リスクマネジメント能力足りてる?4大原則と6つのプロセス思考
一度コックピットの中に入ると、エラーに対するマージンが減ってしまいます。
ADMをしっかりと学ぶことで、あなたがヒューマンエラーを引き起こす可能性を限りなくゼロに近づけることができます。
ADMのスキルを身につけていく上でも、リスクマネジメントの考え方は必要です。
また、日常から正しい判断をする練習をしたり、正しい知識を得ることで後天的にそのスキルを伸ばしていく事ができます。
今回は、リスクマネジメントの「4大原則」と「プロセス」についてみていきましょう。
リスクマネジメントとは?
リスクマネジメントという言葉を聞いたことがありますか?
リスクマネジメントとは、次のように定義されています:
リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避または低減を図るプロセスをいう。
リスクマネジメントの必要性 – 中小企業庁 – 経済産業省
a system to prevent or reduce dangerous accidents or mistakes
LONGMAN Advanced American Dictionary
航空業界でいう損失は、航空機が壊れたりする事もそうですが、一番大きいのは、毎フライトごとに人の命がかかっています。
過去の事例を見ていると、ちょっとしたボタンのかけ違いで、大きな事故につながっています。
リスクマネジメントは、ADMのの要の考え方となるもので、その目指すところは
- 安全に関わるハザードを察知する能力を持つ能力
- リスクに関わるものを軽減する
の2点です。
リスクマネジメントを学ぶ事で、より安全な飛行を目指す事ができると言えるでしょう。
リスクマネジメントの4大原則
ただリスクマネジメントの定義を知ったところで、「ふ〜んそうなんだ…….」で終わってしまう事でしょう。
もう少し印象に深く残すために、リスクマネジメントの原則についてご紹介します。
リスクマネジメントには、次の4大原則があります:
必要のないリスクはとらない
空を飛ぶ事はリスクの塊です。
一番安全に近い行動は、フライトを一切しないということではないでしょうか。
リスクは2つのタイプがあります。不要なリスクと必要なリスクです。
飛行機に乗るという事は、必要なリスクと捉えます。
必要ないリスクというのは、あなたが全く新しい機種を初めて操縦する日を想像してみてください。
どこに何のスイッチがあったり、どのような手順で操作するかは大体頭に入れてきたとしても、その機体独自の個性やコントロール系統やスイッチ類の質感、匂いや機内の音などは経験した事がありません。
そんな中で、IFRのLanding Minimaギリギリの天候で、いきなりフライトに行きたいですか?
もう少し飛行機の特性などを見るために、慣熟飛行を行ってから天気が悪い日に挑戦してみてもいいのではないでしょうか。
これが必要ないリスクの1つであると思います。
適切なレベルでリスクを判断する
リスクコントロールを開発したり、実際に実行する人がリスクの判断を行いましょう。
当たり前の話ですが、自分が操縦している機体をどう操縦するかは、自分が判断します。
決して一緒に搭乗している乗客や、ATCが機体をコントロールしているわけではありません。
自分がPICなら責任を持って、許容できるリスクを判断し行動しましょう。
利益が危険を上回る場合リスクを許容する
空を飛ぶ事はリスクの塊です。
しかし、飛行機でどこかにいくのはとても移動速度が速く便利です。
また、自分が操縦して大空を飛ぶ事は楽しいですし、新しい機体を飛ばす時はワクワクします。
空を飛ぶ事は危ない事だと家に閉じこもっていたら、決して味わえない感覚でしょう。
リスク管理を全てのレベルの計画に統合する
空を飛ぶ事はリスクの塊です。
目的地の天候が悪いのであれば、上空待機の分の事も考え、燃料を多めに積んで出発しようなど考えます。
しかし、プランではこうなるはずだから大丈夫とするのではなく、実際に「今のリスクレベルは許容範囲なのか?」「プラン通りに進んでいるのか?」などアップデートしていきましょう。
初めの計画レベルだけでなく、その後に現場の状況でアップデートしたプランニングも大切です。
リスクマネジメントのプロセス
リスクマネジメントには、ハザードを識別するところから始まり、結果をモニターするところまで全部で6つのステップがあるのをご存知ですか?
- ハザードを識別する(Identify Hazards)
- リスクを評価する(Assess Risks)
- リスクに対して取ろうとする行動を分析する(Analyze Controls)
- どの行動を取るか決める(Make Control Decisions)
- 行動を起こす(Use Controls)
- 結果をモニターする(Monitor Results)
という流れがあるのです。
もう一度自分の普段の生活を振り返り、リスクマネジメントプロセスの6つのステップは正しく抜かりなく行われているのかや、自分はプロセスのどこが弱いのか確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、いかに事故や損失を回避したり、低減できるかを考えている、リスクマネジメントの世界のさわりをご紹介しました。
必要のないリスクを排除したり、自分が許容できるリスクレベルを定義する事で、どこまでなら自分は失敗せずにうまくできるのか、目安が持てると思います。
体調やシチュエーションによって変わってくるので、一概にこれで安心という事にはなりませんが、日常からリスクマネジメントのプロセスをふんで行動・思考する練習や、4大原則を振り返る事で、安全運航に一歩ずつ近づけるのではないでしょうか。
【参考文献】
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