【着氷3】着氷する場所とその影響と事故が起きやすいフェーズ
着氷の場所と飛行機のコントロール
着氷の場所によって、飛行機のパフォーマンスに影響が出ます。
例えば、エルロンは翼の先の方に取り付けられている事が多いです。
翼は、地上にいる時の根元の負担を考え、先細や先の方が薄い形状になっています。
なので、より薄い翼から着氷が進み、それが丁度エルロンの前方だと、乱気流が生み出されてしまい、不必要な振動を与えたり、エルロンの効きが悪くなったり、最悪操縦不可能にしてしまうこともあります。
ちなみに、このようにエルロンの効きが悪くなった時は、少し機首下げ(ピッチダウン)にしてあげると、エルロンに風が当たりコントロールが復活する事があります。
ピッチダウンするには、エレベーターで機首を下げるか、速度を増加させ迎角を小さくする方法があるでしょう。
あくまで応急処置なので、防除氷装置を使用して氷を取り除けるのであれば、取り除くのが一番です。
小型機の防除氷装置の役割
多くの旅客機は、着氷状態での飛行が認められていますが、セスナ172型機などの小型機は、コストや重さの関係で防除氷装置が取り付けられていないものがほとんどです。
そんな機体は、着氷が懸念されるエリアを飛行すると悲惨な結果が待ち受けているのが目に見えて分かるので、あらかじめブリーフィングなどでわかっている着氷状態のエリアでの飛行は、禁止されています。
防除氷装置にも種類があり、「翼」の氷を溶かしてくれるものから、「ピトー菅」「ウィンドシールド」「プロペラ」「Fuelベント」の氷を溶かすものまで、色々なタイプがあります。
翼の氷を取り除かない限り、失速からは逃れられません。
なので、翼の除氷装置以外は、着氷状態から抜け出すために使われる装置であると言えるでしょう。
「ピトー管」が氷により詰まってしまうと、飛行機の操縦がとても難しくなり、容易に失速してしまうので、小型機でも「ピトーヒート」だけは取り付けられている事が多いです。
どのぐらい着氷しても航空機は大丈夫かは、誰も知り得ません。
過去にそのような実験は行われておらず、翼に着氷しても生還した航空機もありますし、実際に墜落をしてしまった航空機もあります。
自分の人生をかけて、どの程度の着氷なら航空機は耐えられるのか実験するには、あまりにも危険すぎるでしょう。
着氷しやすいエリアに入らない事、入ってしまったらすぐにそこから出る事が大切です。
着氷状態で事故が起きやすいフェーズ
過去の統計によると、多くの航空機は「エンルート」と「アプローチ」中に着氷状態に遭遇して事故を引き起こしています。
特にアプローチ中は、速度も落としていきますし、何もしないとどんどん地面が近づいてしまい、安全マージンが小さくなっていってしまいます。
また、ウィンドシールドが凍り付いてしまうと、前方の視界が悪くなり、障害物を確認できなかったり、目視物標が確認できずに、計器飛行でも着陸ができなくなってしまうでしょう。
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【参考文献】