【飛行機】パイロットの免許には、どんな種類があるの?

【飛行機】パイロットの免許には、どんな種類があるの?

飛行機を操縦するのに必要な免許のことを、技能証明と言います。

技能証明を取得するには、学科試験と実技試験の両方をパスしなければいけません。

両方とも国家試験で、学科試験をパスしてからでなければ、実地試験の受験資格がありません。

両方とも合格して、初めて技能証明が交付される仕組みになっています。

多くのエアラインパイロットを目指す人が取得する技能証明は、「自家用操縦士」「事業用操縦士」「定期運送用操縦士」の3つで、この順番に取得していくことでしょう。

それでは、それぞれについてみていきましょう。

自家用操縦士

自家用操縦士技能証明でできること

自家用操縦士免許の業務範囲は、次のようになっています。

  • (イ)航空機に乗り組んで、報酬を受けないで、無償の運行を行う航空機の操縦を行うこと。

よって、自分で楽しむ為に飛行機を操縦したり、お金や金品を受け取らなければ、友達を他の空港へエアタクシーしてあげることもできるでしょう。

自家用操縦士になってしまえば、地方の美味しい店に自分で操縦して駆けつけることも夢ではありません。

初めて自分の操縦で大空を飛び回ったときの爽快感は、一生忘れられないものとなる事でしょう。

全く何もわからない状態から、インストラクターに離着陸や機体の操り方などを学びます。

一つの一大イベントでもある、ソロフライトを経験して、成長していきます。

自家用操縦士技能証明の受験資格

  • 年齢:17才以上
  • 総飛行時間:40時間以上
  • イ.10時間以上の単独飛行
  • ロ.出発地点から270㎞以上の飛行で、中間において2回以上の生地着陸をするものを含む5時間以上の単独操縦による野外飛行
  • ハ.夜間における離陸、着陸及び航法の実施を含む20時間以上の同乗教育飛行

となっております。

2020年の段階では、車の運転免許が18歳からなので、飛行機の免許の方が先に取れるとは面白いですね。

飛行機の免許を取得しても、乗る機会や場所が限られてしまうと思いますが……。

総飛行時間が最低40時間で受験する事ができますが、多くの人は60~75時間程度かかるようです。

ちなみに、アメリカの自家用操縦士は、2017年の段階で17,752人いるそうです。(出典:AOPA State of General Aviation 2019)

自家用操縦士になる為に必要な最低金額の目安

受験資格を満たす最低の条件で、テストに出られる人はまずいないと思いますが、ざっくり計算してみたいと思います。

アメリカでセスナ172をレンタルすると、一時間あたり125〜175ドル程度かかります。(デポジットや年会費を含まないものとする)

料金の間をとって、一時間あたり150ドルとすると、40時間 x 150ドル/hr= 6000ドルかかります。

1ドル=110円計算だと、66万円で取得可能になりますね。

このほかにも、座学代、渡航費、テキスト代、メンバー代、発着料、試験料などかかりますので、その分この金額よりオーバーすることを忘れないでください。

日本で免許を取得するなら、一時間あたりセスナで6万円程度するので、240万円になりますね。

自家用操縦士免許なら、FAAで取得しても日本の航空法規の筆記試験で書き換える事ができるので、アメリカの方が断然お得と言えますね。

事業用操縦士

事業用操縦士技能証明でできること

事業用操縦士免許の業務範囲は、次のようになっています。

  • (イ)自家用操縦士の資格を有する者が行うことができる行為
  • (ロ)報酬を受けて、無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。
  • (ハ)航空機使用事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
  • (ニ)機長以外の操縦者として航空運送事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
  • (ホ)機長として、航空運送事業の用に供する航空機であって、構造上、一人の操縦者で操縦することができるもの(特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために二人を要する航空機にあっては、当該特定の方法又は方式により飛行する航空機を除く。)の操縦を行うこと。

自家用操縦士より上位の技能証明なので、自家用操縦士ができることに加え、新たに4つ行える事が増えます。

このレベルから、フライトの対価をもらう事ができるので、パイロットを生業に考えている人は、自家用操縦士から事業用操縦士にアップグレードする必要があります。

定期運送便を操縦しているパイロットであれば、定期運送用操縦士免許が必要だと思うかもしれませんが、そうではありません。

エアラインに勤める副操縦士の多くが、事業用操縦士免許で飛行しています。

項目(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の(二)が該当するからです。

エアラインの副操縦士訓練生の募集要項でも、事業用操縦士が必要とする航空会社がほとんどなので、この技能証明は取らなければ次に進めないでしょう。(自社養成パイロットを除く)

