【飛行機の着陸】タッチダウンとロールアウトについて

接地がうまいといいパイロットだと、判断される方が多くいます。

それほど接地の衝撃に対して、多くの人が関心を持っています。

今回は、タッチダウンとその後に続くロールアウトについて見ていきたいと思います。

タッチダウンの姿勢

タッチダウンは通常、ストール限界速度で、メインギアから接地します。

この着陸姿勢を作るのはとても重要ですが、これができていないパイロットが中にはいます。

スムーズなタッチダウンを行うには、滑走路から数十センチの高さでフレアーし、パワーをアイドル状態で、ストールギリギリまで速度を落としていきます。

2〜3フィート(60~91cm)の高さでは、スムーズタッチダウンをするには高すぎるでしょう。

そこからさらに減速と降下をしていきます。

速度は絶えず遅くなって行っているので、操縦桿を徐々に引きつづけリフトを補います。

それにより、ピッチが上がっていき、メインギアから接地するための着陸姿勢が出来上がります。

メインギアのタッチダウン後

メインギアがタッチダウンしても操縦桿のバックプレッシャーは緩めてはいけません。

AOAを大きく保っておくことで、空力的ブレーキを利用することができるからです。

飛行機がある程度減速するまで、ノーズギアは滑走路から浮かせておきます。

機体の勢いが弱まってきたら、バックプレッシャーを徐々に緩め、ノーズギアを優しく接地させます。

接地の時に大事なのが、機体の軸を滑走路の中心線と並行にしておくことです。

そうしなければ、片方のメインギアの外側に大きな力が加わり、破損してしまうことがあるからです。

ノーズギアが接地することにより、ステアリングが使えるようになります。

それと同時に、AOAの角度が浅くなり、リフトの力が弱まります。

これにより、フロートティングやスキッピングが予防できるだけでなく、機体の全重量がタイヤにかかり、ブレーキの効きが良くなります。

ランディングロール(After-landing Roll)

接地後から通常のタクシースピードまで徐々に減速したり、滑走路から出て停止するまで気を抜いてはいけません。

無事に接地したことで気を緩めてしまい、その後に続くランディングロール中に事故が発生しています。

特に接地直後は、タイヤと地面の摩擦により方向維持が難しいです。

方向維持がうまくできない結果として、接地直後にグラウンドループや急激なターンに陥ってしまうこともあります。

急激な遠心力や地面との摩擦でバランスを崩し、翼端を地面に擦ってしまったり、ギアを破壊してしまう可能性もあるでしょう。

接地直後もラダーを使用して、方向を維持することができます。

どのぐらいラダーが有効かは、ラダーに当たる気流の強さで決まります。

接地直後のまだ速度があるときは、ラダーの効きも強いです。

速度があるうちは地上でもラダーで方向維持を行い、速度が落ちてきたらブレーキングやステアリングハンドルで機体方向をコントロールすると良いでしょう。

飛行機のブレーキ

飛行機のブレーキは、車のように減速するために使われるだけでなく、別の使い方もできます。

それは、片方だけブレーキをかけると、そのブレーキをかけた方側に強く回転する性質を利用します。

ラダーやステアリングだけでコントロールするよりも、大きく方向を変えることができます。

多くの小型機では、ラダーペダルの爪先側にブレーキが取り付けられていることが多いです。

上写真は、ラダーペダルの写真です。

下の方の滑り止めは、ラダーを使用する時のためのもので、上側についている滑り止めは、ブレーキ用となっています。

左右のブレーキペダルは、それぞれ左右のメインギアのブレーキとつながっています。

両方同時にブレーキをかけることもできますし、左右独立してブレーキをかけることもできます。

接地の際はかかとを地面につけるなどして、爪先をブレーキにかからないようにしておきます。

そして、速度が低下してきたら足を持ち上げ、爪先でブレーキを操作できるようにします。

この足をブレーキに乗せるために持ち上げるときも、ラダーの力を抜かないようにするのはコツがいるでしょう。

接地後に機体重量をメインギアに乗せることが、ブレーキの効きを良くするために大事です。

接地直後では、翼がリフトを生み出している分、メインギアに機体重量が乗りきりません。

徐々に操縦桿のバックプレッシャーを抜いていくと、リフトの力が弱まり、メインギアに全てかかっていた重量が、ノーズギアにも移動します。

しかし、ノーズギアにはブレーキはついていないので、機体重量がノーズギアに分散されてしまってはブレーキングの手助けになりません。

ノーズギアが浮かび上がらない程度バックプレッシャーをかけておくことで、方向維持をしながらメインギアに機体重量を乗せることができるのです。

そのために、操縦桿を少し引いておくのです。

注意点として、タイヤに体重がかかっていないときにブレーキをかけてしまうと、ちょっとの力でもタイヤがロックしてしまい、ロックされたタイヤが滑走路を引きずられ、接地面からパンクしてしまいます。

このタイヤがロックして滑走路を滑るように進むことを、スキッティングといいます。

スキッディングを解消するには、一度ブレーキから足を離してあげる必要がります。

そして、タイヤに重量が乗ったら再びブレーキを徐々にかけていきます。

ブレーキで方向をコントロールする際には、オーバーコントロールに注意をして、ゆっくりと慎重に行いましょう。

接地後も、上空と同じように翼が水平になるように努めます。

風に煽られるなどしてランディングロール中に片方の翼が持ち上げられそうになったら、地上でもエルロンを使い、その動きを食い止めてあげる必要があります。

速度が低下してくると、エルロンの効果がなくなることは言うまでもありません。

タクシーウェイに出たり、滑走路外で停止したら、フラップをアップにし、After Landing Checklistを行いましょう。

このときに、フラップと間違えてギアレバーを操作してしまうミスが多いので、よく確認してから操作するようにしないといけません。

まとめ

着陸姿勢を整えることはとても大事です。

接地後に急激に方向が変わり、滑走路の横から飛び出し空港敷地のフェンスに激突する事故も発生しています。

 

【航空機事故】第一航空101便着陸失敗事故

 

着陸後のフラップ収納操作で慣れないうちは、フラップレバーとギアレバーを間違わないように慎重に確認するでしょう。

しかし慣れてくると、うっかりミスを引き起こしやすくなるので注意が必要です。

ギアにはセーフティー機構があるとはいえ、それが壊れていると地上でギアを収納してしまい事故につながります。

接地作業だけが大事なのではなく、その後の減速でも気を抜かないできっちりと行いましょう。

 

【参考文献】