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【生理学】パイロットの疲労とパフォーマンスの関係について④

【生理学】パイロットの疲労とパフォーマンスの関係について④

前回ご紹介した通り、多くのパイロットはシフトワークで疲れが蓄積されていきます。

各国の航空局もパイロットの労働時間を制限するなどして、パイロットの疲労の蓄積を防ごうとしています。

10時間の労働時間の始まりが8:00からなのか、22:00からなのかによって前日の睡眠時間が変わってきます。

サーカディアン・リズムとの関係もあり、前者であれば、多くの人は問題なく8時間睡眠をとることができますが、後者であればあまり早い時間に寝付けない人が多いです。

睡眠障害になる前に、睡眠負債を処理してあげないとリカバリーが大変です。

通常8時間睡眠で人間の疲労はリカバリーができると言われているので、8時間以上寝る必要があります。

例えば、1週間で合計8時間睡眠負債を抱えたからといって、1日で通常必要な8時間と足りない8時間を足して、16時間寝ればいいかというと、そう簡単には行きません。

最低でも1日9時間以上睡眠をとってあげるようにして、それを何日間か続けなければいけないのです。

何日で完全に睡眠負債を払拭できるかどうかは、個人差があります。

1日9時間以上の睡眠を確保するには、パイロットだけの力ではなくスケジューラーや会社の協力も必要不可欠です。

「眠気」を解消するには、睡眠をとることが一番の解決策です。

もし、長時間勤務を割り当てられていたり、眠気を感じたら昼寝をすると効果的です。

25〜30分の短い仮眠でも、パフォーマンスと活力の回復が見込めます。

なので、長距離線のパイロットは3人制を導入したり、海外の航空会社ではパイロットがコックピットで短期的な睡眠をとることを認めている会社もあります。

まだ、アメリカ(FAA)や日本(JCAB)の航空局は座席での昼寝(In-seat cockpit naps)を認めていないのが残念なところです。

通常、人は起床してから18〜20時間経つとパフォーマンスと気力が低下してしまいます。

しかし、アメリカの事故調査委員会(NTSB)によると、シフトワーカーでは勤務後8〜9時間後にミスや事故が多く発生する傾向にあるそうです。

勤務時間は法的にも決められいるので、極端に労働時間が長くなることはないでしょう。

しかし、その人が働き始める時間によって、睡眠時間や仕事を完了させるまでに起床してからどのぐらい時間が経ったかはまちまちです。

もし、長時間勤務が組まれているのであれば、いくつかの仕事のフェーズで、仮眠を取るなどの休憩がシフトワーカーには必要だと言えるでしょう。

国際線を運航している機体では、仮眠室が設けられたりして、着陸を行う予定のパイロットの起床してからの時間を18時間以上にしないようにする努力が必要です。

この場合、TakeoffやLandingなどの比較的プレッシャーのかかる状況を担当するクルーが、いつ仮眠を取るか、スケジューリングがとても大事です。

NASAの研究では、仮眠に大切なことは、仮眠場所の「気温」「音」「明るさ」だそうです。
また、実際に仮眠をとっているパイロットに対する調査では、仮眠室がより「個人的な空間」でブランケットなどがあれば、仮眠がより良いものになると答えています。

上空での仮眠や休憩時間は、6時間以上はあまり効果がないそうです。

仮に休憩時間を6時間以上とったしても、6時間を超えた分の時間を有効活用できる人が少ないと結果が出ています。

また、仮眠時間を6時間与えられたら、6時間丸々睡眠を取れる人はいないでしょう。

多くの人は5時間の休憩時間を与えられた時、仮眠に当てられた時間は3時間だそうです。

7時間与えられた人は、3時間25分の睡眠をとったそうです。

5時間の人と比べて、25分しか伸びていないのがわかると思います。

また、休憩時間を8時間いっぺんにもらうよりも、3〜4時間を2回に分けた方が、効果的な休憩を取れることも分かっています。

 

【仮眠を取る上での注意点】

  • フライト中の仮眠を取るタイミング(着陸などクリティカルフェーズとの時間間隔)
  • サーカディアン・リズムを考慮しての仮眠を取るタイミング
  • 仮眠室の近くにトイレなどがあり、余計な心配せずにすぐに利用できること
  • コックピットのシートに座っている時間
  • 「快適性」「振動」「タービュランス」「音」などは、睡眠を妨害しがち
  • 休憩服への着替えや仕事服への着替えの時間
  • 仮眠後の頭や体の目覚め時間

たった5分の休憩を挟むことでも、全体の生産性を上げてくれ、同時に体の疲労度が下がります。

54〜64時間連続で起きている人に行った実験では、5〜20分の休憩を与えただけでも、「パフォーマンス」「活力」「疲労」「気分」全において、全く休憩を取らなかった人と比べて高い結果が出ました。

注意点:休憩の効果は全ての研究で証明されたものではありません。

光とサーカディアン・リズムの関係性も研究されており、正しい光量を正しいタイミングで人間に当てると、人間のサーカディアン・リズムを変化させることが分かってきました。

この技術が確立されれば、コックピットのライティング調整で、パイロットの睡眠をコントロールすることが可能になるでしょう。

またこの光は、強い光である必要はなく、通常の部屋の中の明かり(100-200 lux)ぐらいでも、サーカディアン・リズムを変化させることは可能であるそうです。

更に、眠気対策といえば、カフェインの摂取ではないでしょうか?

「コーヒー」「お茶」「ソーダ類」などに多く入っているカフェインですが、体内に取り込まれた後、約15〜30分で血管に取り込まれ、徐々に効き始め、最高5時間程度までその効果は持続します。

慢性的に摂取していると、「胃腸の問題」や「血圧上昇」の症状が現れる人もいます。

また、カフェインの影響は個人差があり、どのぐらいの量を摂取すればパフォーマンスに影響が出てくるかは、人によってまちまちです。

実際にカフェインの力を試すのであれば、フライト中ではなく地上の生活で1回行うといいでしょう。

 

【参考文献】

【次回】

次回は、NASAがパイロットを対象に行ったインタビューで、実際にどのぐらいの人がフライト中に「ウトウト」してしまうことがあると答えたか知っていますか?

また、過去に疲労が原因で起きてしまった事故を見ていきたいと思います。

【過去の記事】

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