【飛行機のエンジンが止まる原因】上空で止まったら一大事!

【飛行機のエンジンが止まる原因】上空で止まったら一大事!

どんなタービンエンジンでもコンプレッサーストールは引き起こる可能性があります。
対応に躊躇していると、あっという間にエンジンが使い物にならなくなってしまいます。
また、エンジンが上空で消火したらどうしますか?
今回は、エンジンが止まる原因を見ていきましょう。

コンプレッサーストール

エンジンの内部にはコンプレッサーの板が何枚も入っています。
この板は1枚1枚が、翼のような断面になっています。
なので、コンプレッサーの板にもAOAが存在しており、クリティカルAOAを超過すると主翼のようにストールしてしまいます。
吸気された空気の速度とコンプレッサーの回転速度によって、どの角度でコンプレッサーの板が空気を後ろにかくか決まってきます。
このバランスが崩れたときに、コンプレッサーストールが引き起こされ、エンジンにスムーズに入ってきた空気が乱れ、空気をうまく圧縮することができなくなってしまうのです。
エンジン内の乱気流のせいで、吸気される空気の速度が遅くなったり、逆流して出てきてしまうこともあります。
コンプレッサーストールが引き起こってしまうと、すぐに元に戻る時もあれば長時間連続してしまうこともあります。
また、軽い影響から重たい症状まで幅があります。
 
コンプレッサーストールが発生したらどうなるの?
コンプレッサーストールが発生したら、機内で強い衝撃を感じたりエンジンの後ろから出るバックファイアーが発生します。一過性だとすぐに元に戻りますが、連続的に続く場合だと振動や轟音が徐々に大きくなります。
コックピットの計器には反映されるの?
一過性や軽めのコンプレッサーストールは、コックピットの計器では表示されません。ある程度大きくならないと計器には反映されないのです。
 
コックピットのどの計器に反映されるの?
N1N2などのrpm表示している計器とEGTに反映されます。
 
多くの一過性のコンプレッサーストールでは、エンジンにとってそれほど有害なものではなく、1つや2つの波動で自動的に回復ことが多いです。
しかし、連続的に続く振動はエンジンにとってとても危険で、直ぐにエンジンを破壊してしまいます。
 
リカバリーはどうするの?
まずエンジンの出力をすぐに絞ることです。
もたもたしていると、一瞬でエンジンが振動で破壊されて使えなくなってしまいます。
そして、機種を下げてAOAの角度を小さくしてあげて、対気速度を増やしてあげます。
ATCに指示された高度を逸脱する場合は、下方に他の機体や山岳がないことを確認したり、余裕があればATCに一報を入れるとより良いでしょう。
 
最新のエンジンでは、コンプレッサーストールを防止するシステムが備わっているものがあります。
そのシステムの1例だと、VIGV(Variable Inlet Guide Vane)と呼ばれるシステムがあります。
このシステムでは、エンジン内の羽根の角度を調整することができます。
吸気された空気の速度とコンプレッサーの回転速度に合わせて、ベストな羽根の角度を調整することにより、コンプレッサーストールを防止することができる仕組みです。
もし実際にコンプレッサーストールが引き起こったら、AFMやPOHに記載されているのでそちらを参照にしましょう。

エンジンフレームアウト

フレームアウトとは、通常タービンエンジン内では燃料が連続的に燃焼しているはずなのに、何らかの原因で火が消えてしまうことを指します。
フレームアウトが引き起こる原因として、空気と燃料の混合比がリッチ側(燃料供給過多側)の限界を超えてしまうことです。
これが原因で引き起こるフレームアウトを「リッチフレームアウト」とも呼びます。
リッチフレームアウトが引き起こりやすい状況として、急激にスロットルを足した時です。
急激なスロットル操作で燃料供給量が一気に増えて、燃焼室内の温度が下がってしまいます。
燃焼室内の温度が燃焼温度以下まで下がってしまうと、燃料を燃やすことができなくなってしまい、結果火が消えてしまいます。
 
別のケースでは、燃料の圧力とエンジン回転数の両方が低いときに起こりやすいです。。
高高度飛行やそれに伴う降下の時に、この状況になりやすいです。
先ほどのとは逆に、リーン側に空気の混合比が傾き引き起こされるフレームアウトです。
エンジンに入ってくる空気が通常通りでも、ミクスチャーのコントロールが悪いものだとフレームアウトは引き起こってしまいます。
また、「機体の異常姿勢」「タービュランス」「アイシング」「燃料切れ」が原因になることもあります。
燃料流量が少ないので、少しでも燃料供給が途切れてしまうとフレームアウトしてしまいます。
エンジンのコンディションを整えてあげると、上空でも再点火することが可能です。
この手順はAFMやPOHなどのマニュアルの”緊急手順”の中に記載されています。
その中には、「どの高度」を「どの速度」で飛行している時に、再点火しやすいか書かれています。

まとめ

上空でエンジンが止まってしまったり、バックファイアーを目撃したらきっと驚くことでしょう。
また、異常な振動や轟音が機内に鳴り響けば墜落の不安がよぎることでしょう。
どんな時にでも冷静を保ち、再点火する望みもありますしグライドして最寄り空港まで飛び続けることも可能かもしれません。
最後の最後まで諦めずに、その時のベストな行動を冷静に取れるように、日常から心と技術を鍛えていきたいものですね。

【参考文献】

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航空工学講座第7巻 タービン・エンジン