【航空機事故】フィリピン航空137便オーバーラン事故について

【航空機事故】フィリピン航空137便オーバーラン事故について

事故と同型のフィリピン航空福岡空港にて:By Cipher01 – CC by 3.0

概要

  • 日付:1998年3月22日
  • 出発地:ニノイ・アキノ国際空港(フィリピン)
  • 目的地:バコロドシティ国内空港(フィリピン)
  • 使用機材:エアバス式A320-214型(RP-C3222)
  • 乗員:6名
  • 乗客:124名
  • 犠牲者:地上の人3名
飛行ルート:By Google Map

フィリピン航空137便は、1998年3月22日にフィリピンのニノイ・アキノ国際空港を、現地時刻18:40分に離陸しました。

この時飛行機の不具合で、第一エンジン(向かって左側)のスラストリバーサが使えない状態で運航されておりました。

離陸、上昇、クルーズ飛行は順調に行われ、同じくフィリピンのバコロドシティ国内空港のRWY04にVOR RWY04アプローチを行なっておりました。

風向風速は030°方向から8ノットと、ほぼ正面の風で、風速も強くありませんでした。

オートスラストはエンゲージされたままアプローチを行なっておりました。

通常オートスラストは入れたままで着陸することが多いです。スラストのディテント(くぼみのようなもの)は4つあり、Idle – CL – MCT – TOGAの4つです。Take-offはTOGAかMCT(Maximum Continuous Thrust)で行います。その後、ある程度の高さになったら、CL(Climb)に入れエンジンの出力を落とします。その後Auto Thrustを使ったままだと、接地までCLに入れたままで触ることはありません。

接地後、第一エンジンはClimbのポジションのままで、第二エンジンだけリバースに入れておりました。

飛行機は減速せず、第一エンジンがClimbのパワーを出すように指示されていたので、出力が上がっていき、第二エンジンはフルリバースのオーダーなので、逆噴射しておりました。

なので、飛行機はだんだんと右に曲がりながら滑走路を飛び出し、空港敷地境界線のフェンスを突き破り、近くに住む3名の犠牲を出しました。

原因

通常、接地後PM(Pilot Monitoring)のコールアウトは:

PM
“Spoilers”
PM
“Reverse Green”
PM
“Decel”

です。これは、通常であれば接地後ある一定の条件が揃うと、スポイラーが自動的に立ち上がるように設定されております。スポイラーが立ち上がったのをディスプレイで確認して、スポイラーというコールをします。

次に、旅客機は着陸滑走路がよっぽど長くない限りスラストリバーサーを使用して、着陸距離を短くしたりブレーキのダメージを軽減させてあげます。

なので、リバーサーが作動したらコックピットの真ん中にあるディスプレーに、緑色でリバースと表示されるので、それを見て”リバースグリーン”というコールをします。

最後に、飛行機が減速しているのを感じたり、速度計を見て減速していたら”ディセル”というコールをすると決まっているのです。

しかし、今回は第一エンジンのスラストがClimbディテントに入ったままだったので、スポイラーは自動的に立ち上がらず、第一エンジンのリバーサーは作動しないで、減速もしなかったのです。

なので、副操縦士は、「No Spoilers」「No Reverse」「No Decell」とコールしたのです。

第二エンジンをフルリバースに入れたので、オートスラストはディスコネクトされてしまいました。

これにより、第一エンジンのスラストレバーがCLに入っていたので、第一エンジンはオートスラストが切れた瞬間に、急激にClimbパワーを出すようにインプットされてしまったのです。

出発前に、第一エンジンのリバーサーは使えないことをパイロットは理解しておりました。

なので、着陸後両方のスラストレバーをまずアイドルにしてから、第二エンジンだけリバーサーをかけるか、そのままかけないかの選択でした。

しかし、パイロットはこのアイドルにするという作業を飛ばしてしまったのです。

これにより、今回のような事故が引き起こされたので、事故の原因はパイロットによるヒューマンエラーであると言えるでしょう。

まとめ

ちょっとした思い込みや、思い違いは誰にでもあると思います。

しかし、パイロットという職業はそうした思い込みや思い違いが大惨事を生み出してしまいます。

今回は、着陸まで第一エンジンのスラストリバーサが使えないことは覚えておりましたが、そのあとの行動が悪かったパターンです。

多くのパイロットは、着陸前のブリーフィングの時などに、通常とは違う項目などは重点的に確認するようにしております。

実際にこのパイロット達がやったかわかりませんが、ブリーフィング時に、少しでも着陸後の手順を確認しておけば、いざとなった時に出てきたかもしれないでしょう。

今回は、1つの行動ミスが大惨事につながるということを学びました。

いかにミスをしないように工夫するかが、パイロットには求められていると思います。

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【参考文献】

エアラインパイロットのための航空事故防止 1