ドップラーレーダーとは?【いざという時の見張り番】
ドップラーレーダー(Doplar Radar)とは?
ドップラーレーダーは、レーダー(電磁波|マイクロ波)を使用して雲などの水分の動きを観測しています。
空気中の水蒸気や降水がどの方向に動いているか観測することにより、そのエリアの気流の動きが読み取れ、特にダウンバーストのような急激な下降気流が発生した時には、空港を離着陸する機体に対して、注意喚起することで航空機の安全性が向上しました。
ドップラーレーダーのレーダーサイトに観測物が近づいてくると、反射の波が短くなり、逆に遠ざかっていくと、反射波が長くなる傾向があります。
この波長の長さを比べることにより、対象物はどちらの方向に進んでいるのか判断することができます。
また、ドップラーレーダー2台で観測すると、2次元的に対象物を捉えることができるようになります。
これを、「デュアル•ドップラー•レーダー観測」と言います。
派生型
ドップラーレーダーは地上に置いておくだけのものではなくなりました。
現在多くの旅客機には、レーダーが搭載されています。
この機上レーダーも空港にあるドップラーレーダーと仕組みは同じで、航空機の前方に対して電波を発射し、空気中の水分の反射を感知して雲の高さや範囲をコックピットのディスプレイに表示してくれます。
あまりにも強い上昇流があるところを避けて飛ぶことにより、機体はより揺れなくなり安全に飛行することができます。
特に雲中飛行で外が見えない状況の時や、月明かりがない夜間飛行で雲が全く見えない時に役立ちます。
さらに、自衛隊でも活躍しており、空気の流れだけではなく敵の機体を探知するためにも使われ、現在戦闘機や哨戒機にも取り付けられています。
注意点
1点目の注意点として、ドップラーレーダーは雨や降水がないと反射がなく、全くわからない事です。
天気が悪く雨や雲など空気中に十分な水分が漂っていればいいですが、雲ひとつないカラッとした日には注意が必要です。
2点目は、航空機に取り付けられたレーダーは、低高度飛行中にあまり下の方にレーダーを照射すると、地面や海面からの照り返しを画面に表示してしまう事です。
マイクロバーストなどの危険が察知されたエリアの情報が、地面からの照り返しの影響を受けたものなのか、実際の雨雲の反射なのか区別がつかなくなってしまいます。
なので、降下中で機首が下がっている時や、低高度飛行の時は特にレーダーのティルト(照射角度)を調整してあげる必要があります。
低層ウィンドシアーと航空機事故
航空機は空港へ離着陸する際がとても危険です。
なぜなら離着陸時には地面が近く、低速で飛行しています。
急な風向風速の変化により地面近くで失速してしまっては、機体を立て直す為の高度や時間的猶予がありません。
最悪地面に叩きつけられてしまう事もあります。
実際に、1975年にアメリカのジョン•F•ケネディ国際空港でイースタン航空66便の着陸失敗事故が、アプローチ中に遭遇したダウンバーストによるものであるとされています。
このような、急な風向風速の変化を総称して「ウィンドシアー」と呼んでいます。
また、約1,600ft (500m)より低い高度のものを「低層ウィンドシアー」と分類されています。
マイクロバースト
外を歩いている時などに雷雲が近づいて来て、ひんやりとした風を受けた経験はないでしょうか?
雷雲などの下では、上空からの冷たい氷や雨、空気などが降下してきます。
この冷たい空気が降りてきて、地面に叩きつけられます。
地面に叩きつけられた空気は、四方八方に発散されます。
この現象を「マイクロバースト」と呼びます。
マイクロバーストは局地的に引き起こり、長時間は続きませんが、もしたまたまでも航空機がマイクロバーストに出くわしてしまうととても危険です。
アプローチ中にマイクロバーストに出くわしたケースを見てみると、初めは向かい風が増してきて、通常のアプローチパスより高いところに持ち上げられてしまいます。
スラストをカットするなどして、なんとか通常のアプローチパスに乗せても、マイクロバーストの真下に入ると、下降気流により今度は急激にパスの下側に押し出されてしまいます。
そして、マイクロバーストを通過すると、向かい風から追い風になるため、失速速度に一気に近づいてしまいます。
地面が近いので機首を下げて増速する事もできませんし、エンジン出力を増しても対気速度の増加までの猶予が短すぎ、最悪失速し地面に叩きつけられてしまう可能性もあるのです。
最悪の事態に陥らせないためにも、空港に設置されているドップラーレーダーでアプローチ経路上のマイクロバーストを監視し、パイロットに即座に報告したり、航空機に搭載されているレーダーで前方をスキャンし、マイクロバーストの兆候が出たら、すぐにGo Around操作を行い、飛行コースを変えたりすぐに上昇を開始し、高度を獲得して危険なエリアから即座に脱出することができるようになりました。
空港のドップラーレーダー
気象官署にあるドップラーレーダーは、設置地点から約150kmの範囲を監視してくれています。
また、空港に設置されたドップラーレーダーの有効範囲は約120kmとなっているようです。
ドップラーレーダーの仕様はほぼ同じで、大きく3つに分けられます。
- 低PRF観測:反射強度のみ観測可能。
- 範囲:400km
- 中PRF観測:電波の折り返し速度が低下するが速度観測が可能
- 範囲:250km
- 高PRF観測:強度と速度が観測可能
- 範囲:150km
これら3つのタイプを必要に応じて組み合わせて、空港ドップラーレーダーは運用されています。
ちなみに、ドップラーレーダーの「RADAR」は、「RAdio Detection And Ranging」のことだそうです。
【参考文献】
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