【COSPAS-SARSAT】コスパスサーサットシステムとは?

コスパス・サーサットシステム 出典:法務省

【COSPAS-SARSAT】コスパス•サーサットシステムとは?

コスパスはロシア語で、サーサットは英語が由来です。

  • COSPAS:Cosmicheskaya Systyema Poiska Aariynyich Sudov (衛星による遭難船捜索システム)
  • SARSAT:Search and Rescue Satellite Aided Tracking

もしも航空機に何かあった時、捜索救難活動に役にたつシステムがコスパス•サーサットシステムです。

わざわざパイロットが遭難信号を発信して、現在地の情報を伝えなくても、人工衛星を使って、地球上のどこで遭難信号が発信されているのか発見し、すぐさまその場所に向かうことが可能です。

406MHzの電波を人工衛星に向け発射し、その電波が中継され各国に遭難している船の国籍や船名が提供され、受信次第捜索救難活動にあたります。

日本の場合は、海上保安庁中継されることになっています。

国際的に利用されており、現在のところ40カ国が加盟しており、国際的に政府機関によって運用されています。

搭載されているもの

コスパス•サーサットシステムは、飛行機だけでなく、船舶や地上からもこのシステムを利用することができます。

そして、救難信号の発信機が少し違い、呼び方が違いますが、機能や目的は同じです。

  • 航空機:ELT:Emergency Locator Transmitter(航空機用救命無線機)
  • 船舶:EPIRB:Emergency Position Indication Radio Beacon(非常用位置指示無線標識)
  • 陸上:PLB:Personal Locator Beacon(救命用携帯無線機)

発信周波数

【121.5MHz】

  • 連続波で、デジタル化された情報は含まない
  • 121.5MHzの処理は2009年2月1日に停止された

【243MHz】

  • 海外の軍隊が使用していた周波数
  • 連続波で、デジタル化された情報は含まれない
  • 衛星による処理は2009年2月1日で停止された。

【406MHz】

  • 船舶用としてEPIRBが主に使用していた周波数
  • 発信はデジタル化され、固有ID情報や位置情報も発射される
  • 約50秒に一度電波を発射

406MHzのデジタル信号に含まれるもの

  • ビーコンの種類(ELT, EPIRB, PLBかなど)
  • 国番号:ITU(国際電気通信連合)が定める3桁の番号で、日本は431か432が割り当てられている。
  • ID情報:個体の識別
  • 位置情報:エンコード位置※1
※1エンコード位置:ビーコンにGPS測位システムが内蔵されているモデルのみ発信可能で、そのGPSが発信する位置情報のこと。

使用している衛星システム

【LEOSAR(低軌道衛星システム)】

  • 高度:約1,000km
  • コスパス衛星(ロシア)2機
  • サーサット衛星(アメリカ、フランス、カナダ)4機
    ※ サーサット衛星は、NOAA(米国海洋大気庁)の多目的衛星で、気象衛星としても使われている。
  • 遭難機の検出方法:ビーコンからの電波のドップラー効果を測定し、ビーコンの位置を計算する。(SARRとSARPがある)
  • 長所:
    • GPS等が内蔵されていないビーコンの位置も計算できる
    • 全地球上で測位可能
  • 短所:
    • 衛星の位置次第で、電波到達範囲に飛来してくるまで、最大2時間近くかかることがある

【MEOSAR(中軌道衛星システム)】

  • 高度:約20,000km
  • GPS衛星(アメリカ)24機
  • ガリレオ衛星(EU)27機
  • グローナス衛星(ロシア)24機
  • 遭難機の検出方法1:TDOA:Time Difference of Arrival法 – それぞれ違う4つの人工衛星に到達する、ビーコンからの電波の到達時間差を測定する。
  • 遭難機の検出方法2:FDOA:Frequency Difference of Arrival – それぞれ違う4つの人工衛星に到達する、ビーコンからの電波の周波数の差を測定する。
  • 長所:
    • GPS等が内蔵されていないビーコンの位置も計算できる
    • 全地球上で測位可能
    • 衛星が常に上空にあるので、すぐにデータが各国に伝達される
    • 地上からビーコンへ簡単なメッセージ送信ができる
  • 短所:
    • 特になし

【GEOSAR(静止軌道衛星システム)】

  • 高度:約36,000km
  • GOES衛星(アメリカ)3機
  • MSG衛星(EU)1機
  • INSAT衛星(インド)1機
  • 遭難機の検出方法:エンコード位置を衛星が中継する
  • 長所:
    • 衛星が常に上空にあるので、すぐにデータが各国に伝達される(北極と南極を除く)
  • 短所:
    • ビーコンにGPSが内蔵されていなければ使えない
    • 北極と南極では使えない

遭難信号の中継の流れ

1.ELT、EPIRB、PLBが「406MHz帯」の電波を発射

2. 低軌道衛星システム(LEOSAR)が受信(電波のドップラー効果を計測し、発信された位置の緯度・経度を計算)

3. 同時に、静止軌道衛星システム(GEOSAR)が受信(位置情報を受信)

 

4. 遭難信号地上受信局(LUT:Local User Terminal(日本では、群馬に設置))がデータを分析して配信

 

5. 業務管理センター(MCC:Mission Control Center(日本では、霞ヶ関の海上保安庁本庁に設置))がデータを分析して配信

6. 救難調整本部(RCC:Rescue Coordination Center(日本では、管区海上保安本部又は羽田RCC))が救助活動を調整

【参考文献】

  • 法務省:コラムvol.23 命を救う電波
2005a01all

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