【グライドスロープ③】擬似グライドスロープとは?回避方法は?
擬似グライドスロープとは?
航空機は通常「3°」のパスで降下してきますが、擬似グライドスロープという罠がグライドスロープには存在します。
擬似グライドスロープは、「9°」「15°」「21°」のように、グライドパスの角度の奇数倍の角度に存在します。(上記赤色)
奇数倍の角度でも特に「15°」のパスに乗ってしまった時は、コックピットの計器上の表示は、通常と同じなので一番気がつきにくいです。
「9°」と「21°」のパスに誤って乗っかってしまった時は、コックピットの計器の表示が通常と逆になるので比較的気がつきやすいのです。
擬似グライドスロープ上にいる時も、コックピットの計器ではグライドスロープに乗っていると表示してしまいます。
天気が悪く外が見えない場合など、3度で降下しているつもりが9°で降下してしまう事があり得ます。
また、「6°」「12°」「18°」など、グライドスロープの偶数倍の角度では、グライドパスの表示がされない帯もあります。(上記青色)
擬似グライドスロープを回避するには?
【低高度からインターセプトする】
上記の通り、擬似グライドスロープは3°のパスよりも上にあります。
なので、3°のパスに乗る前に、あらかじめ3°のパスよりも低く飛んでおくと、擬似グライドスロープにぶつかる可能性は無くなります。
【距離と高度を確認する】
アプローチチャートには、FAF:Final Approach Fixが何マイルの地点にあり、何ftの高さか記載があります。
実際に航空機で、この点を通過するときに、距離と高度を確認すると本当に3°のパスに乗れたか確認する事ができます。
これを「DME – Height Check」といいます。
これを確認するのは、PM:Pilot Monitoringの業務の一部です。
気温補正
アプローチチャートなどに記載されている高度は「MSL:Mean Seal Level(真高度=True Altitude)」で記載されています。
しかし、飛行機は実際には「計器高度(気圧高度)」(Indicated Altitude)で飛行しています。
「真高度」と「気圧高度」の差は気温で変化してしまいます。
冬季の運航など、気温が低くなると、航空機は実際にチャートに記載された高度よりも低い高度を飛行することになります。
巡航のように高い高度を飛行している時は問題ないですが、離陸直後にレベルオフをするときや、アプローチの時など地面に近い所で飛行しなければいけない時は、チャートに記載されている高度よりも低くなってしまうと、安全のマージンが減ってしまいます。
なので、寒い時は高度補正をしてあげる必要があるのです。
「真高度」と「計器高度」の差が発生するその割合は、標準大気(15℃)より10℃低下する毎に、約4%低くなります。
EGPWSとグライドスロープ
多くの旅客機にはEGPWS(対地警報装置)が取り付けられています。
これは、CFITを防止するために機械的に、地上と機体の距離が異常に近きすぎないように、監視・警報してくれるシステムです。
EGPWSの発動条件はいくつかありますが、グライドスロープから大きく外れてアプローチする事は、その発動条件の一つです。
「Glide Slope」と音声で知らせてくれるのと、「警報ライト」でパイロットに知らせてくれます。
【参考文献】
- AIM-J 131
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