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【航空機事故】XLドイツ航空888T便墜落事故について

出典:Andrei Dimofte

【航空機事故】XLドイツ航空888T便墜落事故について

概要

  • 日付:2008年11月27日
  • 航空会社:XLドイツ航空
  • 使用機材:A320-232(機番:D-AXLA)
  • 乗員乗客:
    • 乗員:2名
    • 乗客:5名
  • 犠牲者:7名
  • 出発地:ペルピニャン・リヴザルト空港
  • 目的地:同上

XLドイツ航空888T便は、リース機でペルピニャン・リヴザルト空港で整備と塗装を行い、ニュージーランド航空に受け渡す予定でした。

2008年11月27日の現地時刻14:44に離陸し、2:30分後にテストフライトを行い、同空港に戻ってくる予定でした。

XLドイツ航空の機長と副操縦士が操縦を担当し、ニュージーランド航空のパイロットがジャンプシートに同乗しておりました。それに加え、同航空会社の整備士3人がキャビンに座っていました。

機体は運航会社が変わるため、塗装を変更し、その後に高圧洗浄されましたが、この際に規定の水圧を超えてしまっていたため、AoAセンサー(Angle of Attack)1と2で浸水が起こっていました。

そして、離陸後大西洋上空でのテストフライトでFL320を超えた頃に、両センサーが凍結をしてしまい、センサーの自由運動が行えなくなり、機体のAngle of Attackの情報が最後の墜落まで不確かなものでした。

XLドイツ航空888T便はテストフライトを終え、ペルピニャン・リヴザルト空港でILS RWY33アプローチを行い、ローアプローチで着陸はせずに、その後フランクフルトに向かう予定でした。

このローアプローチ中に低速飛行の試験を行うスケジュールでした。

A320はある一定以上速度が落ちると、アルファフロアーと呼ばれるプロテクションがついており、失速をさせないようにバックアップする機構があるのです。

このプロテクションが発動すると、通常オートスラストが入り、自動機首上げのトリミングは停止され、スピードブレーキを使用しているのであれば、自動的に閉じられる仕組みとなっています。

これにより、飛行機は失速せずにこの高度と速度を保ってくれるという安全対策になっています。

このプロテクションがしっかりと機能するかどうかを確かめる試験を行おうとした際に、事故が起きてしまいました。

XLドイツ航空888T便は、ランディングコンフィギュレーションを作り、180ktsで2,000ftを通過する予定でした。

約4000ftから出力をIdleまで減らし、ギアを降ろしたり、速度を落としたり、最終着陸態勢をと整え始めました。

速度が落ちてきたので、機首はだんだんと上がっていき、オートトリムは限界の11.2°まで達していました。

XLドイツ航空888T便は、3,000ftで107ktになり、アルファフロアーの発動条件が整ったにも関わらず、オートスラストは発動せずに機体は速度をどんどんと落としていきました。

対気速度は99ktsまで下がった際に、ピッチは18.6°まで上がっており、突然的に失速警報音が機内に鳴り響きました。

パイロットは、失速の際には「Memory Item」と呼ばれる、暗記された手順で機体を立て直す訓練を何度も行っております。

同機長もその手順を行いましたが、ピッチが14°アップまで下がったものの、それ以上下がらず対気速度は92kt程度しかありませんでした。

それに加え、横揺れが起き始めていました。

機体は、右に50度傾いたと思うと、数秒後には左に40度傾いており、とても不安定な状態となりました。

その直後、機首は下がりピッチ7°Upで、対気速度138ktまで増速したおかげで、失速警報装置は鳴り止みました。

しかし、機首上げのトリムは最大のまま維持されており、失速の際のMemory Itemで行われた、スラストを最大まで入れていたので、機首は段々と上がり始めました。

機長はサイドスティックをいくら最大限まで前に倒しても、機首上げを止めることができずに、ピッチ57°upで約3,800ftまで上昇した際に、対気速度は40ktとなり、失速を起こしてしまったのです。

右に97°バンクを取り、42°ピッチダウンで降下し始め、海面への回避操作をいくらか試みましたが、現地時刻15:46に海面に激突してしまい乗客乗員全7名が犠牲になりました。

事故原因

その後の事故調査委員会の見解によると:

① 整備後の洗浄の段階で、AoAセンサーにカバーが取り付けられておらず、同時に高圧洗浄機の圧力が正しくコントロールされていなかったことがわかりました。

これにより、センサー内に浸水し、凍結を引き起こしたことでプロテクションが正しく発動しなかったと結論づけられました。

② パイロット側は、プロテクション機能が発動することを試すために低速飛行を行っておりました。

なので、誰もプロテクション機能が発動しないことを予想していませんでした。

なので、機体重量にもよりますが通常であれば107kt前後でアルファフロアーに入るところを、99ktになっても何も行動を取らなかったのが、第2のヒューマンエラーと位置付けられました。

③ 3つ目は、トリムが最大でPitch Upの方向にkeepされてしまった問題です。

A320は、「Normal Law」「Alternate Law」「Direct Law」と3つにフェーズに分かれています。

通常であれば、「Normal Law」で飛行することが多いですが、機械の故障などで「Alternate Law」「Direct Law」とダウングレードすることがあります。

オートトリムは、Normal lawの時にしか発動せず、今回の場合は「Normal Law」ではなかったので、オートトリムが作動しない条件が揃っていました。

なので、手動でトリム操作をしなければなりませんでしたが、通常パイロットはトリム操作をすることがない機体に加え、失速を回避中というタイミングもあり、両操縦士とも手動でトリムを動かした形跡はありませんでした。

④ 4つ目は、Memory Itemによる失速回避操作であれば、「Nose Down」 「Wings Level」「Thrust」の順番で操作を行いますが、もし機首が下がらないのであれば、トリムを手動で動かしたり、エンジン出力を絞ることで機首を下げることができます。

失速回避で何よりも大事なのは、機首を下げて速度を増速させてあげることです。

機首を上げすぎると、機体速度は増加せず、2次失速を引き起こすこともあるのです。

まとめ

何事もルールは、何かを予防するために作られています。

今回も、飛行機を洗浄する際には、計器やセンサーの中に水の侵入を防ぐために、カバーをつけたり高すぎる水圧で洗浄してはいけないと決まっていました。

また、プロテクション機構のテストをするのであれば、作動しないことも考慮しなければならないでしょう。

通常はほとんど作動するシステムかもしれませんが、作動しない時があるかもしれないので、テスト項目に入れられているのでしょう。

ならば、実際にテストフライトの時はその考慮をするべきだったと言えるでしょう。

このように、ルールを守らなかったり、しっかりと事前にどの程度まで行ったらテストフライトを中止するか事前の準備や計画を練らないと、大変な事態を招きかねないことを学びました。

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