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【キャブレターヒート】使用の注意点と副作用について

【キャブレターヒート】使用の注意点と副作用について

前回、フロートタイプのキャブレターの最大の欠点は、キャブレターアイシングが引き起こることであるお話をしてきました。

【飛行機のエンジン】キャブレターアイシングの仕組み・影響・起こる環境

その、恐ろしいキャブレターアイシングから守ってくれる、キャブレターヒートについて今回見ていきましょう。

キャブレターヒート

上図は、キャブレターアイシングの図です。

この、気圧が低くなり気温が落ちるエリアを加熱して、氷点以上に保ってあげる事ができれば、キャブレターアイシングから避ける事ができます。

また、氷が一度できてしまっても溶かすことができますし、キャブレターヒートを使っていると、アイシングを予防することもできます。

注意点

【地上】
キャブレターヒートという素晴らしい装置があっても、壊れていては使えません。
必ず出発前のエンジンランナップで、キャブレターヒートの動作確認を行いましょう。

【Take-Off, Go Around】
キャブレターヒートを使うと、エンジンのパワーロスにつながります。
なので、「Take-off」や「Go Around」の時など、フルパワーが必要な時は使用を避けましょう。

【アプローチ】
特に降下中など、スロットルをアイドル近くにセッティングしている時は、エンジンが冷えやすくなり、その結果燃料を霧状にするのが難しくなります。
キャブレターアイシングの影響を受けやすい状態であると言えるでしょう。
あらかじめキャブレターアイシングが予想される状況や、少しでもキャブレターアイシングの兆候が現れたら、キャブレターヒートを最大にしておきましょう。
降下開始前などスロットルをアイドルにする前に、キャブレターヒートを最大にセットするとより効果的です。
また、降下中はキャブレターヒートを最大にしたままににしておきましょう。
アイドル状態での降下はエンジンを冷やし過ぎてしまうため、時々レベルフライトを入れるなど、エンジンを暖気するためにスロットルを足してあげましょう。
エンジンが冷え切ってしまうと、キャブレターヒートが十分に暖かくならず、着氷を予防することができなくなってしまいます。

また何よりも、キャブレターアイシングの兆候に、少しでも早く気が付くことはとても大切です。

キャブレターアイシングの兆候が出たら、中途半端にキャブレターヒートを使うのではなく、一度氷を全て取り除いてから、必要に応じてキャブレターヒートの温度調整をしてあげるといいでしょう。

キャブレターヒートの温度調整は、キャブレター空気温度計が取り付けられている機体は、それを参考にします。

キャブレター空気温度計

キャブレター空気温度計 出典:Aircraft Spruce & Specialty Co.

全ての機体ではありませんが、キャブレターヒートが搭載されている機体には、上写真のようなキャブレター空気温度計が取り付けられています。

この温度計に注目していると、キャブレターアイシングの引き起こしやすい状況を知ることができます。

多くのキャブレター空気温度計は、 –10°Cから +10°C (14°F から 50°F)まで黄色のアークがマーキングされております。

今飛行しているエリアの気温や湿度が、キャブレターアイシングの可能性がなければ、この黄色いエリアに針を留めておけば心配はありません。

もし、気温や温度がキャブレターアイシングを引き起こしそうな状況であれば、キャブレターヒートをオンにして、キャブレター空気温度計の針を黄色の枠から外にしてあげる必要があります。

さらに、メーカーによっては赤色のアークがマーキングされている場合があります。

これは、航空機メーカーによって決められており、キャブレターに入る温度の上限値を表していたり、緑色のアーク内にある時は問題ないことを表しているタイプもあります。

なので、キャブレターを使用するにあたって、AFMやPOHを参考にしましょう。

キャブレターヒートを使うデメリット

キャブレターヒートは、キャブレターアイシングを予防してくれる救世主ですが、副作用もあります。

それは、エンジンの出力が低下してしまうということです。

最大で、約15%もエンジン出力が低下してしまいます。

なぜなら、暖か空気をキャブレターを通してシリンダーに送り込むことになるので、空気密度が低くなってしまいます。

(空気密度が低くなり、供給される燃料が一定だと、燃料と空気の混合比はエンリッチ側に傾いたことになります。)

キャブレターヒートを入れた時の反応

キャブレターヒートをオンにした時の反応は、「Fixed-Pitchプロペラ」と「Constant-Speedプロペラ」によって違います。

【Fixed-Pitchプロペラ】
Fixed-Pitchプロペラ機では、まずRPMの低下を兆候に、キャブレターヒートをオンにします。
そして、氷が溶け始めるとだんだんとRPMが増えてきます。
氷が取り除かれた直後、エンジンはスムーズに回転するようになります。
そして、完全に氷が取り除かれた後もキャブレターヒートをオンにしたまだと、暖かい空気の影響でRPMが少し低下します。

【Constant-Speedプロペラ】
Constant-Speedプロペラ機では、マニフォールドプレッシャーの低下を兆候にキャブレターヒートをオンにします。
キャブレターヒートをオンにすると、マニフォールドプレッシャーの値が少し上昇します。
キャブレターアイスが全て取り除かれても、マニフォールドプレッシャーは一定を保ちます。
そして、キャブレターヒートをオフにすると、マニフォールドプレッシャーの値はまた少し上昇します。

我慢の時間

パイロットがキャブレターアイシングに気が付く方法は、「飛行速度の減少」「高度の低下」「パワーロス」「エンジンの振動やラフさ」によって気が付くことができます。

もし、パワーロスの兆候が出たのであれば、キャブレターアイシングはすでに引き起こっているので、一刻早くキャブレターヒートを最大にセットし、さらなるアイシングの増加を防ぐ必要があります。

着氷状況やエンジンの暖かさによりますが、すぐにキャブレターヒートを使用しても、約30秒〜数分間パワーロスの兆候が続きます。

この間パイロットは、本当にキャブレターヒートが作動しているのか心配になるかもしれませんが、キャブレターヒートの調節を最大から動かさないように我慢する時間です。

まとめ

フロートタイプのキャブレターの欠点を補ってくれる、キャブレターヒートのご紹介でした。

何事にも、いい面と悪い面があります。

キャブレターヒートの副作用を知った上で使用すると、とても恐ろしいキャブレターアイシングから身を守ってくれる、救世主のお話でした。

次回は、フロートタイプのキャブレターからさらに進化した、燃料噴射システムについて見ていきたいと思います。

キャブレターシステムより進化しており、新しく製造される小型機には多く採用されているシステムです。

 

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【参考文献】

>飛行機パイロットTV

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