【緊急事態】飛行中の急減圧(Decompression)
飛行機は36,000(11km)~40,000ft(12km)ぐらいの高いところを飛んでいます。この高さでは、酸素が薄すぎて誰も呼吸ができなくなるので、エンジンから圧縮空気を機内に取り込んでいます。
機内の気圧は、大体6,000ft(1.8km) ~ 8,000ft(2.4km) 程度の気圧と同じぐらいにセットされています。
なので、上空での飛行機は周りの大気圧よりも圧力が高くなっている、まるで風船のようなものなのです。
しかし、何かの原因でこの風船に穴が空いてしまってはどうでしょうか?
もしくは、トラブルでエンジンから空気が機内に送られずに、空気が抜ける一方になってしまったらどうなってしまうのでしょうか?
だんだんと空気が抜けていき、最終的には誰も息ができなくなってしまいます。
どのぐらいの速度で空気が抜けていくかは、空気が抜ける穴次第で決まります。
緊急減圧の種類
緊急減圧には3種類あります。それぞれ、爆発型減圧、突然型減圧、段階型減圧です。それぞれ空気が抜ける速さで分けられています。
では、それぞれを見ていきましょう。
1. 爆発型減圧 (Explosive Decompression):
爆発型減圧は、この3つの中で一番空気が抜ける速度が速いものです。
名前の通り、爆発的に空気が抜けていってしまい、1秒未満の間に空気が機体から抜けてしまうことを指します。
あまりにも早く空気の圧力が変わってしまうので、肺から空気が抜けるのが間に合わず、内臓にダメージを与えてしまいます。
約0.2秒未満という速さで空気が抜けてしまったら、肺が損傷すると言われております。
最悪死に至るもので、機体も爆弾などで大きな穴が開けられたり、ドアが吹き飛んだりと大きな損傷を受けていることが多いです。
唯一の対応策は、酸素吸引をして、安全な高度まで緊急降下させることです。
パイロットは高い障害物がなければ、とりあえず10,000ftを目指します。
いち早く高度を下げて機内の圧力を高めないと、乗客が使用する酸素が15分程度しかもたないからです。
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2. 突然型減圧 (Rapid Decompression):
突然型減圧とは、1秒以上10秒未満の間に減圧される現象を指します。
爆発型よりも時間がかかることがわかります。
ドアのパッキンに隙間があったり、窓枠の変形などが考えられます。また、与圧システムの故障も考えられるでしょう。
発生時にはコルクが抜けるような音がすると言われております。機内と機外の気圧の差があるので、気圧が同じになるまで空気が抜ける箇所に人や物が吸い込まれる力がかかります。
気圧が急に低下すると、室内の気温が下がります。これによって、機内に霧が発生し肌寒く感じます。
また、上空ではマイナス40~50℃ほどなので、機内の温度はどんどん下がります。
さらに、コーヒーなどストックしているギャレーが急に沸騰し始めます。これも気圧が低い所の方が、沸点が低くなるので100℃に達していなくても沸騰するためです。
3. 段階型減圧:
これは、名前の通り段々と減圧していくことを示します。他の2つと比べて減圧に時間がかかるので、対処する時間を稼ぐことができます。
しかし、機内の警報装置などが故障していて気がつかない時が恐ろしいです。
減圧によって低酸素症が発症します。これは、ほとんどの場合気がつくことがありません。なので、だんだんと眠りに落ちていってしまい、最終的には死に至るのです。
人への影響
急減圧が起きると人への影響は2点考えられます。
- 減圧症
- 低酸素症
まず、1つ目の減圧症になると、血中などにあった窒素が気化して、関節などの節々に集まります。
これが、激痛を走らせます。また、気圧が低くなるので腸の中のガスや、胃袋内の空気が膨張して痛みを生じさせることがあります。
さらに、耳の中の空気も膨張して、内耳などにも痛みを与えることがあります。
2つ目の低酸素症は、体の細胞に酸素がうまく行き渡らなくなってしまう現象のことです。
人は酸素が吸えなくなると、息を止めていると数分と持たないように、気絶してしまうでしょう。
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まとめ
このように、飛行機は空の高いところを飛ぶようになりました。
そのほうが、燃費も良くより早く目的地に着けるメリットがあるからです。
多くの人間は、大気という気圧の一番高い海面付近で過ごしています。まるで、深海魚のようなものです。
そんな、深海魚は海の浅いところでは住めないように、人間は気圧の低いところでは住めないのです。
体がついていかないので、機内の気圧を高めたり、気圧を高めることができるスーツを着ないといけないのです。
機内でより快適に過ごすために、技術は進歩し現在の最新鋭の飛行機の気圧は6,000ft程度にまで下げられております。
上空で気圧差が高くなったと言えるでしょう。なので、風船ならばより外側の膜に圧力がかかって、パンパンの状態です。
これが弾けると、中の人へのダメージがどうなるかは恐ろしいです。
このようなことが起きないように、普段から飛行機をしっかりと整備したり、もし急減圧が起こってしまって、安全に素早く高度を下ろす訓練をパイロットはしているのです。