【パイロットの仕事シリーズ】|パイロットは毎日何をやっているの?
日本で一番忙しい空港の一つである、羽田空港の年間着陸回数は最大約44.7万回に及ぶそうです。
これを1日計算すると、約1,200回の離着陸が行われております。ほとんどの機体は2名乗務なので2,400人のパイロットが最低でも必要です。
また、海外便など飛行時間が長い路線はパイロット3人必要なので、2,400人以上のパイロットが毎日飛行しています。
ドラマなどで注目されたパイロットですが、実際の仕事ではどのようようなことをやっているのでしょうか。
パイロットの仕事
パイロットのスケジュールは、アルバイトのようにシフト制です。多くの場合は、1ヶ月前までのスケジュールが発表されます。
それに従って、フライトをこなしていくのです。1日の乗務時間は会社規定で決まっていたり、パイロットの健康面は管理されているので夜遅くの便で帰ってきて、次の日早朝のフライトはありません。
朝起きてから会社まで:
まず、起きて身支度を整えます。そして、天気予報を見る人が多いです。今日1日の大まかな雲の流れや、等圧線をみて今日のフライトにどのように影響してくるのかイメージするためです。
そして、会社にいくまでに色々な手段がありますが、自分で車を運転していく人は運転しかできませんが、電車やバス通勤の人もいらっしゃいます。
そういう方は、タブレットなどで今日のフライトプランや天気の情報を集めておきます。
そうすると、ショーアップしてからスムーズに機長と副操縦士のブリーフィングが行えるからです。
出発前の確認事項:
まずショーアップの時間になったら、お互いの健康状態やライセンスの確認を行います。また、備え付けの検査機でアルコール検査も行います。
機長は航空法第73条の2により、出発前の確認をしなければならないです。さらに、何を確認するかは航空法施工規則164条の15で決まっています。
第七十三条の二 機長は、国土交通省令で定めるところにより、航空機が航行に支障がないことその他運航に必要な準備が整つていることを確認した後でなければ、航空機を出発させてはならない。
航空法(出発前の確認)
第百六十四条の十五 法第七十三条の二の規定により機長が確認しなければならない事項は、次に掲げるものとする。
航空法施工規則(出発前の確認)
一 当該航空機及びこれに装備すべきものの整備状況
二 離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布
三 法第九十九条の規定により国土交通大臣が提供する情報(以下「航空情報」という。)
四 当該航行に必要な気象情報
五 燃料及び滑油の搭載量及びその品質
六 積載物の安全性
2 機長は、前項第一号に掲げる事項を確認する場合において、航空日誌その他の整備に関する記録の点検、航空機の外部点検及び発動機の地上試運転その他航空機の作動点検を行わなければならない。
この項目全てがオフィスでできるわけではないので、オフィスでできるところだけ確認を行います。
天気の確認などはタブレット、パソコン、プリントアウトされた天気図、ディスパッチャーなどを通して確認できます。
天候が悪くGo Aroundする可能性が高い時や、天候の影響で空港の混雑が予想される時は余分に燃料を積んだりします。
この決定を機長、副操縦士、ディスパッチャーで行います。
また、エアラインでは全てのチェック項目が機長だけでできるわけではないので、分担して確認を行います。
それぞれの担当者が確認をして、そこに誰が確認したのか日付、チェック項目、名前、サインなどを記入して機長に提出する形がとられております。
それぞれの分担がこちらです:
- 当該航空機及びこれに装備すべきものの整備状況:
- 搭載用航空日誌が機内にあるので、コックピットで確認する。また、オフィスを出る前にメカニックの人ともブリーフィングをするので、何かあればその時にも伝えてくれる。
- 離陸重量、着陸重量、重心位置及び重量分布:
- 乗客や荷物の積載量と場所で計算され、コックピットに送られてくる。自分で計算する航空会社もあり。
- 航空情報:
- フライトプランが用意されている。また、ネット上で見られるようになっている。NOTAMはAIS-Japanでも見られるが、会社が就航していて必要な所のNOTAMを抜粋しておいてくれているところが多い。
- 当該航行に必要な気象情報:
- ショーアップしたら天気図が用意されていたり、ネット上で見られるようになっている。
- 燃料及び滑油の搭載量及びその品質:
- 燃料は燃料屋さんが予めオーダーした燃料とその品質を記載した書類を持ってきてくれる。滑油の品質はデイリーチェック、搭載量はプレリミナリーコックピットプレパレーションで毎便確認している。
- 積載物の安全性:
- 荷物搭載の責任者がいる。ソーティング場という預け荷物をコンテナに積む人と、そのコンテナを機体の決められた場所に積載して、固定したことを確認する。確認できたらサインをして機長に渡す。
キャビンとのブリーフィング:
機長と副操縦士でブリーフィングを行なっている間は、キャビンクルーは別でブリーフィングを行なっております。それぞれのブリーフィングが終わったら、合流してその日の注意などのブリーフィングを行います。
ブリーフィング場所は、お互いにブリーフィングが早く終わった時などは、オフィスで行うことがあります。
あまり早く飛行機の駐機予定のゲートに向かっても、飛行機が到着していない場合があるからです。
