【CFIT】小型飛行機の事故原因約17%を締めるものとは?

【CFIT】小型飛行機の事故原因約17%を締めるものとは?

アメリカにはAOPAという、航空機のオーナーやパイロットの世界的な組織があります。

そこの統計によると、2017年のGeneral Aviationとして登録されている航空機は、213,050機でした。

そのうち、死亡事故を引き起こしてしまったのは330件でした。

引き起こされた、死亡事故全体の17%はCFITであったのです。

General Aviationとは、直訳すると一般航空です。エアラインの様な定期運送や自衛隊などを除いた航空のことをさします。例えば、個人所有の飛行機、航空機使用事業、飛行訓練、グライダークラブなどが含まれます。

今回は、CFITとは一体なんなのか見ていきましょう。

CFITとは?

CFITとは、「Controlled Flight Into Terrain」の略で、飛行機になんの問題もないのにも関わらず、パイロットが自ら錯覚などにより障害物へ衝突していってしまうことを指します。

読み方は、”シーフィット”と読みます。

もちろん、ほとんど全てのパイロットは安全に運航をしたいです。しかし、ある状態の時、CFITが発生しやすいことがわかりました。

CFITを引き起こしやすい時:3件

1. 計器飛行証明を持っていないパイロットが、マージナルVFRやIMC状態で飛行する時:

アメリカではVMCとIMCの間にマージナルVFRコンディションというものがあります。定義は、視程:3~5nm、シーリング:1,000~3,000ftの時です。分類的には、VMCに定義されるので、VFRで飛行が可能ですが、ギリギリの状態です。
単純に考えて、雲中飛行ができない人が、天気が悪い中飛んでは危険ですよね。
アメリカの事故調査員会(NTSB)やアメリカの連邦航空局(FAA)によると、VFRのフライトをしていて、天気が悪くなりIMCになってしまう時にCFITが引き起こってしまいます。
計器飛行証明を持っていて知識や経験があるパイロットであれば、たとえ雲の中に入ってしまっても飛行機の計器を利用して、ナビゲーションして空港に着陸することができます。
アメリカでは飛行機が車の様に身近なので、General Aviationが発達しております。
飛行機を所有しており、週末に飛行を楽しむ人も大勢います。そういう人は、Private Pilotの免許だけを取得して、計器飛行証明は取得しない人が大半です。
特に夏の天候は悪くなりやすく、気がつけば周りに積乱雲が発達しており、雲に囲まれてしまうこともあるでしょう。
また、帰宅を急ぐあまりに、マージナルVFRなどの天気の悪いエリアを突っ切ってしまえとばかりに無理をする人もいます。
この時、CFITを引き起こしやすい状態であると言えます。
以下は、そのような時にCFITに伴うリスク:
  1. 飛行機のコントロールを失う
  2. 状況認識を誤る
  3. “See and Avoid”の判断が遅れる
  4. 最小制限速度を切ってしまう
  5. 道に迷ったり、予定された経路から外れたり、地形や障害物に影響を受ける
  6. 雲を避けようと高度を下げている時に、航空機のトラブルが発生したら対応する時間が短すぎる
  7. 気象条件の理解不足
  8. 正しい意思決定の欠如
  9. 法律違反を犯してしまう
  10. 最低安全高度を下回ってしまう

2. 計器飛行証明を持っているパイロットが、計器飛行している時:

計器飛行証明を取ったらそこで終わりではありません。もし、計器飛行に対して、十分な準備がなかったり、慣れていなかったらCFITの可能性が高まってしまいます。

そうならないためのテクニックや助言10個です:

  1. PICはIFRでの飛行に対して、熟練、慣熟、資格を持っていること
  2. IFRで必要な計器を飛行機が装備していること
  3. コックピットにアプローチチャートなど揃えておくこと
  4. 各空港での飛び方を熟知しておくこと
  5. それぞれの責任などを含め、パイロット同士でブリーフィングを行うこと
  6. 天気情報を事前に入手しておくこと
  7. 地形などを勉強し、飛行ルートを水平方向と垂直方向で安全確認をしておくこと
  8. 新しい機体の装備などの使い方を知っておくこと
  9. もしパイロットが1人なら、ATCや乗客など使えるリソースは使うこと
  10. Missed Approachの手順を確認して置いたり、自分の中のミニマムを持っておくこと

