【防除氷装置の分類】Anti-Icing & Deicing Systemについて
世の中には多くの、防除氷装置が存在します。
その中には、完全に氷を除去するものから、着氷エリアから航空機を脱出させるために時間稼ぎをしてくれるものもあります。
また、機械なので必要な時に作動しなかったり、エラーを引き起こす事があるので、完全に機械を信頼をして着氷エリアの飛行をするのは避けたほうがいいです。
もし、機械が故障した際にはどうするのか決め、「すぐに着氷状態から抜け出せるのか?」や「着氷しにくいエリアはどの方向なのか?」など、情報収集や分析が必要です。
世の中で一般的に使われている防除氷装置は、大きく分けて2つに分類する事ができます。
- Anti-Icer:着氷エリアに入る前に、スイッチを入れておき、着氷を未然に防ぐためのもの(できた氷を溶かしたり剥がしたりすることはできない)「キャブヒート」「プロップヒート」「ピトーヒート」「Fuelベントヒート」「ウィンドシールドヒート」など
- Deicer:氷がつき始めててか使用するもの。(氷の厚さが2cm以上になったら使う事など、規定があるものがあるので注意)
の2つです。
そして、それぞれ分岐しており、それぞれ見ていきましょう。
【Anti-Icer: Propeller】
プロペラも回転する翼のようなものなので、プロペラの回転方向の前面(Leading Edge)に氷が付きやすいです。
また、プロペラは先の方が薄くなっているので、根本よりも先の方が着氷しやすいです。
着氷をしてしまうと、高速回転するプロペラのバランスが悪くなり、大きな振動を生み出してしまいます。
プロペラのAnti-Icerは、電気で加熱しておくものや、防除氷液をプロペラに少しずつ垂れ流しておくものがあります。
【Anti-Icer: Wing: Weeping Wing System】
プロペラ同様、翼に無数の小さな穴を開けておき、そこからポンプで加圧された防除氷液を垂れ流し、氷がつかないように守ってくれる装置です。
飛行中にLeading Edgeから防除氷液を流すと、気流の影響で翼の後ろ側にまで流れていってくれるので、翼の多くの部分を防氷してくれます。
【Anti-Icer: Wing: Heating】
翼の中にパイプを通し、その中に加圧された暑い空気を通して、その熱で氷を溶かします。
翼の中には燃料が大量に入っているので、断線やショートで火花が出やすい電熱線などを使用しての加熱は敬遠されています。
【Anti-Icer: Windshield】
前方の視界が氷で塞がれている、着陸や安全運行に支障が出てしまします。
なので、ウィンドシールドも氷から守ってあげないといけません。
ウィンドシールドの防氷システム:
- 電熱線が組み込まれているタイプ
- 防除氷液が窓の下側から流れ出してくるもの
の2種類があります。
電熱線タイプだと、電気を流すと磁場が発生するので、マグネティックコンパスが近くにあると誤差を生み出してしまう可能性もあります。
また、多少ですが機内からのデフロスターを最大にすると、窓が加熱されごく一部だけ視界が良くなる可能性もあるでしょう。
【Anti-Icer: Cab Heat】
最近は減ってきてしまいましたが、キャブレターを使ったタイプのエンジンを使用している航空機は、キャブヒートが必需品でしょう。
キャブレター内で燃料内の水分が凍ってしまうと、燃料の安定供給ができなくなってしまいます。
また、エンジンへの空気の取り入れ口も氷で塞がってしまうと、最悪エンジンが停止してしまうので、防除氷装置を取り付けるか、代わりの氷辛い場所から空気を取り込めるように、バックアップ機能を搭載しているものが多いです。
【Deicer: Wing: Boots】
主翼のLeading Edgeにゴムを貼り付け、通常時はそれが翼にぴったりとくっついた状態で、閉じています。
しかし、着氷が進みパイロットがスイッチを作動させると、空気がゴムの中に入り、Bootsが膨らむ仕組みです。
これにより、氷が割られます。
使い終わったら、またBootsから空気が抜かれ、Leading Edgeに張り付きます。
デメリットは、空気を入れて膨らませるので、途中で穴が開いていると、そこから空気が漏れ膨らまなくなってしまう可能性がある事です。
また、ある一定以上氷がBootsの表面に蓄積されてからでないと、Bootsが膨らんでも、氷が割れてくれません。
氷が割れずに、Bootsと氷の間に隙間ができてしまうと、次にBootsを膨らませた時にも、氷を割る事ができなくなってしまいます。
どのぐらいになったらBootsのスイッチを入れたらいいのかは、使用する機材のPOHに記載されています。
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【参考文献】