レシプロエンジンと、それぞれのタービンエンジン(ターボプロップ、ターボファン、ターボジェット)のエンジンパーフォマンスは、どのように違うのでしょうか?
そして、よく訓練で使われるセスナ172モデルなど小型機は、レシプロエンジンが採用されるのでしょうか?
今回は、それぞれのエンジンのポテンシャルを見比べてみたいと思います。
比べる前の下準備|馬力の話
レシプロエンジンの出力は通常「BHP:Brake Horsepower」が使われます。
しかし、より厳密にレシプロエンジンとタービンエンジンをを比べる為に、レシプロエンジンは「THP:Thrust Horsepower」を使用して、タービンエンジンは「Net Thrust:正味推力」を使用することが大切です。
それぞれの意味:
- Brake Horsepower(BHP):実際に使用可能な馬力。いろいろなパワーロスを考慮して、最終的にシャフトに伝達された力。
- Net Thrust(正味推力):ターボジェットやターボファンエンジンで使われ、エンジンの燃焼推力から空気抵抗などを差し引いたもの。
- Thrust Horsepower(THP):プロペラ機に使われ、エンジンが生み出した馬力から、伝達の際やプロペラのロスを差し引いたもの。ターボジェット・ターボファンエンジンが生み出す馬力と同等と考えられる。
- Equivalent Shaft Horsepower(ESHP):ターボプロップエンジンで使われ、プロペラに伝わるSHPと排気により生み出されるTHPの合計。
エンジン性能の見比べ
上図は縦軸に「Net Thrust」、横軸に「対気速度」が示されています。
それぞれの線はNet Thrustと対気速度だけを比べており、空気の抵抗などは考慮されていません。
飛行機にかかる抵抗は、赤色の線で別にあわらされています。
線の意味:
- 黄色:レシプロエンジン
- オレンジ色:ターボプロップエンジン
- 緑色:ターボファンエンジン
- 紫色:ターボジェットエンジン
- 赤色:飛行機がうける抵抗
【この図から読み取れること】
- A点より遅い速度で飛行するなら、レシプロエンジン(黄色)が一番パフォーマンスが高い。
- A点からC点の手前までは、ターボプロップの性能がより優れている。
- C点からF点の手前までは、ターボファンの性能がより優れている。
- F点(若干左側)より遅ければ、ターボファン、速ければターボジェットエンジンの方が優勢。
グラフにはA〜Fの点にアルファベットがふられています。
- A:「レシプロ」と「ターボプロップ」の優劣が変わる速度
- B:「レシプロ」と「ターボファン」の優劣が変わる速度
- C:「ターボプロップ」と「ターボファン」の優劣が変わる速度
- D:「レシプロ」と「ターボジェット」の優劣が変わる速度
- E:「ターボプロップ」と「ターボジェット」の優劣が変わる速度
- F:「抵抗」と「ターボファン」の線が重なるところ
それぞれのエンジンの線と、赤色の抵抗の線と交わる点は、そのエンジンが出せる最高速度です。
なので、その速度以上に加速することはできません。
これらから、飛行速度を「超低速域」「低速域」「中速域」「高速域」と分けて、どのエンジンがより優れているのか比べてみると:
- 超低速域:レシプロエンジン
- 低速域:ターボプロップエンジン
- 中速域:ターボファンエンジン
- 高速域:ターボジェットエンジ
という順番になります。
この速度の順番を、飛行機別にみていくと:
「セスナ172」→「DHC8-Q400」→「A380」→「F22」となります。
遊覧飛行やパイロットの初期訓練で使用されるセスナ172は、速度がそれほど必要ないのでレシプロエンジンが搭載されています。
訓練初期段階の何もわかっていない状態で、時速900km以上でる機体で練習しても、危ないですよね。
また、一刻も早くスクランブルをかけたい戦闘機は、ジェットエンジン が搭載されており、とても理にかなっている事でしょう。
まとめ
全部で4つのエンジンタイプの性能を見比べてきました。
それぞれに得意な、飛行速度域があることがわかりました。
「ターボファンエンジン」と「ターボジェットエンジン」の速度の差があまりないのは、驚だったのではないでしょうか。
【参考文献】
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