【飛行機の着陸】3つのハイドロプレーニング現象

ハイドロプレーニング現象“という言葉を聞いたことがありますか?

日本語では水幕現象とも呼ばれ、1977年にポルトガル航空425便はハイドロプレーニング現象が原因でオーバーラン事故を引き起こしております。

そんな事故にもつながるハイドロプレーニング現象ですが、大きく3種類に分けられるのをご存じですか?

今回はハイドロプレーニング現象3つについて見ていきましょう。

ダイナミックハイドロプレーニング(Dynamic Hydroplaning)

「ダイナミックハイドロプレーニング」は、比較的高速度で滑走路の表面に水幕が 2.54 mm(0.1インチ)以上の厚さがあるとき、その上を通過したら発生します。

機体速度が増したり滑走路上の水幕が厚くなるにつれ、タイヤと滑走路との摩擦が減り、コントロールを難しくしたりブレーキの効果を激減させてしまいます。

機体によっては、ハイドロプレーニング速度を「Vp Speed」で表しているものがあります。

この速度は、「機体重量」と「水分が機体を持ち上げようとする力」が釣り合う速度を表しています。

また、ハイドロプレーニングが引きおこる速度は、計算により算出させることができます。

興味がある方は、こちらの記事を参照ください。

「ダイナミックハイドロプレーニング現象」は、タイヤの空気圧とも大きな関わりがあります。

ある実験結果によると、ハイドロプレーニング現象が引きおこる最小速度は8.6√タイヤのPSIだったそうです。

なので、メインギアのタイヤの空気圧が24lbsだったとき、先程の式にあてはめると42ノットの速度でハイドロプレーニング現象が引きおこる可能性があると計算できます。

リバーティッドラバーハイドロプレーニング(Reverted Rubber Hydroplaning)

2つ目は、「リバーティッドハイドロプレーニング」とよばれるもので、別名「スチームハイドロプレーニング(Steam Hydroplaning)」ともよばれています。

このタイプは、接地直後にタイヤがロックされるまでブレーキを力強くかけてしまうことで発生します。

タイヤがロックされると、地面とタイヤに大きな摩擦が発生し熱が発生します。

この熱により、タイヤが柔らかくなります。

この柔らかくなったタイヤがシールドとなり、タイヤの水はけ機能を悪くしてしまいます。

先程の「ダイナミックハイドロプレーニング」と比らべて、より少ない水分量で引き起こってしまうことが特徴です。

また、熱で滑走路面の水分が蒸気になり、タイヤを持ち上げる力を働かせます。

これが、「リバーティッドラバーハイドロプレーニング」が「スチームハイドロプレーニング」ともよばれる原因です。

「リバーティッドラバーハイドロプレーニング」の多くは「ダイナミックハイドロプレーニング」に続いて引き起こされます。

接地後に「ダイナミックハイドロプレーニング現象」に陥ってしまい、パイロットが焦ってブレーキを強めて止まろうとしてしまい、「リバーティッドラバーハイドロプレーニング現象」を引き起こすという流れです。

「リバーティッドラバーハイドロプレーニング」から機体を回復させるには、一度ブレーキを緩め、タイヤを十分に回転させてあげてから、ゆっくりと再びブレーキ操作に入ることです。

そうしないと「リバーティッドラバーハイドロプレーニング」は、20ノット以下などとても遅い速度まで影響が長引いてしまうのです。

ビスコスハイドロプレーニング(Viscous Hydroplaning)

3つ目は、「ビスコスハイドロプレーニング」現象です。

英語の「Viscous」は直訳すると「粘性」で、滑走路上の水分の粘度と大きな関わりがあります。

とても少ない水分量でも引き起こるのが特徴で、1/1000インチ(0.0254mm)程度の水幕で影響が出ます。

「ビスコスハイドロプレーニング」が引き起こる条件として、滑らかな表面が必要です。

この条件が揃いやすい場所は、タイヤの削りカスがたくさんこびりついた滑走路のタッチダウンゾーンなどです。

このような場所に水分がわずかでも加わると、まるで濡れた氷の上にいるようにつるつる滑ってしまいます。

対処方法としては、よく清掃された滑走路を選ぶか、グルービングが彫られた滑走路にできるだけ遅い速度で接地することです。

もし、接地後に「ビスコスハイドロプレーニング」現象が引き起こってしまったら、一度機首を上げ風の抵抗を増やし減速をするといいでしょう。

ブレーキが利くエリアや速度になったら、再びブレーキをかけるといいでしょう。

ブレーキ操作もとても大切で、少しでもタイヤがスキッドする感覚を感じたら、ブレーキから足を離しタイヤを回転させてあげましょう。

タイヤが完全にロックされたまま地上滑走をするより、タイヤが回転している方が方向のコントロールが効きやすいからです。

まとめ

3種類のハイドロプレーニング現象を見てきました。

ハイドロプレーニング現象は全部で3つに分けられる事を知っていましたか?

実際に接地後に機体が横滑りし始めたら、寒気が走ることでしょう。

どんなにすぐに止まりたくても、ブレーキを強く踏み込みタイヤをロックさせてしまうことは逆効果だということを肝に銘じておきましょう。

また、横風が吹いているときにハイドロプレーニング現象が引き起こると、風見効果で機首が風上側に向こうとすることにも注意が必要ですね。

 

【参考文献】