エアラインに進まなくても、航空機使用事業として空を飛ぶことでお金がもらえる職業もあります。

それは、ダイビングで人を上空まで運んでいくパイロットや、上空から地上の写真を撮りたい会社の要望にパイロットとして付き添ったり、飛行機で空撮を行う航空写真や測量のパイロットとしても働く事ができます。

また、VIPの所有する小型ジェット機の操縦も可能です。

多くのエアラインなどで採用されている機体は、2人の操縦士が必要で、このような機体では機長になることはできません。

小型でパイロットを1人しか必要としない飛行機の機長(キャプテン)になる事ができます。

ちなみに、アメリカの事業用操縦士は、2017年の段階で10,506人いるそうです。(出典:AOPA State of General Aviation 2019)

自家用操縦士の約59%が、事業用操縦士の技能証明取得に進んだことになります。

事業用操縦士技能証明の受験資格

  • 年齢:18才以上
  • 総飛行時間:200時間以上
  • イ.100時間以上の機長としての飛行
  • ロ.出発地点から540km以上の飛行で、中間において2回以上の生地着陸をするものを含む20時間以上の機長としての野外飛行
  • ハ.機長としての5回以上の離陸及び着陸を含む5時間以上の夜間の飛行
  • ニ.10時間以上の計器飛行

17歳で自家用操縦士になり、時間とお金に余裕があれば、18歳までに200時間のフライトタイムをためることは可能でしょう。

大学などに2年間通った後、航空大学校を受験したり、4年生大学でパイロットコースを経て、卒業時にエアラインに就職する流れが一般的になりつつある中、高校卒業時に事業用操縦士免許まで取得し、エアラインに進むことも現実味はありませんが、不可能ではありませんね。

事業用操縦士になる為に必要な最低金額の目安

自家用操縦士免許を40時間で取得したとすると、残り160時間飛行経験を積まなければなりません。

事業用操縦士を取得するにあたって、2つの選択肢があります。

  1. セスナなどで、単発機の事業用操縦士免許を取得する
  2. 双発機などに乗り換えて、多発で事業用操縦士を取得する

の2パターンがあります。

エアラインに進みたいと思うのであれば、2の選択肢を選ぶことになるでしょう。

国内エアラインの募集要項で、多発限定を必要としていますし、エアラインで1つのエンジンしか付いていない機体で運航いるところはほぼないでしょう。

双発機に移行するとき、軽双発機に分類されるセミノールやダッチェスという機体があります。

写真:セミノール(PA44)  出典:KGG1951

これだと、1時間あたり「310ドル」程度でしょう。
もう少し大きくパワフルな機体だと、ビーチクラフト社のバロンが人気機種です。

一時間あたり「417ドル」程度で借りられます。

写真:バロン

さらに、キャビンを与圧できるセスナ340だと一時間あたり「569ドル」となっています。

残りの160時間をセミノールで訓練したと仮定すると、160時間 x 310ドル/hr = 49,600ドル(5,45,600円|1ドル110円計算)になり、自家用操縦士免許の比にならないくらい金額がかかってしまいます。

この金銭的壁は大きいのではないでしょうか。

ちなみに、日本では軽双発機は比較的飛行速度が遅いのであまり人気がなく、バロンなどを導入している会社が多いようです。

一時間あたり15万円程度なので、160時間 x 15万円/hr = 2,400万円となり、アメリカでフライトする安さを実感しますね。

定期運送用操縦士

定期運送用操縦士技能証明でできること

定期運送用操縦士免許の業務範囲は、次のようになっています。

  • (イ)事業用操縦士の資格を有する者が行うことができる行為。
  • (ロ)機長として、航空運送事業の用に供する航空機であって、構造上、その操縦のために二人を要するものの操縦を行うこと。
  • (ハ)機長として、航空運送事業の用に供する航空機であって、特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために二人を要するもの(当該特定の方法又は方式により飛行する航空機に限る。)の操縦を行うこと。
    技能証明の中の最難関が、定期運送用操縦士です。

