【エンジンのブースト機能】ターボチャージャーの仕組みとは?
前回はスーパーチャージャーについて見てきました。
ターボチャージャーも同じような目的のために作り出されたシステムです。
ターボチャージャーは、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用し、エアーコンプレッサーを作動させ、燃料噴射システムやキャブレターを通してエンジンに高圧の空気を作り出します。
今回は、そんなターボチャージャーの構成や注意点を、見ていきたいと思います。
圧縮空気の冷却
空気を圧縮していくと、温度が上昇していきます。
シリンダーに送る温度が高くなりすぎると、デトネーションなど引き起こす可能性が高くなってしまい、とても危険です。
なので、多くのターボチャージャーは「インタークーラー」と呼ばれる冷却システムを持っています。
多くのインタークーラーは空冷式で、機体の外から取り込まれる空気で冷却しています。
スーパーチャージャーと比べて
スーパーチャージャーの欠点は、ギアを通してエネルギーをエンジンパワーから取ってくるので、エンジンが使えるパワーが低下してしまいます。
その点、ターボチャージャーは通常廃棄されてしまう、排気ガスからエネルギーを再利用しています。
ターボチャージャーの構成
ターボチャージャーは大きく分けて次の2点で構成されています:
【コンプレッサー】
コンプレッサー部分には羽根車が取り付けられており、それが高速回転することにより空気を圧縮しています。
吸気された空気を、コンプレッサーの羽根車で加速させ、より多くの空気をコンプレッサー内に収容します。
圧縮された高圧で高密度の空気をエンジンに送り出します。
【タービン】
排気ガスからエネルギーを取り出す装置で、コンプレッサーの羽根車とついになっており、それぞれがシャフトでつながっています。(上図の赤点線で囲まれたエリア)
より多くの空気を圧縮して燃料を多く燃やすと、より多くの排気ガスを生み出します。
そして、その排気ガスからエネルギーを取り出すことにより、また多くの空気を取り込むことができるサイクルになります。
このままでは、どんどんとタービンの回転数が速くなっていってしまうので、ある程度のところで制御するために廃棄用のゲートが取り付けられており、必要ない排気ガスはこちらにバイパスすることで、取り出すエネルギーをコントロールします。
ターボチャージャーの使用
ターボチャージャーの「廃棄ゲート」は、アクチュエーターと連動しており、圧力を感知して自動的に開閉するようになっているものがあります。
エンジンオイルがアクチュエーターに出入りすることにより、廃棄ゲートを開け閉めしています。
アクチュエーターはスロットルに連動しており、パイロットが意図するパワーが出るように、マニフォールドエアプレッシャーを廃棄ゲートで調節しています。
また、後付けのターボチャージャーシステムでは、廃棄ゲートは手動で操作することが多いです。
飛行機とターボチャージャーの製造元が違うので、自動でセットすることは難しいからです。
パイロットがマニフォールドプレッシャーゲージをしっかりとモニターし、必要に応じて廃棄ゲートを開閉して圧力をコントロールしなければなりません。
このゲージに注意を払っておかないと、エンジンを痛めてしまうかもしれません。
例えば、廃棄ゲートを締め切った状態で目的地空港へ降下開始してしまったとすると、どんどんマニフォールドプレッシャーゲージの値は高くなっていってしまい、リミテーションを超えてしまうかもしれないでしょう。
圧力が高まり、エンジンに壊滅的ダメージを与える可能性もあります。
このことを「オーバーブースト」といい、「デトネーション」を引き起こす可能性が高いです。
自動的に廃棄ゲートが開閉する仕組みが備わっていても、エンジンが暖まっていない状態ではオーバーブーストする可能性があるので注意が必要です。
エンジンオイルがまだ暖まりきっていないのにもかかわらず、テイクオフパワーに一気に入れると、廃棄ゲートの開閉がエンジンオイルが冷え固まっている状態だと、うまく反応してくれずにオーバーブースト状態になってしまうことがあります。
そうならないためにも、エンジンオイルの温度計を注視したり、スロットルをゆっくり動かし、所定のマニフォールドプレッシャーにセットすると良いでしょう。
使用上の注意点
ターボチャージャーに限ったことではありませんが、パイロットは使用する機材のリミテーションを把握しておかなければなりません。
例えば、高温時ではタービンや羽根車は80,000 rpmを超える高速回転をします。
この回転域を達成するには、システム内のベアリングがエンジンオイルによって潤滑・冷却されなければなりません。
なので、高速回転させる前にエンジンオイルの温度や量がリミテーションの中に入っているのか確認が必要です。
また、エンジンシャットダウンする前に十分に冷却しなければいけないです。
なぜなら、ベアリングの近くにあるエンジンオイルが高温になり過ぎ、沸騰し、ベアリングなどにカーボンの蓄積を引き起こし、ベアリングの寿命を縮めてしまいます。
このカーボンの蓄積は、ターボチャージャーの効率や耐久年数を短くしてしまいます。
それぞれのシステムの詳しいリミテーションは、AFMやPOHを参考にすると良いでしょう。
クリティカルアルティテュードと注意点
ターボチャージャーを搭載した飛行機が上昇をしていくと、廃棄ゲートがだんだんと閉じていきます。
よって、マニフォールドプレッシャーの値は高くなっていきます。
しかし、上昇中のいずれかの点で、廃棄ゲートは完全に締め切った状態になります。
この点まで達してしまうと、それ以降上昇していくとマニフォールドプレッシャーの値は低下してしまいます。
この高度は、エンジン製造会社によって決められた「クリティカルアルティテュード」と定義されます。
クリティカルアルティテュードは、AFMやPOHにも記載されています。
もし、その高度以下でマニフォードプレッシャーが下がってきしてまったら、メインテナンスに確認を取る必要があるでしょう。
どこかしらのシステムに、問題を引き起こしている可能性が高いからです。
まとめ
前回今回と、「スーパーチャージャー」「ターボチャージャー」と見てきました。
それぞれに、利点と欠点が存在するようですね。
普通のエンジンよりも、高圧で高速回転するのでちょっとしたことが、大きなトラブルに発展しかねないです。
どちらのタイプを運用するにあたっても、リミテーションを知って、それを守ことは大切ですね。
【前回の記事】
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