3. VFRコンディションでも、低空で飛行している時:

地面に近ければ近いほど、危険は増します。もし何かが起こってしまった時には、地面衝突まで残された時間が短いからです。

ヘリコプターや農業用の飛行機のパイロットは、木や建物の近くを飛行することが多いので、他のパイロットよりも危険な状態であると言えるでしょう。

また、飛行する時間帯、影、太陽の方角、飛行機のブラインドスポット、疲れなどがパイロットの状況認識力を低下させ、危険を察知した時にはすでに手遅れのことが多いです。

さらに、気圧の低下など天候的な要素が飛行機のパフォーマンスを低下させてしまい、結果致命的なことが起こってしまうこともあります。

低高度飛行に関するCFITの因子は:

  1. Windshearなどによる最低安全速度を切ってしまう
  2. 密度高度
  3. 飛行機のリミテーションをオーバーしてしまう
  4. 高度を下げる前に下の高度の状況把握が乏しい
  5. 渓谷などを飛行していると、送電線に気がつかない
  6. 袋小路の渓谷に入り込んでしまう
  7. 飛行機の上昇性能以上切り立った斜面を登ろうとする
  8. Decisionmakingをミスする
  9. 何かに気を取られているうちに地面に近づきすぎる
  10. 木に近づきすぎたり、リスクを取りすぎる

対策

CFITになりやすい状況を、それぞれ違う目線から3点見てきました。

それでは、どうしたらCFITになる可能性を下げることができるのでしょうか?

それは大きく分けて2点あります。

1点目は、自分はどういうタイプの人間かを把握することです。パイロットは人なのでミスをおかします。

もし、自分はどういうタイプの人間かわかっていれば、それに対して準備ができます。

例えば、家族や友人などを遊覧飛行で案内しているときに、少しでも絶景を見せてあげるために、必要以上に渓谷の奥まで入って行ったり、山に近づいてしまっては危険です。

”人を喜ばすためなら、最低安全高度を少しぐらい切ってしまっても大丈夫だ”と思ってしまう傾向があるのであれば、それに気がついて普段から意識していると、その様な状況になったらふと我に帰ることができるようになるでしょう。

2点目は、機械を信用して使いこなすことです。まず、Autopilotは正しい高度を入力すれば、その高度を保ってくれます。コースも同じです。

ちょっと計算したいときなど、フライトから気が散ってしまいそうな時に、絶大な力を貸してくれます。

さらに、Radar Altimeter(RA)などが開発され、対地でどのぐらいの高さにいるのかわかる様になりました。

それにより、GPWSの様なシステムも開発され、飛行機の安全性がどんどん高まってきています。

旅客機などではGPWSの導入が進んで、CFITが減少してきました。しかし、General Aviationは出遅れております。

しかし、Garmin社のGlass Cockpitの背景に地形を表示する機能ができたり、空港の位置を表示してくれるヘッドアップディスプレーの様なものも開発されています。

まとめ

どんなに優れたパイロットでも、一度致命的なミスをしたら人生が終わってしまうかもしれません。

普段から準備をして、必要な知識を蓄えておくことが大切です。また、使えるものはなんでも使えるようにする、リーダーシップやコミュニケーション能力も必要でしょう。

天気など状況が悪化してきたのであれば、一旦近くの空港に降りて天気が回復するまで地上で待機する勇気も必要です。

特に計器飛行証明を取ったばかりのパイロットや、まだその飛行機の性能や装備品に慣れていないのであればなおさらのことです。

常に自分の状況認識力が大切であるかが、わかると思います。

今回は、何も飛行機は故障をしていないのに、パイロットが自ら意図せずに地面に激突してしまう原因:CFITの脅威と対策をご紹介しました。

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