの影響は弱まります。
よって、機体が受けるインデュースドドラッグが減少し、機体のトータルパフォーマンスが向上します。
ウィングスパンの1/4ほどの高さでは、約25%ものドラッグが減少します。
また、ウィングスパンの1/10の高さでは、ドラッグの影響は約50%も減少します。
こちらでもご紹介しましたが、パラサイトドラッグは高速で増加し、インデュースドドラッグは低速で増加します。
グラウンドエフェクトの影響のエリアを飛行するときは、低速飛行なのでインデュースドドラッグがとても多く、パラサイトドラッグの影響は小さくなっています。
このときに、ウィングチップボーテックスの影響をグラウンドエフェクトで小さくしてあげることができるので、結果インデュースドドラッグの影響が小さくなり、トータルドラッグの値が小さくなります。
この変化をパイロットはコックピットで感じることができます。
この影響が離着陸時に毎回発生するので、その対応が大切です。
離陸では、テイクオフロールから初期上昇まで、グラウンドエフェクトの影響エリア内で行われます。
グラウンドエフェクトの影響は、ドラッグの減少だけでなく、スタティック圧(制圧)を若干ですが高める効果があります。
この影響により、ピトー管とスタティックポートの差で求められる、対気速度の値に影響が出ます。
スタティック圧が高くなり、対気速度は実際よりも若干速く表示されます。
また、高度計は実際よりも若干低く表示し、昇降計(VSI|Vertical Speed Indicator)は降下していると表示します。
グラウンドエフェクトエリアから出るとどうなる?
グラウンドエフェクトのエリアでは、ドラッグの減少やコックピットのいくつかの計器に誤差を生じさせることを見てきました。
では、そのエリアから出るとどうなるのか影響が出て、パイロットはどうしなければいけないのか見ていきましょう。
- 揚力係数を維持するために、AOAを大きくしなければいけない
- インデュースドドラッグが増えるので、その分のスラストが必要
- ピッチアップ傾向になる
- 水平尾翼のダウンウォッシュが増えるので、機首上げのためのエレベーター操作は少なくすむ
- スタティック圧が減少することにより速度計の値が減少するので、対気速度を増加させてあげなければならない
グラウンドエフェクトの利用
グラウンドエフェクトの影響で、飛行機は離陸速度に達しなくともリフトオフすることができます。
しかし、グラウンドエフェクトの影響があるエリアから抜け出てしまうと、ドラッグが増えてしまい、VyやVxスピードを切ってしまうことでしょう。
「気圧高度が高い」「高温多湿」「離陸重量が重い」など悪い離陸条件が重なると、グラウンドエフェクトのエリアから出て上昇することはできません。
そのようなときに、滑走路エンドに高い障害物がある場合は上下方向に避けられなくなってしまいます。
止まることもできないので、超低高度で左右に旋回するしか無くなってしまいます。
IMCの状況などでは、リフトオフ後にすぐに霧や雲に入ってしまい、目の前の障害物を目視して左右に避けることもできなくなってしまうでしょう。
また、テイクオフスピードになる前にリフトオフしてしまうと、ドラッグが増えてしまう影響で、加速するにはよりパワーが必要になります。
通常離陸は最大出力を使用しているので、これ以上パワーを足すことができません。
なので、加速するにはドラッグの影響を小さくすることぐらいしかできないでしょう。
滑走路長が十分で周りに高い障害物がない空港から出発するときは、グラウンドエフェクトを使ってドラッグが減らせるので、初期加速の際のアドバンテージになると言えるでしょう。
舗装されず抵抗が多い滑走路から離陸する際には、テイクオフロール時に機体の重さを翼にかけます。
タイヤにかかる重量を減らすことで、地面との抵抗を減らしてあげることができます。
そして、浮かび上がれる速度まで加速したら、リフトオフしてしまいます。
しかし、まだ上昇はせず地面と水平を保って飛行し、グラウンドエフェクトの影響の中で加速を行います。
十分上昇できる速度まで加速したら、上昇を開始するというテクニックもあります。
まとめ
グラウンドエフェクトの影響で着陸が思うようにいかず、グラウンドエフェクトが嫌いな人が多いのではないでしょうか。
しかし、離陸の際にドラッグを軽減してくれ、加速の手助けをしてくれているのを知ってどう思いましたか?
リフトを生み出すとその副作用で、インデュースドドラッグが発生してしまいます。
その影響をグラウンドエフェクトが和らげてくれます。
このトータルドラッグと、車輪が地面から受ける抵抗を比べたとき、舗装されていない滑走路から出発する場合は、一度浮かび上がってしまった方が抵抗が小さくなるということです。
もし、アスファルトやコンクリートで舗装されている滑走路から出発するときは、タイヤで十分加速してから上昇した方が抵抗が小さくなるでしょう。
また、地面効果は冒頭でも伝えたように、地面からの近さでその影響力が変わります。
なるべく地面ギリギリの方がグラウンドエフェクトの影響は強くなりますが、その高度を維持して加速する操縦技術との相談になりそうですね。
【参考文献】