ターミナルのボーディングブリッジに飛行機が駐機しているとは限りません。沖スポットと呼ばれる、バス移動しなければいけない所に飛行機が停まっていることもあります。
その際には、全クルーが揃って会社のバンやバスで移動します。時間節約のために、この車内でミーティングを行う場合もあります。
天気が悪く、燃料を多く積む必要がある際にはブリーフィングが長引きます。実際にどのぐらいの燃料が必要なのか話し合う必要があるからです。
この際には大抵キャンクルーのブリーフィングが先に終了しております。オフィスで待ちぼうけしていてもしょうがないので、沖スポットでない限り先に飛行機に向かってもらいます。
運航乗務員が到着するまでにある程度のキャビンの仕事を終わらせておくためです。
機内で全員集合したらブリーフィングを前方入り口近くで行うことが多いです。
コックピットプレパレーション:
コックピットの中に入ったらとても忙しいです。定時出発させようと多くの人が努力をしております。
その中で、パイロットの都合で出発が遅れては全ての努力が水の泡になってしまいます。
しかし、慌ててミスをする方が危険なので、確実に決められた仕事をきっちりと行うことが大切です。
Push Back前までやる事:
- Preliminary CK
- Cockpit Preparation
- FMS入力
- FCU Set
- IFR Clearanceをもらう
- ブリーフィング
- 燃料の最終確認
- 入力したデータを相互確認
- プッシュバッククリアランスをもらう
どれも慣れればそんなに難しい作業ではないですが、この手順をやっている間に想定外のことが起きるとグダグダになりがちです。
例えば、IFR Clearanceをもらおうとしていたら、無線で他の機体がもらっていて時間がかかりそうなら、先にブリーフィングを行ったりできることを先先と行います。
そうこうしているうちに、飛行機のトラブルを示す警告がなって、ブレーカーのリセットなど手順が入ったり、キャビンクルーから乗客の争いごとの連絡などが入ってくることもあります。
手順の順番を変えたり、想定外のことが間に刺さりこんでも出発前には全ての確認の漏れがないようにしなければなりません。
離陸、エンルート、着陸:
プッシュバッククリアランスをもらったら、飛行機の後ろの安全確認をしてもらって、プッシュバック開始になります。
エアラインの多くの機体は、プッシュバック中にエンジン点火します。
エンジン点火して、他にも機材のトラブルがなければTaxiクリアランスをもらってからTaxiを開始します。
滑走路に入るのも許可が入りますし、離陸にも許可が必要です。許可なく行動すると安全が担保できないので、確実に2人のパイロットで確認して滑走路に進入します。
離陸したら、ギアをあげて上昇していきます。この際に他の機体の見張りが重要です。
上昇中に今出発した空港にアプローチしている機体がいるかもしれません。レーダーで写っていたり、管制官から高度制限をもらうことがあります。
これを守らないと衝突する可能性が高くなるので、ATCに耳を凝らして、言われた高度をしっかりとセットすることに最新の注意を払います。
特に、羽田空港と成田空港は出発と着陸のためのルートがくっさくするところがあるので注意が必要です。
また、雲がどのぐらいの高さまであるのかや、出発してからどの辺までが揺れるのか、天気のブリーフィングと実際を比較して、どの程度でシートベルトサインを切っていいのか2人で判断します。
巡航飛行に入れば安心かというとそうではありません。羽田-伊丹間などは400km程度しかなく、飛行時間も1時間程度です。
上空で、着陸のための目的地の天気をとったり、FMSに情報を入力して、地上の到着ゲートを割り振っている人に何時頃到着予定か、ディスパッチャーに次の便の燃料はどうするのか連絡を取らないといけません。
アプローチチャートの準備やブリーフィングを行わないといけなかったり、色々と忙しいです。
ブリーフィングなど全てやることを終えてから、アプローチし着陸を行います。
着陸後誘導路に出て、地上から伝えられていたゲートに向かいます。そこでお客さんを降ろしている間に、引き返しの便の準備をします。
その日のレグ数にもよりますが、ステイになるか自分の本拠地に戻ります。
その日の最後のフライトが終わると、機長と副操縦士で反省会を行ったりします。そして、次のフライトに活かせるよう自分を磨いていくのです。
まとめ:
このようにパイロットの仕事は日々勉強です。同じ天候の日はありませんし、乗員の組み合わせ毎回違います。
やること自体は基本的にルーティーンワークです。イレギュラーなことが起こったらミスをしないようにするには、どうしたらいいのか工夫する必要があります。
また、通常の手順などは毎日のように行い、できるようになりますが、緊急事態は滅多に起きません。
緊急事態はいつ起こってもおかしくないので、すぐに手順ややるべき行動を取れるようにイメージトレーニングが必要です。
覚える知識がとても多いので、使っていないと忘れてしまいます。定期的にそんな知識の棚卸しをしたり、新しいシステムや法律のアップデートも必要です。
健康維持も一つの大事な仕事と言えるでしょう。このように、フライト以外でも色々とやることが多いですし、学ぶことも多いです。
パイロットの道は一生勉強であると言われるのは、そういうところから来ているのかもしれません。そして、それがこの仕事のやりがいになっているのかもしれませんね。