ELT : Emergency Locator Transmitterについて
ELTは英語で「Emergency Locator Transmitter」と呼ばれ、日本語では、「非常用位置指示無線標識装置」と呼ばれます。
墜落などした時に人々の命を守るのにとても役に立ち、自動的に墜落現場を無線や衛星を使って、レスキューに知らせてくれます。
飛行機が墜落するのは、陸の上だけではありません。
水上に不時着水したら、いずれか飛行機は沈んで行ってしまいます。
普段は航空機に取り付けられているELTですが、非常時には取り外して一緒に持ち歩くこともできます。
会社の規定にもよりますが不時着水の後は、客室乗務員の1人がELTを取り外し、ラフティング(避難用の大きなイカダ)に取り付けることで、飛行機が海底に沈んで行った後も遭難信号を生存者の近くで発信し続けることができるので、より確実に救難活動を行うことができます。
また、ELTにはバッテリーが備え付けられているので、飛行機から取り外しても遭難信号を発信し続けることができます。
どうしても密林の中などの遭難生活で火が必要ならば、ELTを分解して中からバッテリーを取り出し、ワイヤーなどでショートをさせて火花を作り出すこともできるかもしれないですね。
コックピットのスイッチ
A320のコックピットのオーバーヘッドパネルには、ELTを操作するスイッチがついています。
スイッチは、全部で3ポジションあり:「ON」「ARMED」「TEST/RESET」です。
それぞれの意味は:
- On:Emergency Signalを送信する
- ARMED:インパクトが与えられたとき発信する(on 121.5, 243 and 406MHz)
- TEST/RESET : ELTのAutotestが発信される
通常は、スイッチをARMEDの位置にしておきます。
これで、墜落の衝撃を受けたら自動的に救難信号を発信してくれるので、パイロットがダメージを受けたり、火災や煙でごった返している機内で、ELTのスイッチをONにする事を忘れずにすみます。
自動発信機能がついていないELTを使っていた頃、パイロットがELTのスイッチをONにするのを忘れ、捜索救難活動に遅れを生じさせたと米国のNTSBが報告を上げています。
逆に、自動発信機能で発生したネガティブな事は、ハードランディングをした機体から捜索救難信号が発信されてしまう事が過去にありました。
このようになってしまった時は、ELTのスイッチをTEST/RESETモードに切り替えます。
着陸の衝撃が強すぎた為、ELTが墜落したと感じ勝手に信号を送ってしまったのです。
遭難信号の確認方法
コックピットで、捜索救難信号が発信されているか確認するにはどうしたらいいのでしょうか?
確認は「目」と「耳」で行う事ができます。
【耳で確認する方法】
旅客機では、無線機を2〜3つ搭載しています。
そして、周波数を2つモニターしている事が多いです。
メインの無線機で、ATCとの交信に使い、サブの無線機では「121.5MHz」をモニターしています。(プッシュバック〜ゲートインまで)
ELTが発動したら、「121.5MHz」でELTの音が聞こえてきます。
【目で確認する方法】
コックピットでは、オーバーヘッドパネルの左上(20VU)に、ELTの操作スイッチが配置されています。
スイッチの横に、ライトが点灯する仕組みで、ELTのEmergency Signalが発信されている時は、アンバー色(Amber)のライトが点灯します。
これは、テスト発信でも同じです。
ELTの発信テストはいつでも行なっていいの?
みんながみんな好きな時にELTのテストを行なっていては、どれがテストのELTの音で、どれが本当に救助を必要としているELTの音なのかわからなくなってしまいます。
なので、いつでもELTテストを行なっていいわけではありません。
ELTのテストを行なってもいい時間は、毎時00分から05分までの間と決まっているのです。
無線機を持っていれば、121.5MHzに周波数を合わせておけば聞く事ができます。
多くの事業所では、ELTの発信テストは他の機体の邪魔にならないように、早朝など運航が少ない時間帯などに行う事が多いかもしれないです。
ELTは何台必要?
区分 | ELTの装備数 | |
航空運送事業用
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客席数20以上のもの | 2式(うち1式は自動ELT) |
客席数19以下のもの |
自動ELT1式
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上記以外 |
【参考文献】