【航空機事故】エアブルー202便墜落事故について

【航空機事故】エアブルー202便墜落事故について

エアブルー航空:By Richard Vandervord

概要

  • 日付:2010年7月28日
  •  航空会社:エアブルー航空
  •  使用機材:A321-231(機番:AP-BJB)
  •  乗員乗客:
    • 乗員:
      • 機長:61歳男性(総飛行時間:2万5497時間, A320:1060時間)
      • 副操縦士:34歳男性(総飛行時間:1837時間, A320 : 286時間)
      • 客室乗務員:4名
    • 乗客:146名
    • 犠牲者:152名 (全員)
  • 出発地:ジンナー国際空港(パキスタン)
  • 目的地:ベナジル・ブット国際空港(パキスタン)

エアブルー202便の目的地である、ベナジル・ブット国際空港の天候はLanding Minimaギリギリで、当空港への着陸を断念し、代替空港へ向かう航空機もありました。

当時のMETARによると050/16 VIS 3,500m RAでした。

ベナジル・ブット国際空港は滑走路はRWY30/12の1本しかなく、ILSはRWY30側にしかついておらず、風向風速を考えると今回の着陸はRWY12となります。

アプローチの計画は、RWY30アプローチを行い、Circling to RWY12の計画を立てました。

ベナジル・ブット国際空港のCirclingは、Left Brakeのみだけで、右側へのBrakeは禁止されておりました。

このフライトのPFは、機長が担当しており、そのためかATCにRight Brakeの要求をさせ、3度断られるとATCを無視して強引にRight Brakeを行うと副操縦士に伝えました。

Circling Approachの概要

機長はFMSにRight Brakeで使用できるようにWaypointを自ら作成し、それを使用してCircling Approachを行う計画をしており、FMSに飛行ルートを作成しました。

ジンナー国際空港を離陸後、機長は2万時間を超える経験から、副操縦士に高圧的に知識確認をする質問を一時間に渡り行なっていたので、副操縦士は萎縮してしまったのか、それ以降機長のミスへの指摘を行わなくなりました。

ブリーフィングでも、禁止されているRight brakeを行う旨を副操縦士に伝えておりましたが、そのプランをやめるべきだとの指摘はされませんでした。

エアブルー202便は先行機であった、パキスタン国際航空は3度目の試みで着陸に成功したとの情報を手に入れていました。

この情報により、ベテランのプライドもあってか、なんとしてでも着陸をさせなければいけないとのプレッシャーもあったかもしれないです。

機長はRWY30にアプローチを行い、MDAが2,510ftなのにも関わらず、2,000ftまで降下させようとしましたが、ここで副操縦士からのMDAが2,510ftであるとの指摘が入り、2,000ftまで降下することを断念しました。

Right BrakeをHDG Modeで行い、その後あらかじめFMSに作成したWaypointの情報をもとにNAV Modeで飛行を始めました。

通常Circling Approachは地上を確認して、自分が空港のどこを飛行しているかわからなければ、この飛行方式は行えません。

管制塔から地表が見えているかとの確認が来た際に、ATCを担当していた副操縦士が、機長にどう答えるか相談していたことがVoice Recorderの解析で判明しました。

このことから、この時点で地表が見えていないことが判明しました。

また、この時の高度はMDAを大きく下回る2,300ftを飛行していました。

Downwind legを飛行中に、EGPWSが発動し、「TERRAIN AHEAD」とコックピットに鳴り響きました。

左旋回をして、上昇するべきだとの副操縦士からの助言も入り、機長は左旋回を試みました。

しかし、機長はパニックになったのか、NAV modeで飛行しているにも関わらず、HDG modeに変えずに、HDGバグを回し続けていました。(このままでは、HDG Bugの数字は変わりますが機体は左旋回はしません。)

高度は、3100ftにセットされ一時的にTHR MCTに入れられましたが、すぐにAuto Thrustに戻されました。

機長はAuto Pilotを使用して、HDGと高度を変更しようとしていましたが、機体は一向に左旋回をしないので、機長はAuto Pilotを外して、手動で飛行することにしました。

Auto Pilotを解除して、操縦桿を左に最大まで倒していたため、機体は一時左52度まで傾く異常姿勢となりました。

それと同時に、Pitch Downのインプットも行われていたため、機体は約3,000ft/minの降下速度で空港の北北東10nm弱の地点に叩きつけられてしまい、乗員乗客全員が犠牲となりました。

事故原因

その後の事故調査委員会の結論によると、事故原因は悪天候およびパイロットエラーに起因するCFITとされました。

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まとめ

機長は上昇中に副操縦士に威圧的な態度を取っており、CRMを発揮しづらい状況を作ってしまいました。

また、副操縦士も威圧的な態度を取られたからといって、同乗しているベテランパイロットが間違っているのであれば、それを正さなければいけません。

総飛行時間が約25,000時間の60代の人に対して、総飛行時間1,800時間の30代の人が意見をするのが気が引けてしまう気持ちもわかります。

しかし、最悪機長が言っても聞かないのであれば、自ら操縦桿を奪い取り操縦をしなければいけなかったでしょう。

悪天候であると、それだけで心理的ストレスが高くなります。

ストレス状態が高くなりすぎると、人間は簡単なミスを犯しやすくなります

そんな中でも、いかにミスを減らし通常と変わらない運航が求められています。

現に今回も、NAV modeでHDG Bugを回して、なんで旋回をしないのかわからない状況に陥ってしまっていました。

さらに、空港でRight Brakeが禁止されていて、ATCにも許可がもらえていないのにも関わらず、それを無視して飛行しています。

これらの行動により、この機長が本当に空を飛ぶ資質があったのか疑問視される事故となりました。

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【参考文献】

マネパカード

エアラインパイロットのための航空事故防止 1