パイロットが飛行機の離陸前に意識する事【テイクオフ】

離陸前の準備はとても大切です。

では、実際に離陸前にどんな準備をしていますか?

また、離陸前までにどんなことに意識を向けていますか?

今回は、離陸前にどんな注意点があるのかみていきましょう。

パフォーマンスの確認

まずパイロットが行うことは、飛行機のパフォーマンスの確認ではないでしょうか。

飛行機を取り巻く環境や季節が変わったり、離陸する空港の標高や滑走路長もそれぞれ違います。

パイロットは、飛行機のパフォーマンスチャートをAFMやPOHで確認しなければいけません。

デンバー国際空港などのように、高高度に位置する飛行場から離陸する場合、エンジンパワーやプロペラのパフォーマンスが低下してしまいます。

また、テイクオフロールが長くなったり、クライムパフーマンスの低下も引き起こることでしょう。

こんな、離陸には不利の状況が重なっても、安全に離陸できると確認できるまでは、離陸は行えません。

エンジンランナップ

エンジンランナップやビフォアーテイクオフチェックリストを滑走路に入る前までに、必ず終わらせてしまいましょう。

エンジンは、スラストを生み出す唯一のとても大切なものです。

このエンジンが不調になってしまっては、飛行機は滑空するしかすべがなく、地面に吸い寄せられてしまいます。

もし単発エンジンの飛行機が、低高度でエンジンが不調になってしまっては、対処する時間がとても限られてしまいます。

目の前に、不時着する場所があればいいですが、山や木がそびえ立っていたらどうしますか?

もし、地上でエンジン不調の兆候をパイロットがキャッチできていれば、離陸を中止することができれば、最悪の事態を未然にふせぐことは可能です。

世界で初めて無着陸で世界一周飛行を行ったディック・ルータンさんはこのように語っています。

優秀なパイロットとはその優秀な操縦技量を使わなくてすむような、優秀な判断力を持ったパイロットである。

出典:パイロットが空から学んだ一番大切なこと

離陸を中止するということは、立派な判断の一つでしょう。

離陸滑走前

エンジンランナップでエンジンの調子を確認していますが、離陸直前にもう一度確認するといいでしょう。

このチェックが、エンジン不調発見の最後の砦となるかもしれません。

エンジンランナップから離陸滑走までの間にエンジンが暖まり、エンジンランナップの時には表示されなかった不調が出てくることもあり得るでしょう。

全てのエンジン計器を最終確認し、エンジンが正常に動いているかチェックしましょう。

「計器が示す値が正常値なのか」「計器の針の動きは正常なのか」「計器の針はどこかにひっかがってしまっていないか」などをチェックするといいでしょう。

離陸経路の確認

滑走路上に他の機体やものがないか、離陸経路上に他の機体や鳥がいないかもチェックします。

飛行機は一度飛び立ってしまうと、止まることができません。

管制塔がある空港では、滑走路への進入許可を得てからでないと、滑走路に入ることができないだけでなく、離陸の許可を得ているのか確認も行いましょう。

管制官がパイロットと一緒に滑走路の安全を確認してくれているので、お互いに本当に滑走路が安全である事を確認してから滑走路に進入したり、離陸操作を開始しなければなりません。

自分勝手な事をしていては、他の人の安全も脅かされてしまいます。

もし、滑走路への進入許可や離陸許可をもらったかあやふやになってしまった場合は、迷わずATCに確認をしてから次の行動を起こしましょう。

恥ずかしいからといって確認作業を怠っていると、重大な事故を引き起こす可能性が高くなることでしょう。

単なるミスでは済まず、最悪命に関わるところまで発展してしまいます。

CTAF(Common Traffic Advisory Frequency)の使用が決められている空港では、自分が離陸する事をCTAFを通じてアナウンスするといいでしょう。

どうせ誰も聞いていないと面倒くさがらず、毎回行う事を心がけましょう。

そのアナウンスを聞いた他の機体が、道を譲ったり他の機体の注意を自分に集められたりし、お互いにアナウンスすることにより、相手の意図を汲み取ることができるようになり、より危険因子を排除することができるでしょう。

次に滑走路に進入してアラインしたら、目の前の滑走路中心線の先にある地上物表に目星をつけるといいです。

テイクオフロール中は、滑走路中心線が目に入りますが、リフトオフすると真っ直ぐに進むための目標がなくなってしまうためです。

なので、あらかじめ滑走路の延長線上にある山や特徴的な建物を頭に入れておけば、それらがある方向に進むだけで滑走路の延長線上をキープするのが容易になります。

離陸滑走

大型機の直後に離陸する際には、ウェイクタービュランスの影響が大きくなるので注意が必要です。

大型機が離陸した後、一定の時間を開けてウェイクタービュランスの影響が弱まるのを待つのも一つの手ですし、並行滑走路がある場合は他の滑走路から離陸するのも1つの手段です。

滑走路が1本しかなく、すぐに出発しなければいけない状況のときは、大型機の離陸地点よりも手前で地面を離れ、離陸直後に飛行ルートを変更し、大型機のウェイクタービュランスの影響が及ばないルートを選択するのも有効な手段でと言えるでしょう。

まとめ

全てのフライトは、飛行機に向かう前から始まっています。

いかに用意周到に準備できたかによって、その後の実際のフライトがうまくいくかどうか左右するでしょう。

技術的には着陸の方が難しいかもしれまえんが、離陸するかやめるかの判断は一瞬で、ちょっとした判断ミスが大惨事に繋がります。

今回から何回かに分けて、飛行機の離陸シリーズについてみていきたいと思います。

 

【出典】