事業用操縦士ができることに加え、新たにできる事が2つ加わります。

この免許が必要となるのは、主に2人乗りの飛行機で機長として飛行するときです。

なので、多くの場合は、副操縦士からキャプテンにアップグレードするときに取得します。

ちなみに、アメリカの定期運送用操縦士は、2017年の段階で4,449人いるそうです。(出典:AOPA State of General Aviation 2019)

事業用操縦士の約42%が、定期用操縦士の技能証明取得まで進んでいるようですね。

ちなみに、自家用操縦士から見ると、全体の1/4 (25%)が定期運送用操縦士になっていると考えると、自家用操縦士になる第一歩を踏み出し、事業用操縦士への資金の壁を乗り越えると意外とチャンスは広がっているのかもしれないですね。

定期運送用操縦士技能証明の受験資格

  • 年齢:21才以上
  • 総飛行時間:1500時間以上
  • イ.100時間以上の野外飛行を含む250時間以上の機長としての飛行
  • ロ.200時間以上の野外飛行
  • ハ.100時間以上の夜間の飛行
  • ニ.75時間以上の計器飛行

事業用操縦士を取得して入社して、副操縦士発令後1ヶ月あたり70時間程度飛行すると仮定すると、1年10ヶ月弱でクリアできるでしょう。

機長昇格訓練は、枠が決まっています。

なので、機長になってふさわしいと思われる人物がまず会社に選ばれ、どの程度の機長が会社に必要か算出され、その時の会社の業績などを考慮し、キャプテンの転職事情なども加味した上で、新たな機長を何人育てる必要があるか判断されたのち、昇格訓練に投入される人にお呼びがかかります。

訓練投入の順番が後ろの方の人は、自分の番が来るまで待っているか、より良い環境を求めて転職をすることになるでしょう。

なので、飛行時間が1,500時間に達したので、自動的にキャプテン昇格訓練を開始できるかというと、そうではありません。

会社に長い期間所属すれば、年功序列で訓練が開始できる仕組みでもありません。

日頃の行いや考え方、スキルなどが総合的に評価され、それらが機長としてふさわしくないと判断されれば、一生機長昇格訓練には声がかからない世界なのです。

また、一度会社から機長昇格訓練のお声がかかったとして、子育てなど自分の環境で断ったりすると、次いつ訓練に投入されるかわからない恐ろしさもあります。

パイロットと会社の相性などもあり、ある一定の経験を積んだらすぐに転職する人もいます。

パイロット人生の一つの目標である機長になる為に、機長昇格訓練をより積極的に行なっている航空会社に転職したり、会社側もパイロット不足の昨今、パイロットを引繋いでおく為に、機長昇格訓練の枠を増やしたりと、パイロットと会社側の駆け引きも繰り広げられます。

「人間性」「技量」「経験」「知識」「タイミング」など、多くの要素が絡んで、機長になれるのです。

定期運送用操縦士になる為に必要な最低金額の目安

ほぼエアラインパイロットとして給料を貰いながら取得するする人が多いので、お金を払うことはないでしょう。

ちなみに、事業用操縦士から1,500時間まで自費で飛んだ場合、1,300時間 x 310ドル/hr = 403,000ドル(4433万円|1ドル110円計算)かかってしまいます。

ほぼ無駄な計算ですが、日本で全て取得したら、1,300時間 x 15万円/hr=1億9500万円になりますね。

日本人の平均生涯賃金近く行ってしまいますね(笑)

まとめ

事業用操縦士技能証明を取得したら、エアラインですぐに飛び回れるかというとそうではありません。

そのほかにも、「計器飛行証明」「第1種航空身体検査」「航空無線通信士」「型式限定」などが必要です。

また、自分も操縦教官になって生徒を教えたいときは、「教育証明」を取得する必要があります。

ちなみにアメリカでは操縦教官のことを、CFI (Certified Flight Instructor)と呼び、この免許を持っている人は2017年の段階で5,310人程度しかいません。(出典:AOPA State of General Aviation 2019

さらに、計器飛行を教える教官はCFII (Certified Flight Instructor – Instrument)で、多発飛行機の操縦を教える人をMEI (Multi-Engine instructor)と呼んでいます。

自分がどのレベルで空を飛びたいのか考え、必要な免許を自分に合ったルートで取得し、早く自分の操縦で大空を飛べる日が来るといいですね。

 

【参考文献】