【飛行機のエンジン】タービンエンジンを4つに分類できますか?

エクリプス 500(マイクロジェット)

「タービンエンジン」または「ガスタービンエンジン」は、タービンを利用し空気を圧縮し、燃焼により発生させた高温のガスを後方に送り出し、「推進力」や「動力」を得る内燃機関のことを指します。

タービンエンジンがエネルギーを作り出すために、以下のとおり5つ部位で構成されています。

①吸気部
②圧縮部(コンプレッサー)
③燃焼室
④タービン部
⑤排気部

エンジンを通過する空気の流量を増加させることで推進力が生み出されます。

タービンエンジンは、回転運動でエネルギーを取り出し続けますので、ピストンが前後(上下)に行ったり来たりする「ピストンエンジン」よりも滑らかな動作が特徴的です。また、ピストンエンジンと比べ重量はありますが、出力重量比でみると、タービンエンジンの方が上です。

タービンエンジンは、より「小型化」「軽量化」「高出力化」「高燃費化」を目指し、多くの製造メーカーがしのぎを削っています。これにより、上記写真のように3~7人乗りをターゲットとした「VLJ(Very Light Jets)」又は「マイクロジェット」と呼ばれる機体が生み出されております。

大きいものから小さいものまであるタービンエンジンですが、「使用する圧縮機(コンプレッサー)の種類」「外から取り込まれた空気がエンジン内で通過する経路」「動力がどのように生み出されるか」によって、以下の4種類に分類することが出来ます。

①ターボジェットエンジン
②ターボプロップエンジン
③ターボファンエンジン
④ターボシャフトエンジン

①ターボジェットエンジン

ターボジェットエンジンは、「圧縮部」「燃焼室」「タービン部」「排気部」の4つのセクションで構成されています。この構造は、以下3つのタービンエンジンにも共通するものです。

圧縮部は、取り入れられた空気を高速で燃焼室に送ります。燃焼室には、燃料の噴射装置と点火装置があり、圧縮部から勢いよく送られてきた空気と燃料を混ぜ合わせ燃焼が行われます。

燃焼により膨張した空気がタービンを駆動し、タービンはシャフトで圧縮機に接続されています。これにより、膨張し加速した空気が排気される際にタービンを回し、結果コンプレッサーに取り付けられたタービンがシャフトを介しより高速回転を始めるため、より多くの空気を取り込むことが出来るようになります。

そして、排気部を介し高速でガスを排出することで推力を生み出します。これは、

吸気 ≫ 圧縮 ≫ 燃焼 ≫ 排気

の基本的なエンジンサイクルと同じです(ピストンエンジンも同様)。

排気部から排出されるガスの速度がとても速いので、高速飛行に適しています。なので、戦闘機(軍用機)などにはターボジェットエンジンが採用されています。しかし、「排出されるガス」と「周囲の空気」との速度差がありすぎ、爆音を放ちます。

更に「航続距離」や「耐久性」に制限があり、採算を重視する旅客機にはほとんど採用されていません。また、圧縮機の回転速度が遅いときには、スロットル(スラスト)の操作に対して反応が鈍くなる傾向があります。

②ターボプロップエンジン

「ターボプロップエンジン」は、「①ターボジェットエンジン」に取り付けられた「減速ギア」を介して「プロペラ」を駆動するタービンエンジンです。「排気部のタービン」「圧縮部のタービン」「減速ギア」がシャフトで接続されています。

プロペラの回転速度は、タービンの回転速度よりはるかに遅いので、減速ギアを必要とします。もし、プロペラをタービンと同じ速度で回してしまうと、以下のような問題が起こります

①プロペラの先端が音速を超え、プロペラが失速を起こし、推力を生み出せない
②ショックウェーブなどの影響により、振動を誘発し、最悪エンジンが破損してしまう

ターボプロップエンジンは、時速217kts〜347kts(250〜400マイル|402km/h〜643km/h)、高度18,000〜30,000ft(5,486m〜9,144m)で最も効率的に動作します。

また、離着陸時の低速飛行時にも良好なパフォーマンスを発揮し、燃料効率も良いのが特徴です。ターボプロップエンジンの最小比燃料消費率は、通常、高度25,000フィートから対流圏上限までの範囲で得られることが多いです。

≫参考:【対流】大気循環:パイロットのための基礎知識

一般的な旅客機に多く採用されてい「③ターボファンエンジン」と比べると、巡航高度が低くなるので、「積乱雲(CB)」や「塔状積雲(TC)」などの背の高い雲の上を超えることが出来ないなどの理由から迂回や欠航が増えてしまいます。

≫参考:【10種雲形】10種類の雲の種類とその特徴

また、燃費は良いですが巡航速度が比較的遅いので、長距離移動の際、より多くの時間を要してしまうところがマイナス要素としてとらえられています。

③ターボファンエンジン

ターボファンエンジンは、「①ターボジェットエンジン」と「②ターボプロップエンジン」の優れた特徴をいくつか組み合わせ開発されました。ターボファンエンジンは、「燃焼室へと向かう気流(コア側)」と「迂回する気流(ファン側)」に分け、副次的な推力を生み出すように設計されています。

これが「バイパスエンジン」と呼ばれる理由です。ターボファンのバイパス比は、「燃焼室へと向かう空気の質量」と「迂回する空気の質量」の比率を示します。

ちなみに、ボーイング737MAXに取り付けられている「LEAP-1B」というエンジンのバイパス比は「9.0」です。(ファンにバイパスされる空気量の方が多い状態)

ターボファンエンジンの迂回気流は、以下のような恩恵を与えてくれます。

①推力を増大させる
②エンジンを冷却する
③排気騒音の抑制をする

これらにより、「①ターボジェットエンジン」のような「巡航速度」と「②ターボプロップエンジン」のような「低燃費」が実現されます。

④ターボシャフトエンジン

ターボシャフトエンジンは、タービンエンジンから抽出した回転力をシャフトを介してプロペラ以外の何かを駆動するために利用されます。動力でプロペラを回転させるのが「②ターボプロップエンジン」でしたので、それとは区別されています。

ターボシャフトエンジンで作り出された膨張したガスは、推力を生み出すために利用されるのではなく、大部分がタービンの回転の為に回収されます。

ターボシャフトエンジンは、「ヘリコプター」や旅客機の「補助動力装置(APU:Auxiliary Power Unit)」として広く使用されています。

APUは、飛行機の一番後ろに取り付けられている補助エンジンで、その目的は「推力」ではなく「機内のエアコン」や「電源」のために利用されています。また、「メインエンジンを点火する際の動力源」としても使用されています。

ちなみに、コンプレッサーの種類で分類

タービンエンジンは、どんなコンプレッサーを使用するかによって3つに分類する事が出来ます。

①Centrifugal Flow:吸気された空気をエンジンの外側(回転軸を中心に外側)へと押し、圧縮するタイプ
②Axial Flow:エンジン内に回転するブレードと、回転しないブレードがあり、それらにより圧縮するタイプ
③Centrifugal-axial Flow:上記の両方を備えたタイプ

Centrifugal = 「遠心」 Axial = 「軸の」

まとめ

タービンエンジンの分類を見てきました。

エンジンによって生み出されたエネルギーの使い道がそれぞれ違っており、それぞれのメリットとデメリットもあるようです。

今度飛行機に乗る時に、どのタイプのエンジンなのか分類する事ができるようになりましたね。

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