【エンジンの点火方式】飛行機特有のイグニションシステムとは?
レシプロエンジンを点火するには、イグニションシステムで火花を飛ばすタイプか、空気の圧縮熱を利用して自然発火を利用するシステムの2つがあります。
スパークイグニションエンジンには、点火システムが必要です。
空気と燃料を混合したものをシリンダーに送り、スパークプラグが火花を飛ばして爆発させます。
今回は、そんな2つのうち、より一般的なのスパークイグニションシステムについて見ていきましょう。
イグニションシステムの構成
イグニションシステムは、「イグニションスイッチ」「高圧リード(配線)」「スパークプラグ」「マグニート」で構成されています。
【イグニションスイッチ】
パイロットがイグニションの使い分けをするためのスイッチ。
コックピットについており、スイッチは5ポジションあることが多い。
【高圧リード(配線)】
マグニートで作られた電気を、スパークプラグへ伝達するケーブル。
【スパークプラグ】
火花を発生する装置。飛行機のスパークプラグは、各シリンダーに2つずつつけられている。(4シリンダーエンジンでは、8本必要となる)
【マグニート】
飛行機のメインの電気システムとは別系統で、一度クランクシャフトが回り始めると自家発電し、スパークプラグが必要な電力をまかないう。
クランクシャフトが回り続けるうちは、発電し続ける。
比較的高電圧を生み出し、スパークプラグに高圧リードを通って電力が供給される。
一般的な小型機のイグニションシステム
多くの小型機は、イグニションシステムを2系統装備しています。
上図のように、「左マグニート」と「右マグニート」の2つ発電する装置があります。
それぞれが発電したものを、高圧リードも水色と緑色で分けられたように、2系統あります。
さらに、シリンダーにも2種類のリードが付いており、それぞれの先に2つのスパークプラグがついています。
1シリンダーに2つのスパークプラグが付いていますが、1つで十分ことが足ります。
なので、1つの系統に何か問題が発生したとき、別のもう1つのシステムがバックアップになり、エンジンが停止することはありません。
さらに、2つあることによりシリンダー内の燃焼効率も少しだけですが向上します。
マグニートスイッチのポジション
マグニートは、コックピットのスイッチでコントロールすることが可能です。
コックピットに取り付けられているスイッチポジションは:
- Off
- R (Right)
- L(Left)
- Both
- Start
の5ポジションあります。
- エンジンスタート時には、スタートポジションにします。
- 一度エンジンが回転すると、Bothポジションに戻します。
- もし、マグニートのどちらかが壊れてしまったり不調なときは、右か左だけを使用するようにセットできます。(左マグニートが不調のときは、右マグニートに合わせます)
- そして、エンジンシャットダウン時にはOffポジションを使用します。
出発前のマグニートの検査
プレテイクオフチェックで、マグニートの調子を確認することが大切です。
【点検方法】
- エンジン点火後にマグニートスイッチは、Bothになっています。
この時のRPMを覚えておきます。 - そこから、マグニートをBothからLeftかRightにします。
- この時に、RPMが少し下がりますが、それが通常です。
どのぐらいRPMが低下するかは、AFMやPOHに記載されているとおりです。
燃料供給料や空気の提供量が変わっていないのにもかかわらず、マグニートの操作でRPMが低下するということは、点火プラグがそれぞれの私シリンダーで2つから1つなることにより、燃焼効率が低下したということがわかるでしょう。
もし、RPMが規定値より低下したり、エンジンが停止してしまったときは、システムの異常が認められるのでフライトは中止するべきでしょう。
考えられる原因としては:
- スパークプラグの汚染
- 高圧リードなど、マグニートとスパークプラグの間にあるケーブル類のショート
- スパークプラグの点火タイミングの調整不足が考えられますが、メカニックによる検査が必要です。
また、RPMの低下が見られない時も異常です。
イグニションオフと注意点
エンジンシャットダウンしたら、イグニションスイッチはオフにしましょう。
バッテリーやマスタースイッチをオフにしたとしても、イグニションスイッチをオンにしていたら、何かの拍子にプロペラを回したりして、クランクシャフトが回ってしまうと、マグニートが発電してエンジンが勢いよく回転し始めてしまうからです。
トーイングをしている時などプロペラの近くに人がいると、大惨事を招いてしまいます。
この現象が起こる原因は、飛行機の電気系統とマグニートは別系統のシステムを持っているからです。
さらに、イグニションをオフにしたといって安心はできません。
もし、マグニートとイグニションスイッチの間にあるアース線が、断線していたり外れていたりすると、エンジンがスタートする可能性があります。
シリンダー内に燃料が残っており、プロペラが回されたりすると、エンジンはまた勢いよく回り出す可能性があるのです。
もし、このような現象が引き起こってしまったら、ミクスチャーを最大でリーン側にすることにより、燃料供給を止めエンジン停止をするほかありません。
そして、メカニックにチェックしてもらう必要があります。
まとめ
イグニションシステムは2系統装備されていることをご存知でしたか?
飛行機のエンジンは、車のエンジンによく似ていますが、この点が違うところでしょう。
一回空に上がってしまうと、止まって修理することができないので、飛行機には必要なバックアップ機能がつけられています。
そして、その機能がしっかりと働いているのか、出発前に1つ1つ確認が必要です。
【関連記事】
- 通常燃焼と爆発(Combustion and Detonation)
- 【飛行機のエンジン】キャブレターアイシングの仕組み・影響・起こる環境
- 【キャブレーターシステム】ミクスチャー操作とEGTの関係性とは!?
- 【飛行機のエンジン】キャブレターシステムの分類
- 【飛行機のエンジン】ピストンエンジンの未来はどうなるの?
【参考文献】