【航空機事故】全日空391便函館空港着陸失敗事故について

ANA A321 出典:Masahiro TAKAGI

【航空機事故】全日空391便函館空港着陸失敗事故について

概要

  • 日付:2002年1月21日
  • 航空会社:全日本空輸(ANA:All Nippon Airways)
  • 使用機材:A321-100(機番:JA104A)
  • 乗員:6名
    • 機長:37歳男性(総飛行時間:7,195時間)
    • 副操縦士:38歳男性(総飛行時間:4,403時間)
  • 乗客:87名
  • 犠牲者:0名
  • 出発地:名古屋空港(小牧)
  • 目的地:函館空港

ANA391便は、現地時刻11:45分に名古屋空港を移動開始予定で、函館空港に1:01分で乗客87名を運ぶ予定でした。

事前のブリーフィングでは、函館空港の状況は、ILS RWY12アプローチを行っており、地上視程は5〜10kmで、風速は強いが着陸に支障がないと判断し11:53分に離陸しました。

上昇、クルーズともに異常なく飛行し、函館ターミナル管制所にレーダーベクターをもらいながら、ILS RWY12アプローチを行いました。

PMはキャプテンが行い、副操縦士が右席でPF業務を担当しておりました。

出発前に懸念されていた強風は、Wind 130/28ktで、RWY12に対してやや右から吹いていました。

進入パスも正常にアプローチをしていましたが、接地間際の約53ft(滑走路端手前140m|13:03分ごろ)でウィンドシアー警報が作動しました。

PFは回復操作を行なったが、胴体後部の下面を滑走路に接触させ、機体が中破しました。

破損状況:外板4.6mx最大幅80cmに擦過痕。擦過痕があったエリアにある10本のフレームのうち、7本に亀裂があり、フレームに交差するストリーんが4本にも亀裂があった。圧力障壁:下部2箇所に亀裂。床の梁:一部に亀裂。

胴体下部を接触後も、回復操作を継続し、PF業務を交代し体制を整えると再びILS RWY12アプローチを行い、18分後の13:21分ごろに無事に函館空港に着陸しました。

その後、地上で機体の損傷が確認されました。

また、機内では客室乗務員4名のうち3名が腰部捻挫等の軽傷を負いました。

機長への聞き込み

函館へ向けた降下は雲中飛行で、風向は「上層風」「下層風」「タワー通報の風」どれも大きく変わらず、気象レーダーにも雨域を示すエコーのみで、赤いエコー(避けるべき)は表示されていなかったそうです。

2,000ftまで降下してきたところで、雲から出ることができ滑走路を視認できました。

PFは、1,000ftでAuto ThrustをOffにして、500ftでAuto PilotをOffにしました。

その時、対気速度の目安に対して5kt下回ったので、「Airspeed」とキャプテンがコールアウトしました。

適切な修正操作を行っており、パスから大きくずれることもなかったので、副操縦士がPF業務を継続させてもらえていました。

100ft付近で、急激に目標速度より10kt下回り、「Airspeed x 2」とコールし、PFはパワーを増加させました。

その後、パワーを戻し始めた時にウィンドシアー警報がなり、最大出力でGo Around操作を行いましたが、高度が足りず接地してしまいました。

その時は、ハードランディングだなと思っただけで、尾部を滑走路に接触した感覚はなかったそうです。

副操縦士への聞き込み

パワーセッティングは、予定アプローチ速度を切る方向に行かないように、いつもより多めにセット(N1は約52〜53%程度)させていたそうです。

それでも2度大きく速度を切ることになってしまいました。

2回目のパワーを足した後、Vls+20ktになったので、目安のパワーに合わせるためにスラストレバーを引き始めました。

その時に、「Windshear, Whindshear, Whidshear」と警報音が鳴り、Vls-5ktまで低下したので、スラストをTO/GAにいれ、地面が近づいてきていたのでピッチを引きました。

しかし、機体に衝撃を感じ、副操縦士もハードランディング気味の着陸であったと認識していたそうです。

事故原因

事故調査委員会は、再現試験を行いました。

事故機は、「Auto Thrust」と「Auto Pilot」をオフにして、Selected Speedモードでアプローチしていました。

「Selected Speedモード」「Auto Pilot Off」「Auto Thrust Off」(事故時と同じ状況)

この状況では、事故時とほぼ同じ滑走路の末端付近に胴体後部下面が接触してしまいました。

「Selected Speedモード」「Auto Pilot On」「Auto Thrust On」

スピードモードは同じで、Auto PilotとAuto ThrustをOnにして、回復操作を行うと、地面に接触することなくGo Aroundすることができました。

ちなみに、「Managed Speed」モードで行っていた場合は、強風下でも安定したアプローチが行え、ウィンドシアーからの回復は可能でした。

また、エアバスA321にはテイクオーバー・プッシュボタンがついています。

操縦桿の優先順位を決めるボタンです。

地面がギリギリで時間的余裕がなかったので、機長はテイクオーバーボタンを押さずに操縦桿を引きました。

その時、PFであった副操縦士も操縦桿を引いていました。

テイクオーバー・プッシュボタンを押さずに、両方が操縦桿を引く操作を行うと、二つのインプットの合計をアウトプットしてしまいます。

これにより、ピッチが15.5°になってしまいました。

A321のテイルヒットのピッチ角度は:

  • 通常時:11.2°
  • ハードランディング時:9.7°

なので、テイルヒットしてしまう角度までピッチが上げられてしまう形になりました。

まとめ

飛行機についているどのモードを選択するかが、とても大切であるということがわかりました。

無意識に、いつも通りの選択をしていませんか?

どうして、今そのモードで飛んでいるのか理由をしっかりと持って行動したいものですね。

【参考文献】

 

旅客機事故大全 (調査報告書は語る)