パイロット訓練生の一日|エアラインパイロットまでの道のり

パイロット訓練生の一日|エアラインパイロットまでの道のり

エアラインパイロットの訓練生は、一体どんな生活をしているのでしょうか?

パイロットと航空法:

第六十八条(乗務割の基準) 航空運送事業を経営する者は、国土交通省令で定める基準に従つて作成する乗務割によるのでなければ、航空従事者をその使用する航空機に乗り組ませて航空業務に従事させてはならない。

航空法

第百五十七条の三 法第六十八条の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 航空機乗組員の乗務時間(航空機に乗り組んでその運航に従事する時間をいう。以下同じ。)が、次の事項を考慮して、少なくとも二十四時間、一暦月、三暦月及び一暦年ごとに制限されていること。
イ 当該航空機の型式
ロ 操縦者については、同時に運航に従事する他の操縦者の数及び操縦者以外の航空機乗組員の有無
ハ 当該航空機が就航する路線の状況及び当該路線の使用空港等相互間の距離
ニ 飛行の方法
ホ 当該航空機に適切な仮眠設備が設けられているかどうかの別
二 航空機乗組員の疲労により当該航空機の航行の安全を害さないように乗務時間及び乗務時間以外の労働時間が配分されていること。

航空法施行規則

上記が航空法と施行規則の抜粋です。パイロットが乗務できる時間は、24時間、1ヶ月、3ヶ月、1年ごとに決めなければならないとなっています。

航空会社ごとに決まっているので、実際にはどのように決まっているのか見てみましょう。

某航空会社の例:

こちらがとある航空会社で決まっている乗務時間の上限です。

  • 24時間:8時間
  • 1ヶ月:100時間
  • 3ヶ月:270時間
  • 1年:1,000時間

航空法と施工規則の通り、乗務時間が規定されております。この他にも国内線と国際線で24時間の勤務時間が変わったり、65歳以上の乗務時間は短く設定していたり特記事項があります。

今はパイロット不足の影響で、多くの操縦士のフライト時間は上限ギリギリの会社があります。1ヶ月の上限が100時間なので、100時間ギリギリまで乗務させてしまうと、3ヶ月目に時間調整をしなければいけなくなってしまいます。

2ヶ月で200時間飛んでしまったのであれば、3ヶ月目は70時間しか飛べなくなってしまうのです。1ヶ月100時間弱乗務するというと、かなりと負担になるでしょう。

ただでさえパイロット不足なのに加えて、インフルエンザのシーズンなどでは欠勤者が続出してしまい、代わりに乗務できる人を探すのがとても大変なようです。

あらかじめ欠勤者が出た際の補充要員として、スタンバイという日が設定されております。スタンバイの日には会社に出勤して地上待機させる航空会社もありますが、自宅待機や1時間以内にショーアップできればどこにいてもいいなど、会社によって決まりが違います。

訓練生は訓練カリキュラムが決まっており、それ以上に訓練をすることができません。あまり短期間で詰め込みすぎても、消化不良で訓練が停止してしまったりするので、他の現役の副操縦士と比べてある程度余裕を持ってスケジュールが組まれています。

訓練生の1日の流れは?

それでは実際の1日の流れをご紹介していきます。パイロットのスケジュールはアルバイトのようにシフト制です。訓練生も変わりありません。訓練飛行や担当教官があらかじめシフト表でわかります。

訓練生は行き先がわかった時点でその準備や空港研究を開始します。実際にどのようなルートを通って、どのようなアプローチをするのかや、空港特有の注意点などを洗い出します。

初めは何もわからないので、休みの日に出勤して先輩パイロットに質問をしたり、同期同士で勉強会をしている人が多いです。

同期のリソースはとても大事で、自分にとって初めての空港でも、同期が体験している場合もあるので、情報共有などで助け合いが生まれます。

1日の流れも、2レグ、3レグ、4レグによって変わります。3レグの時は、A-B-C-A空港と三角飛行のパターンか、A-B-A-C空港のようにステイパターンになります。

特に多いのが2レグか4レグのパターンです。

2レグのパターン:成田 – 福岡 往復(Show Up7:40の時)

  • 起床・身支度:5:00~
  • 空港へ移動:6:00~
  • 資料の準備:6:30~
  • ショーアップ〜教官とブリーフィング:7:40〜8:10
  • ディスパッチャー・メンテナンスとのブリーフィング:8:10〜8:15
  • 機体に移動:8:15~8:35
  • 出発前の準備:8:35~
  • プッシュバック:9:10~
  • 離陸、水平飛行、降下、ランディング
  • 次のレグの準備:便間35分〜50分(スケジュールによって違う)
  • 2レグ目も行き同様の準備をする。
  • 教官とオフィスで反省会(デブリーフィング):~14:00
  • 自分での反省まとめ、同期と情報共有
  • (4レグの時は使用する飛行機を変えない限り機体に留まり、同じように出発前の準備を繰り返します。)

2レグだととても余裕があるシフトだと感じます。7:40分ショーアップの14:00には解放されるので楽かと感じるかもしれませんが、事前に準備をしたり情報共有、次の準備などやることは山ほどあり時間がいくらあっても足りなく感じることでしょう。

初めの頃は慣れないので、Show Upの1時間40分前には準備を開始していましたが、慣れて来るとどんどん準備時間を短くしていけるでしょう。

電車やバス通勤の人は、車内で天気やフライトプランをスマホやタブレットなどでチェックし、移動時間も有効に活用しています。

出勤時間は、特に訓練生は早朝のフライトが多いように感じます。朝が早い便は3時頃に起床したり、オフィスに一番乗りで真っ暗なことが多いです。

まとめ:

シフト制なので、土日休みはありませんし、朝早い便だと夜中に家を出ないといけないことがあります。

乗務時間や安全の確保などストレスがかかることも多い職業ですが、乗客の方の笑顔やお礼などを聞くと、やり甲斐がある仕事だと感じるのではないでしょうか。