【Fixed-Pitchプロペラ】は車でいうところのオートマ車?
ラジコンやゴム動力飛行機などに取り付けられているプロペラを想像すると、プロペラはただ回るだけだと思いませんか?
しかし、プロペラには2種類あり、角度が固定のものと、パイロットが角度を調節することができるものがあります。
それぞれを、「Fixed-Pitchプロペラ」と「Adjustable-Pitchプロペラ」と呼びます。
今回は、パイロットがプロペラの角度を変更できない方の「Fixed-Pitchプロペラ」のメリットやデメリットをみていきましょう。
メリット
このタイプのプロペラの魅力は、「軽量」「単純」「低額」です。
「Adjustable-Pitchプロペラ」と比べて、ブレードの角度が決められているので、変更ができません。
逆に、ブレード角度を変更する機能やシステムを取り付けずに済むので、その分軽量化できます。
さらに、複雑なシステムが必要ない分、メンテナンスコストや導入コストが低く抑えられます。
また、パイロットもプロペラのピッチを変更する手間がなくなるので、その分タスクが減るです。
デメリット
ブレードの角度が決まってしまっているので、決められた「対気速度」「RPM」のときにしか、最大のパフォーマンスを発揮することができません。
プロペラの種類
製造会社がつけるブレードの角度は2通りあります:
- 上昇に最適な角度(Climbプロペラ)
- クルーズ飛行に最適な角度(Cruiseプロペラ)
です。どちらのプロペラの角度を持ったFixed-Pitchプロペラなのかによって、得意分野が違います。
Climbプロペラ
Climbプロペラは、マニュアルの車でいうところの「1速」や「2速」など、走りだしで大きな力が必要とするよに、離陸や上昇など力が必要なときに重宝するセッティングです。
プロペラのピッチ角度が低めに設定してあるので、上昇性能が良くなったり、プロペラの抵抗が小さくなるというメリットがあります。
より高速回転しているときに、プロペラの抵抗が少なくなる傾向があります。
しかし、クルーズ飛行のように大きな力を必要としない場面では、パフォーマンスの低下が発生します。
飛行距離が短距離で、離着陸を頻繁に行うような機体や、重たいものを運ぶ機体に向いているプロペラと言えるでしょう。
Cruiseプロペラ
プロペラのピッチの角度が高めに設定されているので、Climbプロペラと比べてプロペラの抵抗が大きくなります。
低速回転時、より抵抗が大きくなり持ち前のパワーを発揮することができません。
マニュアルの車でいうところの、「5速」や「6速」なので走り出しは苦手ですが、トップスピードに乗ってくると力を発揮することができます。
Cuiseプロペラは、離陸や上昇には向いていませんが、効率よくクルーズ飛行することができます。
なので、長距離飛行をする機体に向いていると言えるでしょう。
エンジンrpmとプロペラrpm
プロペラは通常シャフトに取り付けられ、そのシャフトはエンジンのクランクシャフトから延長され取り付けられています。
なので、クランクシャフトのrpmがプロペラのrpmと一致します。
一部のプロペラでは、プロペラのシャフトとクランクシャフトの間に、ギアボックスをかませることで回転数をコントロールしているものがあります。
なので、エンジンの回転数とプロペラの回転数に違いが出てきます。
ターボプロップエンジンなどに多く採用されていますが、セスナのようなレシプロエンジン機にはあまり採用されていません。
タコメーターの見方
Fixed-Pitchプロペラでは、タコメーターがエンジンのパワーを表示しています。
上図のように、機体に取り付けられているタコメーターは1桁から2桁で表示されています。
これに100をかけた数字が、本当のrpm数になります。
なので、24を白い針がさしていたのであれば、2,400rpm(24×100)であることがわかります。
ギアボックスがついていないタイプだと、エンジン回転数=プロペラの回転数になります。
通常使用されるrpmレンジは、上図の20〜27のように、緑色に塗られています。
いくつかのタコメーターには、エンジンやプロペラのリミテーション速度が赤色で示されています。
RPMのコントロール
「エンジンの回転数」や「タコメーター」「プロペラの回転数」を調整するのが、スロットルです。
スロットルによって、燃料と空気の混合物をどのぐらいシリンダーに送るか決定しています。
スロットルを前に出せば、より多くの燃料と空気がエンジンに送られ、エンジン回転数が上がり、その結果より多くのパワーを出力します。
タコメーターの値は、高度変化により影響されます。
例えば、地上での2,300rpmと、上空5,000ftでの2,300rpmは違うアウトプットの量です。
上空5,000ftの2,300rpmの方がパワーが減っています。
これは、上空に行けば行くほど空気圧が低くなるためです。
エンジンやプロペラの出力は、空気圧に大きく影響を受けます。
空気圧が高いほど、パワーを発揮しやすいのです。
なので、上空に行くほどスロットルをより前に(フルスロットル側)押し出してあげないと、気圧により生じた出力低下を補ってあげることができません。
まとめ
セスナ172モデルのように、初期の訓練で使用される機体に多く採用されているのが、Fixed-Pitchプロペラです。
車の運転でも、マニュアル車よりもオートマ車の方が運転が楽だと思います。
なので、初めの慣れないうちはエンジンのパワーセッティングで精一杯になってしまい、プロペラの角度を調整するのは難しいかもしれません。
また、初期訓練では離着陸の訓練を行うことが多くなります。
ほとんどクルーズ飛行もしないので、Fixed-Pitchプロペラを採用し、Climbプロペラを取り付けることで、訓練生などの負担を下げることができるのではないでしょうか。
【参考文献】
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